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風雅和歌集卷第十一 戀歌二
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11. 風雅和歌集卷第十一
戀歌二

永福門院

忍待戀の心を

包む中の重ねて聞かぬ契こそまつ物からに頼みがたけれ

戀の御歌の中に

嬉しとも一かたにやは詠めらるゝまつ夜に向ふ夕暮の空

院冷泉

頼まじと思ふ心はこゝろにて暮れ行く空のまた急がるゝ

從三位親子

必ずとさしも頼めぬ夕暮を我れ待ちかねて我ぞかなしき

藤原重能

訪はずとも障るとせめて聞かすなよ待つを頼の夕暮の空

新宰相

待戀を

訪へかしと思ふ心のあらましに頼めぬ暮ぞ空にまたるゝ

伏見院新宰相

戀の歌に

頼まねど頼めし暮は待つと云はむ哀と思ふ方もありやと

前大納言尊氏

寄鐘戀の心を

よしさらばまたじと思ふ夕暮をまたおどろかす入相の鐘

永福門院

戀の歌とて

暮にけり天とぶ雲の往來にも今夜いかにと傳へてしがな

西園寺前内大臣女

待戀

自ら思ひもいでばとばかりの我があらましに待つぞはかなき

前大納言爲兼

百首の歌の中に

頼まねば待たぬになして見る夜半の更行く儘になどか悲しき

前權僧正圓伊

忍待戀の心を

宵の間は誰も人目を包めばと更くるつらさを忘てぞ待つ

先福寺前内大臣女

包む中は人目に障る方や有ると更てしもこそ猶待たれけれ

永福門院

戀の歌とて

頼め捨てゝとはぬはさこそ易くとも待つ心をば思遣らなむ

後伏見院御歌

契明日戀と云ふ事を

いくゆふべむなしき空に飛ぶ鳥の明日必ずと又や頼まむ

進子内親王

戀の歌の中に

見るも憂し流石さこそと待つくれにあす必ずの人の玉章

後照念院前關白太政大臣

面影は心のうちにさき立ちてちぎりし月の影ぞふけぬる

四條太皇大后宮下野

藤原隆方朝臣月のあかゝりける夜下野がつぼねに尋ねまかりたりけるに御まへにいとまいるよし申して侍りけるつとめて、よしさてもまたれぬ身をば置きながら月見ぬ君が名こそをしけれと申しつかはしければ、返し

