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風雅和歌集卷第十二 戀歌三
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12. 風雅和歌集卷第十二
戀歌三

後二條院御歌

題志らず

いかにせむ世に僞の有るまゝに我がかね言を人の頼まぬ

後光明照院前關白左大臣

後宇多院に奉りける百首の歌の中に

よし今は頼まずとても言の葉のかはるが末に思ひ合せば

徽安門院

契戀の心を

限りなく深き契を聞く中に人にもさぞのなからましかば

前大納言實明女

百首の歌奉りし時

なほゆかし思ふぞと云ふ其の内の深き限は我ばかりかと

院御歌

戀の御歌の中に

人よまして心の底の哀れをば我れにて知らぬ奥も殘るを

永福門院

なるゝ間の哀に遂にひかれ來て厭ひ難くぞ今はなりぬる

從三位親子

通ひけりと思ひ知られじ人づまに心の色の添ひ増るころ

從二位宣子

戀ひ恨み君に心はなりはてゝあらぬ思ひもませぬ頃かな

進子内親王

哀れさらば忘れて見ばや生憎に我が慕へはぞ人は思はぬ

前大納言實明女

増る方の人にいかなる言の葉の我が聞かざりし際を云ふ覽

院別當

さのみ唯哀なるしも頼まれず斯ては人の果てじと思へば

大江高廣

恨みても思ひ知らねば中々になにか心のいろを見えけむ

從三位爲理

契顯戀と云ふ事を

洩すよりあだなる程の知らるれば云ひし契の末も頼まず

院冷泉

戀の五首の歌合に、戀命

一度の逢瀬にかへし命なれば捨ても惜みも君にのみこそ

藤原爲名朝臣

契戀の心を

何か云ふ後の世までのかね言よ人も思はじ我もたのまず

院兵衞督

戀の歌の中に

始めより頼まじすべて頼むよりつらき恨はそふと思へば

院御歌

憂きながら流石に絶えぬ契をば猶も哀になしこそはせめ

儀子内親王

思ひけつ限こそ有れ憂き身ぞと忍ふが上も餘るつらさを

今上御歌

恨戀を

つらさをば憂き身の咎と喞ちつゝ哀を猶も醒し兼ねぬる

院冷泉

さばかりも心とゞめて思ふかと恨むるにしも添ふ哀かな

前大納言爲兼

戀の歌とて

思ひ鳬と頼成りての後しもぞはかなき事も人よりは憂き

思取りし昨日の憂さは弱ればや今日は待つぞと又いはれぬる

永福門院

習ひあらばげにもしやとも頼まゝし僞としも見えぬ言の葉

院御歌

寄人戀と云ふ事を

さらばとて頼むになれば人心及ばぬ際の多くも有るかな

徽安門院一條

百首の歌奉りしに

人よされば誰か夜がるヽ夜がれとて逢はぬ絶間を憂しといふ覽

入道二品親王法守

げに思ふ心の中は言の葉のおよばぬ上もみゆらむものを

宣光門院新右衛門督

かばかりも思ひけるよの哀より我も心をゆるし立ちぬる

永福門院

題志らず

思ふ方によし唯凡べて押籠めてさのみは人の心をば見じ

憂きも契つらきも契よしさらば皆哀れにや思ひなさまし

進子内親王

院の五首歌合に、戀憂喜といふこと

憂きに添ふ哀に我れもみだされて一方にしもえこそ定めね

權大納言公宗女

戀の歌の中に

人はしらじ今はと思ひとるきはゝ恨のしたによわき哀も

大藏卿有家

後京極攝政、左大將に侍りける時、家に六百番歌合し侍りけるに、契戀を

先の世を思ふさへこそ嬉しけれ契るも今日の契のみかは

前大納言爲家

千首の歌の中に

契りしを頼めばつらしおもはねばなにを命の慰めぞなき

權大納言公蔭

百首の歌奉りし時、戀の歌

おし返し哀なる哉むくい有りて憂きも二世の契と思へば

院一條

戀契を

憂きにしも哀の添ふよ是ぞ此の遁れざりける契と思ふに

左近中將忠季

戀情と云ふ事を

思ひとけば心づからに歸れとも唯なほ人のうきに覺ゆる

從一位教良女

寄身戀

身を知らぬ思ひと人や思ふらむ憂きをば置ける上の思を

從二位爲子

題志らず

我も云ひきつらくば命あらじとは憂き人のみや僞はする

伏見院新宰相

限なく憂き物からに哀なる孰れ我が身のこゝろなるらむ

徽安門院一條

奉恨戀と云ふ事を

言はねどもつらしと思ふ色や見ゆる慰め顏に人の恨むる

大納言公重

稀逢戀

侘ぬれば斯こそ物は哀なれ絶えぬ計りのたま/\の夜を

徽安門院

題志らず

憂からぬもまして憂きにも哀々よしなかりける人の契を

哀なる節もさすがに有りけるよ思ひいでなき契と思へど

太上天皇

百首の歌に

其までは思入れずやと思ふ人の恨むる節ぞさては嬉しき

