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菟玖波集卷第十六 雜連歌五
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16. 菟玖波集卷第十六
雜連歌五

二品法親王

竹におやこの名やしらるらん
數ならで殘るふしみの跡ながら

關白前左大臣

この身をなにととどめ置くらむ
それをだに思はで歎く親の跡

前大納言尊氏

思ひ出おほき昔なりけり
今とてもうきことはなき我ながら

夢窓國師

人ごとの世わたる業はくるしきに
我が身になればうきぞ忘るる

權大納言良冬

ながらへて哀れに物を思ふらん
身のあるほどや憂き世なるらん

承胤法親王

人にとはれぬ宿のゆふ暮
山蔭は思ひしままに住みなして

久良親王

昔ながらに殘るもとの身
うきになほつきぬは人の命にて

前大納言定資

源氏國名を賦物連歌に

伏見の里に心すまして
世は捨てぬいつもやかくて過ごさまし

導譽法師

あだなる身こそ頼みがたけれ
捨つれどもすてやられぬは命にて

前大納言尊氏常在光院にて百韻の連歌侍りしに

いとへども又友ぞ訪ひ來る

源義篤

と侍るに

捨つる身はうき世にありと思はぬに

大江成種

まよひ心は唯の夢のうち
捨てぬ身や浮世を有りと思ふらん

詫阿上人

跡なき夢の身をも頼まず
いつまでと思へば老もあはれなり

良尋法師

世をのがるればその罪もなし
墨染は身をかろくなすたすけにて

善阿法師

世のうきを思ひ入るより迯れきて
かへらぬ色は墨染の袖
心のはてはなほ秋の風

仙門法師

世を厭ふ吉野の山の奧の庵

常盤井入道前太政大臣

と侍るに

さても住みえぬ身をいかがせん

權少僧都永運

ひとりこそ山の陰には住むべけれ
心の友や我にそふらん

源忠長

面影かはるよなよなの夢
もとの身の泪ばかりはなほそひて

頓阿法師

何を貪る心なるらん
朝露のあだなる世とは知りながら

木鎭法師

心からにや憂きはそふらん
空蝉のうつつを夢の世となして

源有方

あだなる花の色を見るにも
うつりゆく世の習ひこそ知られけれ

源氏頼

しばしが程と住まば山かげ
いづくにも心とめじと捨つる身に

救濟法師

月を知らぬや深山なるらん
捨つる身に我が影ばかり伴ひて

順覺法師

心たけくも世を厭ふかな
赤子のしたふをだにもふり捨てて

寛胤法親王

かかれとてこそ身をば捨てつれ
隱れ家の道をばうづめ峯の雲

藤原道直朝臣

定めなきこそ浮世なりけれ
隱れ家に心はゆくをまだすまで

法眼村意

花の頃とや人のとふらん
隱れ家の山と思ふに道ありて

圓惠法師

松吹く風の音しづかなり
獨り住む山の庵に雨ききて

周阿法師

捨ててぞ世には住むべかりける
外になき我が隱れ家は心にて

藤原助茂

春にぞかすむ有明の月
捨つる身は涙もしらで住む山に

前大納言爲氏

芦の根のうき身はさぞと知りながら
よしやつれなく世をば背かじ

前大僧正道玄

苗代水も春は引くなり
心にも任せぬ身こそ悲しけれ

高階重成

夢のあしたぞ又別れぬる
仕へては心に身をもまかせぬに

二品法親王

捨つる身のおき所なる柴の庵
山も淺きやうき世なるらん

前大納言尊氏

心まで歸るまじきはうき世にて
身をおく山ぞ猶ふかくなる

藤原高秀

住む人もあるかなきかの庵にて
世にかげろふの身こそあだなれ

藤原秀光朝臣

うき世にやなほ墨染の袖
今は身に望みのなきも涙にて

神爲清

泪の雨はただ波の音
身を知るに蜑人よりも袖ぬれて

勝謂法師

ぬるる袂も忘れぬる跡
うきはなど昔にならで殘るらん

權少僧都快宗

人ごとにながき別れとなりにけり
命ぞ老のうきを知らする

前大納言宗明

數ならぬ身の果てをしらばや
ありて世にかひなきものは我が命

法印時寳

見しことの忘るる程に身は老いて
語ればぞきく人のいにしへ

權少僧都永運

人の報いのありとこそ聞け
いく度か我が身をかへて生れこし

性遵法師

うきほどまては捨つる世もなし
有るをさへなげくは老の命にて

救濟法師

關白大臣に侍りける時、家の千句に

年こそ今は立ちかへりぬれ
老いぬればいとけなかりし心にて

藤原長泰

結ぶ庵は山の奧なる
捨つる身と文ばかりには書き置きて

平親實

今の世もうきを報いと知りながら
捨てぬ心は身をもおもはず

常盤井入道前太政大臣

昔より名にこそ立てれ吉野山
世をいとふ人のいかで住むらん

二品法親王

いづくの山かまた庵なる
中々にあるに任せて身は捨てじ

導譽法師

人も心や佛なるらん
このたびは生れがたきに生れきて

庭阿上人

かかる身に生れ來ぬるを思ひ知れ
