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新拾遺和歌集卷第十七 釋教歌
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17. 新拾遺和歌集卷第十七
釋教歌

もろともに一味の雨はかゝれども松は緑に藤はむらさき

此の歌は、住吉の社にまうでゝ通夜し侍りける人の夢に示し給ひける普賢菩薩の御歌となむ。

傳教大師

比叡山の中堂に始めて常燈ともして揚げ給ひける時

あきらけく後の佛のみよまでも光つたへよ法のともし火

花山院御製

修行せさせ給うける時粉河の觀音にて、御札に書かせ給うける御歌

昔より風に知られぬともし火の光にはるゝ後の世のやみ

大貳三位

人の功徳つくりし所に捧物遣すとて

消えがたき昔の人のともし火に思ふ心はおとりしもせじ

慈覺大師

題志らず

三界をひとつ心と知りぬれば十の境こそすぐにみちなれ

清少納言女

法華經序品

白妙の光にまがふ色みてやひもとく花をかねて知るらむ

花山院入道前太政大臣

前大納言爲家日吉の社にて八講おこなひ侍りける時、人々に一品經の歌すゝめけるに、方便品

幾度かまた世に出でし秋の月あまねき影は人ももらさず

花山院前内大臣

譬喩品

めぐりきて猶ふる郷の出でがてをさそふも嬉し三の小車

法印房觀

得未曾有非本所望

かねて我が思ひしよりも吉野山なほ立ちまさる花の白雲

入道二品親王尊圓

化城喩品、從冥入於闇永不聞佛名の心を

五月やみ木の下道はくらきより暗きに迷ふ道ぞくるしき

前大納言忠良

採薪及菓

[_]
[6]D

つま木とる山の秋風いかばかり習はぬ袖に露こぼるらむ

從二位行家

勸持品

渡つ海の底まで照す月影に洩れたる海士はさぞ恨みけむ

前大納言資名

涌出品

法の花ひらくる庭の時の間に置くしら露の數ぞそひける

土御門入道前内大臣

壽量品

今も猶すむなるものを鷲の山人のこゝろの雲ぞへだつる

前大納言良信

柔和質直者則皆見我身の心を

にごりなき心の水にかげとめて二たびやどれ山の端の月

法眼源承

隨喜功徳品、何况於法會

水上をおもひこそやれ谷川のながれも匂ふ菊のしたみづ

寂蓮法師

如寒者得火

谷のみづ峯の嵐を忍びきて法のたきゞに逢ふぞうれしき

中納言爲藤

なき人をとぶらひて法華經書きて品々の心を歌に詠み侍りけるに、普門品、火澄變成池

なき人の別ををしの音にたつる思よ池のみづとだになれ

前中納言定家

母の爲に經書きける時、嚴王品の心を

此道を導べと頼む跡しあらば迷ひし闇も今日ははるけよ

寂然法師

普賢經、我心自空罪福無主

かつまたの池の心はむなしくて氷も水も名のみなりけり

周防内侍

小野右大臣の千日の講をたび/\聞きてはての日捧物遣しける包紙に

世にふれば君にひかれて有難き一味の雨に千度濡れぬる

入道二品親王覺譽

延文二年七月雨の御祈承はりて水天供つとめ侍りしに詠み侍りける

法の水絶えずばなどか草も木もうるほふ程の驗なからむ

二品法親王覺助

文保の百首の歌奉りし時

うづもれぬ法の水上跡しあれば代々の流は君ぞ知るらむ

高階宗成朝臣

題志らず

法の水汲みてやみまし山の井の濁りやすきは心なれども

前大納言宗明

十如是の心を詠み侍りしとき、如是縁

山川の同じながれをむすびても猶あさからぬ契をぞ知る

靜仁法親王

題志らず

絶えぬべき三井の流の法の水身をはや乍ら爭で汲まゝし

法印憲實

金剛經の是法平等無有高下の心を

みなそこに沈むもおなじ光ぞと空に知らるゝ秋の夜の月

薀堅法師

無量義經の四十餘年未顯眞實の心を

今ぞ見る四十ぢあまりの言の葉に顯はさゞりし露の光を

法眼源忠

扇解脱風除世惱熱

山の端の雲にいり日は殘れどもすゞしくなりぬ松の下風

夢窓國師

世尊不説之説、迦葉不聞之聞と云へる心を

樣々に説けども説かぬ言の葉を聞かずして聞く人ぞ少き

左兵衛督直義

釋教の歌に

かりにこそ説き置く法の理にとまりて人や猶まよふらむ

圓胤上人

消えなばと露の命にたのむかな深きよもぎのもとの誓を

赤染衛門

法師のかたはらなる局に來りしに經讀めと云はせしかば、いと暗し、火燈してと云ひしに油やるとて

消えぬべき法の末には成ぬ共身を燈しても聞くべかり鳬

入道親王尊道

二品尊圓親王書き置きたりける聖教を見て思ひつゞけ侍りける

おろかなる心のやみを照せとやかゝげ置きけむ法の燈火

前僧正慈勝

六帖の題にて詠み侍りける歌の中に、釣を

さのみなど苦しき海に廻るらむ釣する蜑のうけ難き身を

中務卿宗尊親王

不偸盜戒を

心なき春のあらしも山里のぬしある花はよきて吹かなむ

法印源全

延暦寺戒壇さらに造りて澄覺法親王受戒おこなひける時思ひつゞけゝる

法の道むかしにかへる時に逢ひて今も變らぬ教をぞ聞く