儀子内親王

戀の歌に

我と人哀れ心のかはるとてなどかはつらき何かこひしき

後光明照院前關白左大臣

恨戀の心を

兼てより恨置かばや憂きにならむ心の後はかひもあらじを

山本入道前太政大臣女

つらけれど猶戀しきよ身の程の憂きをば知らぬ人の習に

權大納言公宗女

戀の歌とて

哀知らじ常の恨におもなれてこれをまことの限なりとも

徽安門院一條

戀の五首の歌合に、戀夢を

人の通ふ哀になして哀なるよ夢は我が見る思ひねなれど

院一條

覺め難みしばし現になしかねぬ哀れなりつる夢の名殘を

前中納言公雄

戀の歌の中に

面影は殘る形見の現にてまだ見ぬゆめの覺むる間もなし

藤原懷世朝臣

自づから夢路ばかりの逢ふ事を通ふ心とたのむはかなさ

從二位爲子

思盡す心よ行きて夢に見ゆなそをだに人の厭ひもぞする

前太宰大貳俊兼

つらきをば世々の報と思ふにも人は憂からで猶ぞ戀しき

太上天皇

百首の歌の中に

世々の契いかゞ結びしと思ふ度に始めて更に人の悲しき

永福門院

題志らず

大方は頼むべくしもなき人の憂からぬにこそ思侘びぬれ

院兵衞督

それしもやうき身は人に厭はれむ深き思の際を見ずとて

伏見院御歌

かはり行く昨日の哀れ今日の恨み人に心の定めなの世や

徽安門院

戀涙と云ふ事を

落ちけりな我だに知らぬ涙哉枕ぬれ行く夜半のひとり寐

永福門院右衛門督

その行くへきけば涙ぞ先落つる憂さ戀しさも思分かねど

兵衞督

院の百番歌合に、寄心戀を

思はぬになす心しもいかなれや常はながめて涙のみうく

今出川入道前右大臣

題志らず

哀にも憂きにも落つる我が涙さも殘有る物にぞ有りける

前參議家親

つらけれど思知らぬに爲す物を何と涙のさのみ落つらむ

藤原公眞朝臣母

うきふしも思ひ入れじと思ふ身に何故さのみ落つる涙ぞ

伏見院御歌

戀の御歌の中に

泪だに思ふが程はこぼれぬよあまりくだくるいまの心に

思ひ/\泪とまでになりぬるをあさくも人の慰むるかな

從二位爲子

せめてたゞ思ふあたりの事をだに同じ心に云ふ人もがな

徽安門院小宰相

百首の歌奉りしに

渡る瀬のさも定めなき中川よ潮の滿ち干る浦ならなくに

二品法親王覺助

文保三年後宇多院へ召されける百首の歌に

人心思ひ亂るゝかくなはのとにも斯にもむすぼゝれつゝ

前左兵衛督爲成

六帖の題にて歌よみける中に、あやを

夕暮は思ひ亂れて雲どりのあやに戀しきひとのおもかげ

貫之

題志らず

くれなゐに袖ぞ移ろふ戀しきや泪の川の色には有るらむ

讀人志らず

うらぶれて物な思ひそ天雲のたゆたふ心我が思はなくに

權大納言實家

戀の歌の中に

戀しさの天つみ空に滿ちぬれば泪の雨は降るにぞ有ける

權大納言公蔭

院に三十首の歌召されし時、戀月を

雨雲の絶えま/\を行く月のみらく少なき妹に戀ひつゝ

正二位隆教

百首の歌奉りし時

そのまゝに思ひ合する方ぞなきあだに見し夜の轉寐の夢

前中納言定家

後京極攝政、左大將に侍りける時、家に六百番歌合し侍りけるに、寄風戀を

知らざりし夜深き風の音もせず手枕疎きあきのこなたは

權大納言公蔭

戀海と云ふ事を

君故に思ふ思ひは大海のなみをばそでにかけぬ間もなし

伏見院御歌

伊勢の海渚に拾ふたま/\も袖干す間なき物をこそ思へ

戀の歌あまたよませ給ひけるに

戀しさになり立つ中の詠めには面影ならぬ草も木もなし

權大納言公宗女

寄書戀を

何となくうちも置かれぬ玉章よ哀なるべき節はなけれど

儀子内親王

思ふ程はかゝじと思ふ玉章に猶ともすれば進むことのは

宣光門院新右衞門督

なほざりに人は見るらむ玉章に思ふ心のおくはのこさぬ

法印實性

通書戀と云ふ事を

通ふとていかゞ頼まむ徒らに末もとほらぬ水ぐきのあと

讀人志らず

人の文をあだ/\しくちらすと聞きて恨み侍れば

常磐山露ももらさぬ言の葉の色なる樣にいかで散りけむ

相模

返し

色かへぬ常磐なりせば言の葉を風につけても散さましやは

三條院女藏人左近

實方朝臣、みちの國より人の許へ弓をつかはして、戀しくばこれをいだきてふせと申したりける返し、人にかはりて

これやさば安達の眞弓今こそは思ひためたる事も語らめ

花山院前内大臣

寳治の百首の歌に、寄玉戀

かざしけむ主は白玉知らね共手にとるからに哀とぞ思ふ

冷泉前太政大臣

白玉か何ぞとたどる人もあらば泪の露をいかにこたへむ