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風雅和歌集卷第十三 戀歌四
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13. 風雅和歌集卷第十三
戀歌四

權中納言定頼

日ごろ雨の降るに人の許につかはしける

つれ%\と詠めのみする此頃は空も人こそ戀しかるらし

左近大將朝光

雨降る日女の許より歸りて程經てつかはしける

程ふれば忘れやしぬる春雨のふることのみぞ我はこひしき

馬内侍

返し

いとゞしくぬれのみ増る衣手に雨降る事を何にかくらむ

貫之

題志らず

歸るかり我が言傳てよ草枕たびはいもこそ戀しかりけれ

和泉式部

人のこむと頼めて見え侍らざりけるつとめてよめる

水鷄だに敲く音せば眞木の戸を心遣にも明けて見てまし

讀人志らず

題志らず

いかにして忘るゝ物ぞ吾妹子に戀は増れど忘られなくに

大原のふりにし里に妹を置て我いねかねつ夢に見えつゝ

吾妹子に逢ふよしもなみ駿河なる富士の高嶺の燃つゝかあらむ

小町

世の中は飛鳥河にもならばなれ君と我とが中したえずば

永福門院

戀の心を

今日はもし人もや我を思ひ出づる我も常より人の戀しき

進子内親王

戀命

空の色草木を見るもみな悲し命にかくるものをおもへば

前大納言爲兼

寄雲戀

物思ふ心の色に染められて目に見る雲もひとやこひしき

院御歌

戀ひ餘る詠めを人は知りもせじ我とそめなす雲の夕ぐれ

永福門院

今しもあれ人の詠もかゝらじを消ゆるも惜しき雲の一村

伏見院御歌

戀の御歌の中に

それをだに思ひさまさじ戀しさの進むまゝなる夕暮の空

同院新宰相

寐られねば唯つく%\と物を思ふ心にかはる燈火のいろ

太上天皇

待過す月日の程を味氣なみ絶えなむとてもたけからじ身を

從一位教良女

斯やはと覺えし時も覺え鳬凡て人にはなれでぞ有らまし

前太宰大貳俊兼

今はとてつらきに爲て見る人の偖もいかにと云ふしもぞうき

從二位爲子

戀しさも人のつらさも知らざりし昔乍らの我身ともがな

院御歌

日増戀と云ふ事を

聞添ふる昨日に今日の憂きふしに覺めぬ哀も生憎にして

權大納言公蔭

題志らず

恨みたらばさこそ有らめと思ふ方に思咽びて過ぐる比哉

伏見院御歌

いとゞこそ頼み所もなくならめ憂きには暫し思ひ定めじ

後伏見院御歌

慕ふ方の進むにつけて厭ひ増る人と我との中ぞはるけき

二品法親王寛尊

定めなき人の心のいかなれば憂き一方にかはり行くらむ

儀子内親王

院の戀の五首の歌合に、戀泪を

すべて此の泪の隙やいつならむ哀は哀れ憂きは憂しとて

權大納言公蔭

百首の歌奉りし時、戀の歌

思ひとればさすが哀れも添ふ物を常の恨みの泪とや見る

院御歌

戀の歌とてよませ給ひける

常はたゞ獨り詠めて大方の人にさへこそうとくなりゆけ

太上天皇

云ふきはゝ及ばぬ憂さの底深みあまる泪を言の葉にして

永福門院

大方の世は安げなし人はうし我が身孰くに暫し置かまし

院御歌

五十番歌合に、漸變戀を

そことなき恨ぞ常に思ほゆるいかにぞ人のあらずなる頃

永福門院

かはり立つ人の心の色や何恨みむとすればその節となき

儀子内親王

戀の歌の中に

是やさば變るなる覽其節と見えぬ物から有りしにも似ぬ

歌御歌

五首の歌合に、戀憂喜と云ふ事を

かはり立つ凡べて恨のその上に憂さ哀れさはかりの節々

式部卿恒明親王

漸變戀