前僧正顯遍

識實性の唯識の心を

よしあしの思をやめて悟り入る心の奥もこゝろなりけり

後宇多院御製

釋教の御歌の中に

梅の花みよの佛のためにとて折りつる袖ぞ人なとがめそ

僧正慈能

一色一香無非中道

色も香もまことの法と聞きしより花に心の猶うつるかな

前大僧正公澄

善惡不二邪正一如の心を

よしあしは一つ入江の澪標ふかき御法のしるしなりけり

素性法師

世間相常住の心を

世の中の常とは見れど秋の野の移ろひかはる時ぞ侘しき

欣子内親王

題志らず

いたづらに又この度もこゆるぎの急がで法の舟に後るな

正嚴法師

いつかけし衣の裏の玉とだに知らで幾世か迷ひきぬらむ

讀人志らず

おろかなる泪をかけて歎くかな衣のうらの玉を知らねば

雙救上人

般舟讃、一到彌陀安養國元來是我法王家の心を

さらに又たづねきつれど住みなれし昔の花の都なりけり

權僧正圓位

題志らず

にごらじな心の水のそこきよみ八重に花咲くむねの蓮葉

兼空上人

九品往生の心を

よしあしの人をわかじと蓮ばな九品まで咲きかはるなり

法印顯詮

各留半座乘花葉待我閻浮同行人

頼むぞよさきだつ人に契りてしおなじ蓮の花のなかばを

讀人志らず

題志らず

こゝろをも猶や磨かむ蓮葉の露のたま/\法に逢ひつゝ

仁明天皇御製

いつのまに厭ふ心をかつ見つゝ蓮にをるは我身なるらむ

權少僧都源信

夏衣ひとへに西を思ふかなうらなく彌陀を頼む身なれば

參議雅經

五神通の中に、天耳通の心を

遠ざかる聲もをしまじ時鳥聞きのこすべき四方の空かは

前大僧正隆辨

彌勒を

ながき夜の曉を待つ月かげはいくへの雲の上にすむらむ

前大僧正桓守

釋教の歌の中に

さすが猶我が山のはに殘るかな闇路をてらす法の月かげ

法印守遍

十住心の中に、覺心不生心の心を

跡もなき室のやしまの夕けぶり靡くと見しや迷なるらむ

前大僧正榮海

法流の事勅問につきて奏し侍りし時、思ひつゞけ侍りける

言の葉を散らさずもがな雲居まで吹傳へたる小野の山風

後法性寺入道前關白太政大臣

法界體性智の心を

自から法の境に入る人はそれこそやがてさとりなりけれ

崇徳院御製

沙羅林を

梢さへ頼むかげなく枯れにけり花の姿のねにしかへれば

瞻西上人

雪にて丈六の佛を造り奉りて供養すとて詠める

いにしへの鶴の林のみゆきかと思ひとくにぞ哀なりける

後京極攝政前太政大臣

禪波羅密

心をばこゝろの底にをさめ置きて塵も動かぬ床の上かな

慈威上人

釋教の歌詠みける中に

夢ならば六十ぢの老も過に鳬覺めぬねぶりぞ久しかりける

心海上人

山の常行堂の流通の鐘に鑄つけ侍りける歌

本覺の山のたかねの鐘のおとに長き眠をおどろかすかな

前大僧正良信

菅原寺を興隆し侍りて後、古寺鐘と云ふ事を

菅原や絶えぬる法の跡とめて又おどろかす鐘のおとかな

慶政上人

地藏菩薩を

迷ひ行くふかき闇路のわたり川誠の瀬には君のみぞ立つ

爲道朝臣

地藏の名號を始に置きて六首の歌詠み侍りけるに

契あればうき身乍らぞ頼もしき救はむ世々の數に洩れじと

天台座主院源

題志らず

西へ行く月に心の澄ぬればうき世の中は寢られざりけり

土御門院御製

西へとや御法の門を教ふらむさきだちて行く秋の夜の月

後嵯峨院御製

月夜極樂を觀ぜさせ給ふとて

雲間よりいざよふ月にあくがれていとゞ西にも行く心哉

皇太后宮大夫俊成

美福門院に極樂六時讃の繪に書かるべき歌奉るべき由侍りけるに夜のさかひ靜にて漸く中夜に至るほど

ふかき夜の光も聲も靜かにて月のみ顏をさやかにぞ見る

前權僧正慈慶

究竟即の心を

一むらは猶しぐれつる雲はれて障るかたなく澄める月影

前大僧正良覺

心月輪の心を

身をさらぬ心のつきのわくらばに澄むぞ悟の始なりける

惟賢上人

菩提心論の我見自心形如月輪を

よそに見る影とは云はじ心にも空にも同じ月ぞ出でぬる

權僧正寛伊

前大僧正成惠に法流の事申しおくとて詠み侍りける

たのむぞよ御法のこまを進めても跡に迷ふな小野の古道

入道親王尊道

前大僧正桓豪、大僧都慈濟に灌頂さづけ侍りし又の朝申し遣しける

つたへ置くおなじ流のふかければ又せき入れつ谷川の水

前大僧正桓豪

返し

谷川の世々にせき入れし跡とめて絶えぬ流を今もうく覽

岡本前關白左大臣

懺法の悲歎の聲を聞きて詠み侍りける

今聞くも泪なりけりいにしへの杉立つほらの深き御法は

和泉式部

鞍馬に參りたりけるに、かたはらの局より扇にくだ物を入れておこせたりければ

いか計り勤むる事もなき物をこは誰が爲に拾ふこのみぞ
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[6] Kanji in place of D is not available in the JIS code table.