親子となるも契ならずや

前中納言定資

聲あはせてやなげく村鶴
子を思ふ道の苦しき習ひにて

救濟法師

花は程なくしぼむ朝顏
あだし世は人をもさぞと思ふ身に

藤原家尹朝臣

涙や袖のしぐれなるらん
うきことは我らが中の心にて

良阿法師

十にひとつも頼みなの世や
鳥の子のすもりの有るに身を知らで

安倍爲信

明日までは頼まざりつる我が命
もしながらへばけふもいにしへ

相阿法師

夢にみて都いくたび別るらん
まよひの身こそもとの我なれ

荒木田長範

たのまれぬ命ばかりはこの世にて
明日またいかにけふのあらまし

本照法師

花の枝をや折りつくすらん
薪とるおのれ心のなきままに

母阿法師

我とさだむる隱れ家はなし
捨つる身や人に心を任すらん

大中臣實直

家のをしへぞ昔なりける
梨壺のその名は殘る跡ながら

永明門院宮内卿

月の夜、女房あまた起きゐて遊び侍りけるに、いろはの字を句の始めに置きて連歌をしけるに、り文字につまりて滯り侍りけるに

流泉のびはの音すごき月の夜に

同院左京太夫

と侍るに、やがてぬ文字を置きて

ぬれけるものをから人の袖

實方朝臣

人の許に遣はさんとて「室の八島の煙ならでは」といふ歌を讀みて人に見せ合はせけるを、やがて此歌を書いて女のもとへやりてけるを、程なく世にふれ聞えける比、女の許にまかりて侍りけるにいひ出でける

この頃は室の八島を盜まれて
えこそはいはねおもひながらも

權少僧都永運

隱れ家とても何尋ぬらん
世の中はすむにつけてもなほうきに

二品法親王

破れ車のめぐる椎の輪
つかふればその司をも爭ひて

十佛法師

命おもへば未だ短き
老の後振分髮の子をもちて

顯英法師

昔の友に今ぞ逢ひぬる
人を見て我老いぬるや知らるらん

藤原倫篤

おとづれを聞く松風の聲
柴の戸は閑かにてこそ住むべきに

應保二年の頃、月の夜、法性寺入道關白、女御の女房ども誘ひて月見侍りけるに、内の女房の中より

月晴れて雪降る雲の上はいかに

詠み人しらず

と云ひ侍りければ、また女房の中より

消えてあるべき心こそせね

讀人しらず

堀河院の中宮、内に侍はせ給ひけるに、雪のいたく降りける又の朝、麗景殿の細殿に枯れたる薄に雪降りかかりたるを、殿守のつかさ、簾の下にさし入れてこれを御覽せ、少將の君に奉り給へとて、それに結びつけて

招くかたにぞ行きとまりぬる

藤原義孝

時過ぎてかるる薄の身なれども

前大納言尊氏

音信なるは庭の松風
隱れ家の庵を人はとひもせで

導譽法師

陰は小篠の
[_]
[5]
の一むら

世をすつる住家は人にあらそはで

藤原長泰

あたら身をただ一方に捨てもせで
月と花とぞうき世なりける

周阿法師

隱れ家までも秋ぞ殘れる
山に入る月やうき世を出でぬらん

關白左大臣

人ごとに狐がましき心にて
うき身に何の幸かある

二品法親王

露涙我がひざの上に落ちかかり
ふたりの親の中のみどり子

前大納言尊氏

思ひ立つより身をば捨てばや
ながらへば心のかはることもあり

木鎭法師

これとても心をとむる柴の庵
すまばいづくも浮世なるべし

寂意法師

身を捨てばやの心にぞなる
山里のあるはうき世の頼みにて

素阿法師

花に苔こそ似ぬ袂なれ
捨てしより身は埋れ木の如くにて

十佛法師

人いかばかり我を待つらん
捨つるとはいはで身をこそ隱しつれ

藤原宗秀

危きかたに身をかへりみて
三度おもひ後に言の葉いひ出だせ

藤原秀氏

瀧のひびきもなるる木隱れ
柴の戸に明け暮れまつの風聞きて

南佛法師

名におひて面かはりせぬ常盤山
誰か岩屋にすみはじめけん

權少僧都長驗

思ひ出もなし老のしるしに
うきことはもの忘れする心かな

導譽法師

もとの身ながらなどうかるらん
捨つる世はあれどもなきが如くにて

救濟法師

身をわけて思ふも同じ別れにて
しらずいづれか世々の父母

關白前左大臣

けふ又聞きつ入相の鐘
身のうへにくるる齡と思はずや

後嵯峨院御製

せきとめがたく流れけるかな
いとへども我が身につもる老の波

民部卿爲藤

元亨元年十二月、神今食行幸侍りけるに、廳代にて奉行平成輔朝臣御器を用意しけるが、盃度々に成りければ、上卿にて

盃に光そへたるこよひかな

前中納言具行

とあるに、少納言にてさぶらひける時、付け侍りける

昔のあとにめぐりあひつつ

神今食には棊うち彈棊なんども有ることなれば、連歌もことにふるきあとを思はれ侍りけるにや。

[_]
[5] Kanji here is not available in the JIS code table. The kanji is Morohashi's kanji number 14598.