とはぬ間を忘れずながら程ふるや遠ざかるべき始なる覽

昭訓門院權大納言

暮れなばと頼むる夜半の更しより空しく明くる憂さぞ重る

覺譽法親王

變戀の心を

變り立つ心と見ゆるその上のなげの情よよしやいつまで

永福門院内侍

變るかと人に心をとめて見ればはかなき節も有りしにぞ似ぬ

前大納言實明女

憂さは増して哀と思ふ中にしもかはる心の色は見ゆるを

永福門院右衛門督

五十番歌合に、寄人戀を

一筋に憂きよりも猶憂かりけり有りしにかはる人の情は

儀子内親王

五首の歌合に、戀昨今と云ふ事を

變るてふ人よげにこそ變りけれ昨日見ざりし今日のつらさは

後伏見院中納言典侍

戀の歌に

恨み果てむ今はよしやと思ふより心弱くぞ又あはれなる

宣光門院新右衛門督

人は憂く我のみ覺めぬ哀れにてつひの契の果ぞゆかしき

藤原實
[_]
[2]B
朝臣

せめて我が思ふ程こそ難くともかけよや常の情ばかりは

藤原俊冬

いかにせむ常のつらさはつらさにて今一節の更に添ふ頃

權大納言公宗母

恨戀の心を

つらしとも猶世の常の恨みかはいづくに殘る心よわさぞ

進子内親王

戀の歌とて

つらし共中々なれば云ひはせで恨みけりとはいかで知せむ

儀子内親王

思ひとる唯此のまゝのつらさにて又は哀に歸らずもがな

前太宰大貳俊兼

あばらやの唯一方を思にて侘びぬる果は憂さも知られず

冷泉

院の五首の歌合に、變憂喜

哀見せし人やはあらぬ憂きや誰我は變らぬ元の身にして

院御歌

戀餘波と云ふ事をよませ給ひける

人こそ有れ我さへしひて忘れなば名殘なからむ其も悲しき

康永二年、歌合にの戀終を

人知れず我のみ弱き哀かなこの一節ぞかぎりとおもふに

永福門院右衞門督

我のみは憂さをも強て忍ぶとも變るが上の人はいつまで

徽安門院

戀命

憂きに厭ふ又同じ世を惜むとて命ひとつを定めかねぬる

延政門院新大納言

伏見院の五十番歌合に、戀夕を

いかにせむ雲の行く方風の音待ちなれし夜に似たる夕を

西宮前左大臣

七月七日よみ侍りける

七夕の契れる秋も來にけるよいつと定めぬ我ぞわびしき

貫之

戀の歌の中に

稀に逢ふと云ふ七夕も天の川渡らぬ年はあらじとぞ思ふ

後伏見院御歌

寄七夕戀と云ふ事を

更にこそ忘れしことの思ほゆれ今日星合のそらに詠めて

永福門院

題志らず

晴れずのみ心に物を思ふ間に萩の花咲くあきも來にけり

光孝天皇御歌

人に給はせける

秋なれば萩の野もせに置く露のひるまにさへも戀しきやなぞ

貫之

戀の歌の中に

萩の葉の色づく秋を徒らにあまたかぞへて過しつるかな

讀人志らず

我が宿の秋の萩咲く夕影に今も見てしがきみがすがたを

鎌倉右大臣

君に戀ひうらぶれをれば秋風に靡く淺茅の露ぞけぬべき

和泉式部

思ふ事侍りける頃、月を見て

物思ふに哀れなるかと我ならぬ人に今宵の月をとはゞや

小侍從

月の夜久我内大臣の許へつかはしける

詠むらむ同じ月をば見るものをかはすに通ふ心なりせば

久我内大臣

返し

今宵我が訪はれましやは月を見て通ふ心の空に志るくば

伏見院御歌

戀の御歌の中に

思ふ人今宵の月をいかに見るや常にしも非ぬ色に悲しき

同院新宰相

さらざりし其夜の月を如何見し向へば人の憂さになり行く

權大納言公蔭

哀れいかに思ふ心のあらざらむ詠めば月にいま通ふとも

前中納言爲相

前大納言爲兼の家にて歌よみ侍りけるに、寄月戀

見るからに戀しさをのみ催して人のさそはぬ月も恨めし

