University of Virginia Library

Search this document 

 1. 
 2. 
 3. 
 4. 
 5. 
 6. 
 7. 
 8. 
 9. 
 10. 
 11. 
 12. 
 13. 
 14. 
collapse section15. 
新拾遺和歌集卷第十五 戀歌五
 1319. 
 1320. 
 1321. 
 1322. 
 1323. 
 1324. 
 1325. 
 1326. 
 1327. 
 1328. 
 1329. 
 1330. 
 1331. 
 1332. 
 1333. 
 1334. 
 1335. 
 1336. 
 1337. 
 1338. 
 1339. 
 1340. 
 1341. 
 1342. 
 1343. 
 1344. 
 1345. 
 1346. 
 1347. 
 1348. 
 1349. 
 1350. 
 1351. 
 1352. 
 1353. 
 1354. 
 1355. 
 1356. 
 1357. 
 1358. 
 1359. 
 1360. 
 1361. 
 1362. 
 1363. 
 1364. 
 1365. 
 1366. 
 1367. 
 1368. 
 1369. 
 1370. 
 1371. 
 1372. 
 1373. 
 1374. 
 1375. 
 1376. 
 1377. 
 1378. 
 1379. 
 1380. 
 16. 
 17. 
 18. 
 19. 
 20. 

15. 新拾遺和歌集卷第十五
戀歌五

小町

戀の歌の中に

よそにして見ずはありとも人心わすれ形見に猶や忍ばむ

西宮前左大臣

人やりにあらぬものから恨むるは身の理も思ひ知らずや

深養父

物思へばいも寐られぬを怪しくも忘るゝ事を夢に見る哉

一條太政大臣女

見しや夢我身やあらぬ契しに變るつらさぞ覺むる方なき

讀人志らず

夢ならで又もむすばぬ契かな解けし一夜のなかの下ひも

後西園寺入道前太政大臣

伏見院に奉りける三十首の歌に

須磨の蜑の汐なれ衣なれきてぞ間遠になるも恨なりける

前大納言爲世

元弘三年九月十三夜内裏にて人々題を探りて歌つかうまつりけるに、恨戀を

果は又蜑の住むてふ里と云へば導べだになき見を恨つゝ

正三位知家

光明峯寺入道前攝政の家の戀の十首の歌合に、寄網戀

置く網の引く手許多に袖ぬれて偖も恨みぬ波の間ぞなき

法師

題志らず

こと方に引く人なくば栲繩の間遠にくるもよしや恨みじ

鎌倉右大臣

かれ果てむ後忍べとや夏草の深くは人のたのめ置きけむ

源氏兼

ともしする夏野の鹿の音に立てぬ思もかくや苦しかる覽

安嘉門院四條

靡くともほには出でじとしの薄忍びし中は霜がれにけり

左兵衛督基氏

尋ぬべきしるしも今は跡絶えぬ雪のふる野の鵙の草ぐき

前中納言定家

洞院攝政左大臣の家の百首の歌に、怨戀と云ふ事を

己のみ天のさか手をうつたへに降りしく木葉跡だにもなし

御製

百首の歌めされしついでに、寄弓戀

今ぞ憂きかはる契のしらま弓なびきそめてし心よわさは

中園入道前太政大臣

我に引く契なりともたのまれじ安達のまゆみあだし心は

後堀河院民部卿典侍

光明峯寺入道前攝政の家の十首の歌合に同じ心を

人はいさあだちの眞弓おし返し心の末をいかゞたのまむ

前大納言實教

文保の百首の歌奉りける時

猶いかに戀死なぬ身のつらからむ後の世契る人も有せば

後深草院辨内侍

戀の歌の中に

戀死なばやすかりぬべき命さへ逢ふを限に年ぞ經にける

後醍醐院少將内侍

文保の百首の歌に

變らじと思へばこそは契るらめ我かね言にいかゞ恨みむ

讀人志らず

題志らず

いかばかり猶憂からまし僞のなき世にかはる契なりせば

前中納言公修

契經年戀を

僞にかはるも知らで幾とせか契りしまゝの身を頼むらむ

等持院贈左大臣

貞和の百首の歌奉りし時

言の葉の通はずなればいつはりと恨みし頃を又忍ぶかな