契らぬに人待つ名こそ惜からめ月計をば見ぬ夜半ぞなき

藤原隆祐朝臣

寳治の百首の歌の中に、寄月戀

更けにける槇の板戸の休らひに月こそ出づれ人は難面し

源和氏

同じ心を

忘れずば夜よしと人に告げず共月見る度に待つと知ならむ

權大納言公宗

更けぬ共誰にか云はむ人知れず待つ夜の月の宵過ぐる影

永福門院

忍待戀の心を

槇の戸を風の鳴すもあじきなし人知れぬ夜の稍更くる程

從三位客子

契待戀

人はいさあだし契の言の葉をまこと顏にや待ち更けぬらむ

伏見院御歌

戀の歌數多よませ給ひける中に

思取り恨果てゝもかひぞなき頼むれば又待たれのみして

永福門院

歴夜待戀と云ふ事を

我も人も哀れ難面き夜な/\に頼めもやまず待ちも弱らず

題志らず

宣光門院新右衞門督

更けぬれど障ると聞かぬ今夜をば頼の中に待つもはかなし

院御歌

夜戀を

更けぬなり又とはれてと向ふ夜の泪に匂ふともし火の影

土御門院御歌

戀の御歌の中に

妹待つとやまの雫に立ちぬれてそぼちにけらし我が戀衣

伏見院新宰相

待戀の心を

更果てぬ頼めしをさへ忘れてや障るとだにも音づれもなき

二品法親王尊胤

更にこそ明日の契りも頼まれぬ進まぬ方の障りと思へば

進子内親王家春日

さのみやと我さへ果ては難面きに今夜は人に待つと知られじ

從二位爲子

障りあればのち必ずの慰めよ幾たび聞きて幾夜待つらむ

前大納言經顯

慂戀を

強ひてなほ頼みやせまし僞の契もさすがかぎりありやと

權大納言資明

戀の歌の中に

僞の有る世と誰も知りながら契りしまゝを頼むはかなさ

左近大將經教

忍契戀

邂逅の人目の隙を待ちえても思ふばかりは契りやはする

權大納言公宗母

百首の歌奉りし時、戀の歌

積りける程をも人に見ゆばかり待つ夜の床の塵は拂はじ

進子内親王

思ひやる寢覺もいかゞ安からむ頼めし夜半のあらぬ契は

伏見院御歌

戀の御歌の中に

とはずなる今より斯や隔て行かむ今夜計はさて飽かず共

永福門院

待空戀と云ふ事を

云ひし儘の今宵遠はぬ今宵にて又明日ならば嬉しからまし

題志らず

此のくれの心も知らで徒らによそにもあるか我が思ふ人

同院内侍

戀雨を

今日の雨晴るゝも侘し降るも憂し障習ひし人を待つとて

從三位親子

戀の歌の中に

我が方の障を強ひて恨みねば淺かり鳬とつらくこそなれ

前太宰大貳俊兼

院の三十首のうためされし時、戀月

頼めねば來ぬを憂しとは喞たねど斯る月夜を獨見よとや

前右近中將資盛

契不來戀と云ふ事を

中々に頼めざりせば小夜衣返すしるしは見えもしなまし

前大納言爲兼

伏見院の御時六帖の題にて人々に歌よませさせ給ひけるに、一夜隔てたると云ふ事を

夜がれそむる寢待の月のつらさより廿日の影も又や隔てむ

從二位爲子

二夜隔てたる

空しくて又明ぬるよ一夜こそげにも障の有るかとも思へ

西園寺前内大臣女

同じ心を

さり共と今日をば待ちし昨日こそ夜かれになれぬ心なりけれ

賀茂重保

曉の戀を

さりともと猶待つ物を今はとて心よわくぞ鳥はなくなり

進子内親王

戀の歌の中に

空しくて明けつる夜半の怠を今日やと待つに又音もなし

永福門院

待戀の心を

何となく今夜さへこそ待たれけれ逢はぬ昨日の心習ひに

戀の歌とて

とはぬ哉訪べき物をいかに有れば昨日も今日も待たず來ぬ覽

修理大夫顯季

堀川院の百首の歌に、初逢戀を

播磨潟恨みてのみぞ過ぎしかど今夜とまりぬをふの松原

源兼氏朝臣

逢戀

今更に苦しさまさる逢坂をせき越えなばと何おもひけむ

從三位頼政

ある女に始めて物ごしに申し語らひて歸りてあしたにつかはしける

逢ひもせず逢はずも非ぬ今日やさば事有り顏に詠暮さむ

藤原隆信朝臣

大内にて月のあかゝりける夜思ひかけず逢ひたりける女の行くへを問ひ侍りけれども言はざりけるに

心をば雲居の月にとめ乍ら行方も知らずあくがれよとや

讀人志らず

返し

行くへなき月も心しかよひなば雲のよそにも哀とはみむ

太宰大貳重家

初逢戀を

逢ふ事に身をば換へむと云ひしかど偖しも惜しき命なり

從二位爲子