藤原隆清朝臣

同じ心を

變らぬも中々つらし諸共に見し夜の月はおなじおもかげ

大僧正行尊

曉片思と云ふ事を

思ひ出づる心や君はなかるらむ同じ有明の月を見るとも

中院前太政大臣

戀の歌合の中に

憂き物と恨みても猶悲しきは面影さらぬありあけのつき

後京極攝政前太政大臣

千五百番歌合に

我れとこそ詠めなれにし山の端にそれも形見の有明の月

讀人志らず

題志らず

君戀ふと萎えうらぶれ我れをれば秋風吹きて月傾ぶきぬ

妹を思ひいのねられぬに曉の朝霧ごもりかりぞ鳴くなる

伏見院御歌

此暮に我が戀ひをれば寒き雁鳴つゝ行くは妹がりか行く

永福門院内侍

哀また夢だに見えで明けやせむ寐ぬ夜の床は面影にして

順徳院御歌

忘れむと思ふはおのが心にて誰が驚かすなみだなるらむ

前中納言定家

憂しとても誰にか問はむ難面くて變る心をさらば教へよ

院兵衛督

人にうつる心をだにも教へ置けさらば慰む方も有りやと

藤原定宗朝臣

戀情と云ふ事を

我ながら我に叶はぬ心なれや忘れむとすればしひて戀しき

藤原親行朝臣

憂きにならふ心かあはれたまさかの人の情の今は嬉しき

從二位爲子

戀の歌に

我が心恨みにむきて恨み果てよ哀れになれば忍び難きを

左近中將忠季

斯てしも思ひや弱ると計りに憂きが嬉しき方も有りけり

前大納言實明女

戀命を

憂きが上の猶も情のうちにこそ君に命を捨てゝ聞かれめ

伏見院御歌

題志らず

憂き事を爭でなべてに思做さむ嬉しくとても幾程のよに

儀子内親王

憂きもよし報なる覽と思へ共見えぬ世々には慰まばこそ

伏見院新宰相

人よりは身こそ憂けれと思做すも其しも物の悲しき物を

民部卿爲定

遇不會戀

同じ世に幾度ものを思へとてつらきにかへる心なるらむ

祝子内親王

戀の歌の中に

憂きゆゑも斯くやはと思ふ節々よ我こそ人を猶頼みけれ

權大納言公蔭

恨戀の心を

つらさをも思ふ計りはえぞ云はぬかごと求むる人の氣色に

左兵衞督直義

百首の歌奉りし時

引換へて變るしも憂し思ふ色をさのみは人の何か見せけむ

院兵衛督

戀の歌に

かばかりの憂さならざりし頃だにも折々ませし底の恨を

前大納言爲家

寳治の百首の歌に、寄虫戀

絶えねばと思ふも悲しさゝ蟹の厭はれながらかゝる契は

徽安門院

六帖の題にこと人を思ふと云ふ事を

人を人の思ふ限を見るにしもくらぶとなしに身ぞ哀なる

永福門院

題志らず

すべて唯人になれじとこりぬるもいつの爲ぞと哀なる哉

權大納言公宗

寄情戀と云ふ事を

侘つゝは人に任せて恨みぬを憂きをも知らぬ心とや思ふ

藤原宗季

猶暫し憂きをば憂きになし果てじ變る心の變りもぞする

前大納言尊氏

恨戀の心をよめる

憂き中ようらみのかずは積れども情と思ふ一ふしもなし

永福門院

題志らず

今は早と思ひしことも幾へだて隔つるはてはことのはもなし

猶暫し此の一ふしは恨みはてじなじかと思ふ情もぞ見る

後嵯峨院御歌

建長三年吹田にて十首の歌講ぜられけるに

憂き節は數にもあらずしづた卷くり返しては尚ぞ戀しき

謙徳公

心やすくもえあはぬ人に

つらかりし君にまさりて憂き物は己が命の長きなりけり
[_]
[2] A kanji in place of B in our copy-text is unavailable in the JIS code table. The kanji is Morohashi's kanji number 1721.