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15. | 菟玖波集卷第十五
雜連歌四 |
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(Tsukubashu) | ||
15. 菟玖波集卷第十五
雜連歌四
導譽法師
二品法親王家月次連歌に
たらちねの別れしほどに身は老いて
救濟法師
名ばかりに昔の人はとどまりて
久良親王
垂乳根を見し年月は隔たりて
源義長
親のをしへし弓矢をぞとる
前大納言尊氏
思ひ出はありあらましはなし
なれし昔の友ぞ少き
高山上人
老の姿ぞあらずなりぬる
藤原冬隆朝臣
老の身もあるかなきかの命にて
よみ人知らず
古の妹背は人の始めにて
後嵯峨院御製
いやしきもよきも昔は忍ぶかな
從二位家隆
昔こひしき賤の苧だまき
前中納言定家
むかし戀ひしきかたみをぞ見る
藤原則俊朝臣
藤大納言爲家
といふ句に
淨心法師
前中納言定家の家に三輪の杉うつし植ゑたりける殘り侍るを見
紀宗基
と申し侍りけるに
丹波守長
むかしがたりの友だにもなし
宏元法師
明日またぬ老は心にしるものを
是宗親孝
おぼえずなりぬ老のいにしへ
存阿法師
すてかぬる身には老のみ重なりて
村存法師
山までも跡はとめじの心にて
順覺法師
捨てし世に我や昔の人ならん
村我法師
かくれがはなほいにしへの夜半の月
大江成種
殘る身の昔の友にまた逢ひて
勝謂法師
老いぬれば先だつ數にのこされて
法眼良詮
いにしへの友も我をや忘るらん
夢窓國師
むかしの友は夢にだに見ず
導譽法師
關白家の月竝の連歌に
むかしにも近き遠きはあるものを
周阿法師
とあるに
源氏頼
幾むかし覺えぬ程に過ぎぬらん
二品法親王
知らず我が身の後の世の道
關白左大臣
名殘もさらばなき人になれ
救濟法師
いかに見む雲にまぎるる夕煙
源信武
雨となり雲となりてや迷ふらん
詫阿上人
ほどもなく光も影もうつるまに
稱阿上人
後の世もともに行くぞと思はばや
隆圓法師
石の火の消えやすきこそ命なれ
前大納言宣資
誰もつれなき習ひをぞ知る
前參議彦良
消えやすき命はいつをかぎらぬに
藤原時綱
惜しまぬに何と命の殘るらん
よみ人しらず
延喜御門朱雀院の御讓位の後、公忠朝臣五位の藏人にて侍りけるが、ひらぎぬの裝束になりて參り侍りければ、女房申しける
源公忠朝臣
素暹法師
わづらひ侍りける時、最後の連歌せむとて、人人數多來たりけるに、みづからの句に
よみ人知らず
と侍るに
よみ人しらず
我が後の世の秋のゆふぐれ
二品法親王
末の世に我とふごとく人もとへ
信照法師
老の命ぞ日日に少き
木鎭法師
むかし見し人は半ばや去りぬらん
鏡觀上人
世の中のつねなきことに驚きて
和氣仲氏
假の世の中にもしばし夢をみて
權律師定暹
後の世やこのよのことをうつすらん
素阿法師
後の世は音便きかぬ別れにて
源頼基
命ばかりや世に殘るらん
荒木田長範
さき立つに殘る身とても頼まれず
平兼貞
現とて夢にかはれることもなし
道珍法師
驚けば身より外なる夢もなし
十佛法師
今までもわかかるべきは先たちて
良阿法師
寐覺して又夢の世になりにけり
導譽法師
誰とても羊のあゆみ待つものを
高階重成
何事もありはてぬ世のことわりに
救濟法師
なき人の庵にのこる櫻花
關白前左大臣
山陰をねがはんとする我ながら
太宰權帥俊實
世のうき捨てかぬる間に老の來て
源宗氏
厭ふべきことわりまでは知りながら
藤原高秀
捨つる身の心や人を離るらん
咸憲法師
捨つる身は我が後の世の爲なるに
妙千法師
明日知らぬ身を有りがほに捨てかねて
源義長
あすといふべきあらましもなし
崇世法師
身を捨て人にもとの名もなし
導譽法師
捨てでだに身はおきかぬる世の中に
大中臣實直
捨つる身のしばしと思ふ柴の庵
前大納言尊氏
ひとつある命をも又捨てにけり
今上御製
と侍るに
とあるに
關白前左大臣
身ひとつは安かるべきをすてもせで
二品法親王
我ひとり置所なき身となりて
佗阿上人
捨てて出でしはうき世なりけり
救濟法師
あらましの今はつきぬる老が身に
妙阿法師
夜を殘す老の寐覺の物がたり
善阿法師
人の著る苔の衣を我にかせ
誰とても身まかる後のなれのはて
前大僧正賢俊
心にもまかせぬ物は命にて
關白前左大臣
身のうきは春の心も秋なるに
中納言忠嗣
やがてすむべき隱れ家もがな
二品法親王
隱れ家の有りと知られぬ山もがな
源義篤
わづかに殘る道の隱れ家
導譽法師
老いぬればいまみることも覺えぬに
性遵法師
山にとる薪を老のうき身にて
南佛法師
一年もまされば老と思はれて
藤原忠頼朝臣
たのまぬに頼むも人の命にて
行阿法師
いかなる身とも知らぬ前の世
大中臣憲宗
我とだにかねては知らぬ身のゆくへ
藤原信藤
知らずして老の心になりにけり
寂忍法師
心のすまばやすき身なれど
善阿法師
我が身ぞおそく世をも捨てつる
救濟法師
身を捨つる人のあるにはともなはで
法印定意
ことしげき世は憂き物といひなして
藤原家尹朝臣
關白家の百韻連歌に
思ひ出は身のいつぞとも覺えぬに
藤原雅朝朝臣
さのみなど身をもちかねて歎くらん
道光法師
思ひ子は佗び人にだにあるものを
素阿法師
せめて一人の親に添はばや
前大納言爲世
いたづらに積れる年を歎くかな
前大納言經綱
老いせぬ門にいかで入らまし
南佛法師
誰か岩屋に住みはじめけん
權少僧都長驗
うきこそは物忘れする心なれ
(Tsukubashu) | ||