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風雅和歌集卷第十九 神祇歌
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19. 風雅和歌集卷第十九
神祇歌

世の中に物思ふ人のあるといふは我を頼まぬ人にぞ有ける

これは鴨御祖明神の御歌となむ。

三笠山雲居遙に見ゆれども眞如のつきはこゝにすむかな

世の中に人の爭ひなかりせばいかに心のうれしからまし

此の二歌は、暦應三年六月の頃春日の神木やましな寺の金堂に渡らせ給ひける時、つげさせ給ひけるとなむ。

我かくて三笠の山をうかれなば天の下には誰かすむべき

これは、春日の御さか木、都におはしましける春の頃、ある人の夢に、大明神の御歌とて見えけるとなむ。

波母山や小比叡の杉のみやまゐは嵐も寒し訪ふ人もなし

これは日吉の地主權現の御歌となむ。

有漏よりも無漏に入りぬる道なれば是ぞ佛のみもとなるべき

此の歌は後白川院熊野の御幸三十三度になりける時、みもとゝいふ所にてつげ申させ給ひけるとなむ。

もとよりも塵にまじはる神なれば月の障も何かくるしき

是は和泉式部熊野へまうでたりけるに、さはりにて奉幣かなはざりけるに、晴れやらぬ身のうき雲のたなびきて月の障りとなるぞかなしきとよみてねたりける夜の夢につげさせ給ひけるとなむ。

後伏見院御歌

神祇を

神路山内外のみやのみや柱身は朽ちぬとも末をばたてよ

後西園寺入道前太政大臣

建治の百首の歌に

動きなき國つ守りの宮柱たてしちかひはきみがためかも

太上天皇

河を

よどみしも又立ち歸るいすゞがは流の末は神のまに/\

前左大臣

左兵衛督直義、稻荷に奉納し侍りける十首の歌の中に、月を

やはらぐる光をみつの玉垣に外よりもすむ秋の夜のつき

院御歌

神祇を

神風に亂れし塵もをさまりぬ天照す日のあきらけき世は

後宇多院御歌

月の五十首の御歌の中に、雜月を

常闇をてらすみかげの變らぬは今もかしこき月讀のかみ

荒木田氏之

社頭月を

すむ月も幾とせふりぬいすゞ川とこよの波の清き流れに

度會家行

豐受太神宮にて立春の日よめる

小鹽井をけふ若水に汲初めてみ饗手向くる春はきにけり

度會延誠

神祇を

世々をへて汲むとも盡きじ久方の天より移す小鹽井の水

西行法師

みづからよみあつめたりける歌を三十六番につがひて伊勢太神宮に奉るとて俊成卿にかちまけしるしてと申しけるに、度々辭み申しけれどしひて申し侍るとて歌合のはしにかきつけてつかはしける

藤波を御裳濯川にせきいれて百枝の松にかけよとぞ思ふ

皇太后宮大夫俊成

勝負しるしつけてつかはしける歌合の奥に書き付け侍りける

藤波も御裳濯川の末なればしづ枝もかけよ松のもゝえに

荒木田房繼

題志らず

ふして思ひあふぎて頼む神路山深き惠をつかへてぞまつ

度會朝棟

かたそぎの千木は内外に變れども誓は同じいせのかみ風

賀茂遠久

久方のあまの岩舟漕ぎよせし神代のうらや今のみあれ野

鴨祐光

君がためみくにうつりて清き川の流にすめる鴨の瑞がき

賀茂惟久

片岡の岩根の苔路ふみならしうごきなき世を猶祈るかな

前大納言爲兼

雜の歌に

あふぎても頼みぞなるゝ古への風を殘せるすみ吉のまつ

津守國夏

我が君を守らぬ神しなけれども千世のためしは住吉の松

後光明照院前關白左大臣

神祇の歌の中に

思初めし一夜の松の種しあれば神の宮ゐも千世や重ねむ

京極前關白家肥後

春日の社に參りて身の數ならぬ事を思ひてよみ侍りける

三笠山その氏人の數なればさし放たずやかみはみるらむ

前太政大臣

雜の歌の中に

そのかみを思へば我も三笠山さして頼をかけざらめや

刑部卿頼輔

春日の社へまゐりてよめる

數ならで天の下にはふりぬれど猶頼まるゝみかさ山かな

前大納言爲氏

寳治の百首の歌に、嶺松を

ふりにける神代も遠し小鹽山おなじみどりのみねの松原

後伏見院御歌

建武の頃雜の御歌の中に

沈みぬる身は木隱れの石清水さても流の世にし絶えずば

太上天皇

神祇を

頼む誠ふたつなければ石清水一つ流れにすむかとぞ思ふ

百首の御歌に

祈る心わたくしにては石清水濁り行く世を澄せとぞ思ふ

前左大臣

社頭月を

今までは迷はでつきを三笠山あふぐ光よすゑもへだつな

中臣祐春

春日の社にて月を見て

我が心曇らねばこそ三笠山おもひしまゝに月はみるらめ

中臣祐植

祖父祐茂自筆の祝本を見てよみける

かはらじな跡は昔になりぬとも神の手向の代々の言の葉

皇太后宮大夫俊成

文治六年女御入内の屏風の歌、春日の祭の社頭の儀

春の日も光異にや照すらむ玉ぐしの葉にかくるしらゆふ

紀俊文朝臣

神祇を

名草山とるや榊のつきもせず神わざ志げき日のくまの宮

前大僧正慈勝

日本紀を見てよめる

明けき玉ぐしの葉の白妙にしたつ枝までぬさかけてけり

狛光房

鵜萱ふきなぎさに跡を留めしぞ神代をうけし始なりける

中臣祐臣

春日の若宮の神主になりてよめる

春日山同じ跡にと祈りこし道をばかみもわすれざりけり

賀茂教久

雜の歌に

世を祈る心を神やうけぬらし老らくまでに我ぞつかふる

入道二品親王尊圓

天台座主にて侍りける時、日吉の祭の日、禰宜匡長がもとよりかざしのかづらを贈りて侍りければ

久かたの天つ日吉の神祭つきのかつらもひかりそへけり

祝部成國

神祇を

生れきて仕ふることも神垣に契りある身ぞ猶たのむかな

前中納言爲相

代々をへて仰ぐ日吉の神垣に心のぬさをかけぬ日ぞなき

前左大臣

寄鏡神祇といふことを

九重に天照る神のかげうけてうつす鏡はいまもくもらじ

權大納言公蔭

天てらすみかげを映すます鏡つたはれる代の曇あらめや

源有長朝臣

熊野にまうでゝ三の山の御正躰を奉るとてよみ侍りける

かず/\に身にそふかげと照し見よ研く鏡にうつす心を

高階師直

暦應元年津の國のうての使にまかりて鎭め侍りける後住吉の社にまうでゝよみける

天降るあら人神の志るしあれば世に高き名は顯れにけり

皇太后宮大夫俊成

日吉の社に奉りける百首の歌の中に、櫻を

山櫻ちりに光を知らげて此の世にさける花にや有るらむ

前大僧正慈鎭

雜の歌の中に

日の本は神のみ國と聞しよりいまする如く頼むとをしれ

後西園寺入道前太政大臣

嘉元の百首の歌奉りける時、神祇

天つ神國つやしろと別れても誠をうくるみちはかはらじ

後宇多院御歌

おなじ心を

天つ神國つやしろを祝ひてぞわが葦原のくにはをさまる