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秋連歌下 |
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(Tsukubashu) |  |
5. 菟玖波集卷第五
秋連歌下
前大納言尊氏
松原の木の間に月のあらはれて
導譽法師
山の端は月のこなたにまづみえて
救濟法師
住吉の浦の南に月見えて
性遵法師
呉竹の末こす風に月みえて
藤原俊顯朝臣
影うすき朝は月はなほ見えて
頓阿法師
月まち出づる秋の夕暮
寂意法師
山陰は出でたる月をおそく見て
二品法親王
月をも知らぬ柴の戸のうち
從二位家隆
月を待つ端山のかげの黄昏に
前右兵衞督爲教
月に馴れぬる秋をかぞへて
前中納言爲相
六條内大臣禪林寺の家にて連歌侍りけるに
有明の月影うつるしかま川
南佛法師
いねがての月にいく夜をあかすらん
乘阿上人
むら雲をいでつる月のまた入りて
救濟法師
横さまに入る窓の月影
導譽法師
柴の戸の月は木の間に影分けて
關白前左大臣
曉のはやしの梢月おちて
花園院御製
わづかなる筧の水にうつる月
前大納言尊氏
山の奧にも月ぞすみける
二品法親王
共に見る月に心や通ふらん
前參議彦良
月あければ明けても夜をや殘すらん
救濟法師
主もなき浦の捨舟月のせて
木鎭法師
月殘る朝に閨の戸を明けて
順覺法師
秋寒き月夜からすの聲ふけて
從二位行家
入る月を人もさこそは惜しむらめ
前大僧正賢俊
槇の屋は月もれとこそ荒れにしに
後光明照院前關白左大臣
嘉暦四年内裏の七夕連歌に
うす霧の晴るる山より月見えて
導譽法師
二品法親王北野千句に
うき雲のいくたび月にちがふらん
底阿法師
月の半ばにかかる浮雲
藤原宗詮
雲こそ月のこなたなりけれ
小槻量實
峯こゆる月も雲井の影見えて
權少僧都永運
此の里のむかひの岡に月いでて
權少僧都快宗
神直資
下くらき檜原の上に月見えて
藤原高秀
月すめば我がかげもある庵にて
藤原資能
うら遠き山には月のまづ出でて
十佛法師
水とは見えず月ぞ流るる
導譽法師
二品法親王北野社千句連歌に
空は月山本はなほゆふべにて
寂忍法師
月を見ぬ夜やいたづらに更けぬらん
源成賢朝臣
月ははや有明がたの頃なれや
源季直
有明になるよなよなの月
海部宗信
月の遲きやみ山なるらん
前中納言有忠
秋の名にあふ長月のつき
常曉法師
ひとりある人のためには夜も長し
法眼良澄
ねざめにや人も砧をいそぐらん
後光明照院前關白左大臣
春いれしあら田の水に秋かけて
左近中將義詮
門田の秋はゆふべなりけり
關白前左大臣
鶯のことし巣立つは秋なきて
性遵法師
暦應四年春日神木宇治に遷らせ給ひしに歸座あるべきよし聞えし頃救濟法師家の百韻連歌に
春日野の月にや鹿の歸るらん
後久我太政大臣
山田もるをしねの床のさびしさに
前中納言有忠
ひとりすむ田づらの庵の月の頃
前大納言爲氏
稻葉の風のふかぬ間ぞある
藤原資顯
松一木秋の風ふく淺茅原
後鳥羽院御製
人人に連歌召されける序に
よもぎふ深き故郷の秋
後嵯峨院御製
弘安二年八月七日庚申連歌に
わが身ひとつと鹿ぞ鳴くなる
二品法親王
風吹くたびにかはる鹿の音
權僧正良瑜
宮城野の秋に鹿なく夕にて
大納言氏忠
妻戀の鹿の音聞くも夕にて
關白前左大臣
文和三年六月家の泉にてこれかれ連歌し侍りしに
やまは里にも鹿やなくらん
藤原倫篤
小田もる庵や袖をしくらん
大江成種
むら雲のさだめぬ月に雁鳴きて
嘉暦四年七月の連歌に後光明照院前關白左大臣
後醍醐院御製
と侍るに
今上御製
紅葉のあらし淺茅生の露
左近中將義詮
曉の鐘より後もよは長し
導譽法師
行く雁の聲より數は少くて
權少僧都永運
芭蕉葉に音ある夜半の雨ききて
救濟法師
茸狩の秋の山路にけふ暮れて
周阿法師
二品親王家の七百韻連歌に
落椎の深山かくれの小笹原
藤原信藤
柴の戸は夜寒の時雨山おろし
二品法親王
下露は山の時雨のあとなるに
前中納言有光
よる鳴く蟲や機や織るらん
救濟法師
山陰のすずのしのやにはた織りて
藤原助夏
蜑人は波にきぬたをうちそへて
導朝法師
我も鳴く秋をうづらの聲ききて
六條内大臣
染めぬ時雨やまつにふるらん
頓阿法師
山端の紅葉をわたる秋の雁
惟宗親孝
松と紅葉もいかで時雨の分かつらん
淨永法師
紅葉ちる秋のしぐれの雨の脚
宏元法師
藤原親長朝臣
露しぐれ染めぬ木末はなきものを
素阿法師
いつそめし習に松の時雨るらん
藤原氏秀
影のこる夕日の山は紅葉にて
二品法親王
松原はところところの紅葉にて
關白前左大臣
紅葉の山は松原もなし
六條内大臣
ふるきのかた枝紅葉する頃
救濟法師
枯れしより草薙ぐ秋となりぬるに
夢窓國師
うらがるる草には結ぶ露もなし
善阿法師
かれがれに誰まつ蟲の思ひ草
關白前左大臣
文和四年五月家の千句に
これやこの時雨の秋の寒き山
寂意法師
くもらぬは木の下露の時雨にて
蓮智法師
我がとしたけぬ秋ぞ少き
源頼氏
ゆくとも知らぬ秋ぞくれぬる
救濟法師
袖なるは秋くれなゐの涙にて
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