空曉法師

題志らず

恨むべき人目のひまも幾度か數ならぬ身に過しきつらむ

信實朝臣

文永二年四月後嵯峨院に奉りける三十首の歌の中に、恨戀

云へばげに我身のみこそうかりけれつらき人には言の葉もなし

侍從爲親

龜山殿の千首の歌に

暫し唯云はでやみましつらさをも憂きをも知らぬ身とはなる共

二品法親王寛尊

戀の心を

何と唯恨むるかひもなき中に言の葉をのみ盡しきぬらむ

藤原長秀

ことの葉の移ろふだにも憂きなかに今は梢の秋風ぞ吹く

藤原良尹朝臣

はゝそ原うつろふ色をつらしとも誰にいはたの杜の下露

前關白左大臣近衛

言の葉のさきだつ袖の涙にぞ堪へぬ恨のほどは知るらむ

前大納言經繼

正和五年九月十三夜後醍醐院みこの宮と申しける時五首のうためされけるに、月前恨戀

面影は我身にそへるつらさにて恨みぬ月に濡るゝ袖かな

前大納言爲定

見ても猶もの思へとや憂き人の我が面影を月に添へけむ

前中納言實前

澄む月の泪にくもる影までも思へば人のつらさなりけり

中納言爲藤

人をこそ恨みはつとも面影の忘れぬ月をえやはいとはむ

後京極前關白太政大臣家肥後

戀の歌とてよみ侍りける

恨みわびたへぬ泪にそぼちつゝ色變りゆく袖を見せばや

修理大夫顯季

恨人戀の心を

言の葉を頼まざりせば厭ふ共人をつらしと思はざらまし

今出河院近衛

題志らず

恨みても猶慕ふかな戀しさのつらさにまくる習なければ

法皇御製

貞和の百首の歌めしけるついでに、戀の御歌とて詠ませ給うける

さてもまた怪しきまでの契かな恨みばかりを思出にして

中園入道前太政大臣

あり果てぬならひはさぞと慰めて變る契を歎かずもがな

前大納言公蔭

戀の歌の中に

かつしたふ心よわさは中々に恨みて何のかひかあるべき

山階入道前左大臣

數ならぬ身の理になぐさめて憂きを恨みぬ程ぞ經にける

源公信

變らじと契りし末を頼みける我がはかなさぞ今は悔しき

前大納言爲世

文永七年八月十五夜、内裏の五首の歌に、恨戀

最ど猶憂きにつけてぞ思ふにも云ふにも餘る人のつらさは

平親清女

戀の歌の中に

憂き事もいくよかあらむ吉野川よしや人をも今は恨みじ

陽徳門院中將

我が袖に泪のたきぞ落ちまさる人のうき瀬を水上にして

前大僧正禪助

寄枕戀

よしさらば泪に朽ちね中々にかたみもつらしつげのを枕

後深草院少將内侍

題志らず

いつはりのなくて過ぎにし昔だに人の契を頼みやはせし

伏見院御製

うかるべき身を知る上の戀しさは何にか暫し思ひ沈めむ

二品法親王覺助

深山木のしたはふ葛の下紅葉うらむる色を知る人ぞなき

藤原基隆

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に、戀

知らせばや竹の籬にはふ葛の下に恨むるふしのしげさを

平親清女妹

寄葛戀

秋かぜに玉まく葛のした露やうらみに堪へぬ涙なるらむ

道智法師

今ぞ知る眞葛が原に吹く風のうらみも戀にかへる物とは

覺空上人

題志らず

いかにせむ鴫の羽根掻かき絶えてとはれぬ數の積る恨を

藤原忠兼

稀にだに逢ふ夜もあらば恨みまし枕の塵の積るつらさを

前大納言爲家

白河殿の七百首の歌に、寄鬘戀

玉かづらいかに寐し夜の手枕につらき契のかけ離れけむ

權大納言義詮

百首の歌奉りし時、寄衣戀

おのづから見しも契のかり衣恨むるかひや遂になからむ

鷹司院帥

題志らず

今は唯恨むるまでは見えずともつらさを爭で思ひ知せむ

和泉式部

恨めしき人の音せざりければ

そのかみはいかに知りてか恨けむ憂きこそ長き命なりけれ

源師光

文遣しける女の後には返事もせず侍りければ

つらかりし言の葉をなど恨けむ其をだにこそ聞かず成ぬれ

讀人志らず

戀の歌の中に

つらしとて恨みは果てじまれにだに人の契のあらむ限は

中務卿全仁親王

つらしとも恨みし程はさても猶人の名殘のある世なりけり

後嵯峨院御製

忘れじの言の葉なくば中々にとはぬ月日を恨みざらまし