忍遇戀と云ふ事を

憂き中のそれを情に有りし夜の夢よ見きとも人に語るな

前大納言爲家

女と夜もすがら物語してあしたに云ひつかはしける

生きて世の忘形見と成やせむ夢計りだにぬともなき夜は

安嘉門院四條

返し

あかざりし暗の現を限にて又も見ざらむゆめぞはかなき

永福門院内侍

戀の歌とてよめる

逢ひ見つる今夜の哀夢なれな覺めては物を思はざるべく

從二位爲子

夢とてや語りもせまし人知れず思ふもあかぬ夜半の名殘を


藤原爲基朝臣

夢中遇戀といふ事を

現にも逢はゞかくこそ思寢の夢は覺めても嬉しかりけり

前大納言爲家

女の許にあからさまに罷りて物語りなどして立ち歸りて申しつかはしける

まどろまぬ時さへ夢の見えつるは心に餘る往來なりけり

安嘉門院四條

かへし

魂は現のゆめにあくがれて見しも見えしも思ひわかれず

法印長舜

題志らず

ぬるが内に逢ふと見つるも頼まれず心の通ふ夢路ならねば

前大納言爲家

女のもとへ近き程にあるよし音づれて侍りければ、今宵なむ夢に見えつるは鹽竈のしるしなりけりと申して侍りけるにつかはしける

聞きてだに身こそ焦るれ通ふなる夢の直路のちかの鹽竈

安嘉門院四條

返し

身をこがす契ばかりか徒らに思はぬ中のちかのしほがま

徽安門院一條

忍逢戀

包む内は稀の逢ふ夜も更けはてぬ人の鎭る程を待つまに

後西園寺入道前太政大臣

建治の百首の歌の中に

掻き亂す寢くたれ髮の眉墨もうつりにけりな小夜の手枕

讀人志らず

題志らず

逢ひ難き君に逢へるよ郭公こと時よりはいまこそ鳴かめ

唐あゐのやしほの衣朝な/\なれはすれどもいや珍しき

章義門院

戀の歌の中に

向ふ中のつらくしもなき氣色にぞ日頃の憂さも言はず成ぬる

徽安門院一條

百首の歌奉りし時

我が爲に深き方には云爲せど誰が障る夜のすさびなる覽

新室町院御匣

忍遇戀

哀なり斯る人まの時の間も又いかならむ世にかと思へば

安嘉門院四條

人にだに忍ぶるなかの曉を誰れ知せてかとりの鳴くらむ

徽安門院

戀の歌に

たま/\の今宵一夜は夢にして又幾月日戀ひむとすらむ

後伏見院御歌

別戀の心をよませ給ひける

別れ路を急がぬ鳥の聲よりもまだ空たかき月ぞうれしき

權大納言公宗

同じ心を

憂かりける人こそ有らめ曉の雲さへ峰になどわかるらむ

入道二品親王法守

更けてとふ夜半の殘はすくなきを又歸るさに猶急ぐらむ

左近中將忠季

偖も又いつぞとだにも云ひかねて咽ぶ泪におき別れぬる

永福門院

戀曉と云ふ事を

きぬ%\を急ぐ別は夜深くてまた寢久しきあかつきの床

從三位客子

曉を憂き物とだにしらざりき枕さだめぬゆめのちぎりは

太上天皇

百首の歌の中に

邂逅の夜をさへ分くる方のあれや鳥の音をだに聞かぬ別路

進子内親王

出でがてに又立歸り惜む間に別れの戸口明け過ぎぬなり

從三位親子

戀の歌とてよめる

明けぬるか又はいつかの鳥の音に人の頼めをきく迄もなし

前中納言定家

句のかみに文字を置きてよみ侍りける歌の中に

手を結ぶ程だに飽かぬ山の井のかげはなれ行く袖の白玉

從三位頼政

戀の歌に

明ぬとて鳴く/\歸る道芝の露は我が置く物にぞ有ける

後伏見院御歌

別戀の心を

又や見む又や見ざらむとばかりに面影暮るゝ今朝の別路

前大納言實明女

我ならぬ人もや忍ぶ歸るさの夜深き道に逢へるをぐるま

前大納言爲家

戀の歌の中に

八聲なくかけの垂れ尾の己れのみ長くや人に思ひ亂れむ

進子内親王

名殘をばさすがにかくる玉章に又此の暮もなどか頼めぬ

永福門院

後朝戀を

其儘の夢の名殘のさめぬ間に又同じくば逢ひ見てしがな

從三位親子

いつと待つ日數は暫し慰むを今朝別れぬる今日ぞ侘しき

永福門院内侍

稀に見る夢の名殘はさめ難み今朝しも増る物をこそ思へ

和泉式部

九月ばかり曉歸りける人の許に

人は行き霧はまがきに立ち止りさも中空にながめつる哉

讀人志らず

題志らず

玉ゆらに昨日の夕べ見し物を今日のあしたは戀ふべき物か

藤原元眞

今朝こそは別れて來つれいつの間に覺束なくも思ふなる覽