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新拾遺和歌集卷第十六 神祇歌
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16. 新拾遺和歌集卷第十六
神祇歌

榊葉の枝にやどかるます鏡くもりあらせでかへる道かな

此の歌は暦應四年春日の神木都におはしましける時、託宣の御歌となむ。

後の世の苦しき事を思へかしあはれ此世は夢と知らずや

靜妙法師延暦寺の執當解却せられて後、日吉の地主權現にまうでゝ終夜祈請しけるに夢のうちに、寳殿のうちより詠ませせさ給ひけるとなむ。

たのめつゝこぬ年月を重ぬれば朽ちせぬ契いかゞ頼まむ

法印澄憲建久元年日吉の大宮の千僧供養の導師の賞を仁和寺の海惠にゆづりて律師になり侍りにけり。かの海惠、律師になりなば日吉へ參るべき由申しながら年月を送り侍りけるに示し給ひけるとなむ。

荒れ果つる我宿とはぬ恨をば隱れてこそは人に知られめ

これは熱田の社荒れて侍りけるころ、託宣の御歌となむ。

紅にぬれつゝ今日や匂ふらむ木の葉移りて落つる時雨は

亭子院奈良におまし/\ける時、立田山にて詠ませ給ひける北野の御歌となむ。

阿保經覽

延喜六年日本紀の竟宴の歌、思兼神

思兼たばかり事をせざりせば天の岩戸はひらけざらまし

從二位家隆

神祇の歌の中に

見ぬ世まで心ぞすめる神風や御裳すそ川のあかつきの聲

源兼氏朝臣

太神宮の歌合に

神代よりいくとせふりぬ鈴鹿川やそ瀬の浪の秋の夜の月

達智門院

寄月神祇と云ふ事を

曇なき君が八千世を照すらし神路のやまに出づる月かげ

冷泉

花園院御位おりさせ給はむとての頃、内侍所へ行幸ありし御供に參りて詠める

あはれとや神のかゞみも照し見る今はと思ふ君が名殘を

大江廣秀

題志らず

曇なき八咫の鏡やいは戸あけし天てる神の御影なるらむ

正三位成國

古に神の御かげのうつりしや今も曇らぬかゞみなるらむ

源智行

天地のひらけしよりや千早ぶる神の御國と云ひ始めけむ

讀人志らず

天地の昔を問へばあし原やなほそのかみの代々ぞ久しき

荒木田延季

神祇の歌の中に

神もさぞあかず見るらむ櫻散るしめの宮守あさ清めすな

津守國夏

散る時や榊の枝にかゝるらむ神のいがきの花のしら木綿

賀茂脩久

榊葉に咲きそふはなの白木綿は神も心にかけて見るらむ

前大納言爲家

法印昭清すゝめ侍りける石清水の社の三十首の歌に、寄水祝

神がきやかげものどかに石清水すまむ千年の末ぞ久しき

伏見院御製

三十首の歌めしけるついでに、社頭祝を

石清水流れの末をうけつぎて絶えずぞすまむ萬代までに

前中納言有光

神祇

のぼるべき跡をぞ厭ふをとこ山うづもれ果つる嶺の白雪

龜山院御製

弘安元年百首の歌めしけるついでに

いは清水神の心にまかせてや我が行く末を定め置きけむ

按察使顯朝

題志らず

跡垂れて幾世經ぬらむ箱崎の志るしの松も神さびにけり

惟宗光吉朝臣

石清水神代の月やにごりなき人のこゝろの底にすむらむ

關白前左大臣

貞和二年百首の歌奉りける時

長閑なる春のまつりの花しづめ風をさまれと猶祈るらし

後醍醐院御製

元弘三年、立后の屏風に石清水臨時祭

こゝのへの櫻かざして今日はまた神につかふる雲の上人

前中納言親光

題志らず

三代の跡に流れをうけて石清水すめるを時と猶ぞ仕ふる

法印幸清

石清水古き流れの跡はあれど我が身一つの瀬に淀むかな

賀茂遠久

天のした御代をさまれと守るらし雲を分けてし神の誓に

賀茂經久

千早ぶる賀茂の瑞垣君が世を久しかれとぞ祈り初めてし

法印源深

後の世も此の世も神にまかするや愚なる身の頼なるらむ

從三位教久

年經ぬる我が神山の榊葉に幾重みしめを引きかさねけむ

平行氏

寄月神祇を

瑞垣の久しき世よりすむ月の神さびまさる影やそふらむ

源和義

等持院贈左大臣詠ませ侍りける賀茂の社の七首の歌に、神祇

いかばかり神も嬉しとみたらしや底まですめる君が心を

從三位氏久

社頭祝

萬代と君を祈りてふる袖はかげみたらしに神やうくらむ

藤原長能

神祇を

三笠山麓をめぐる佐保川のさして祈りし身をたのむかな

中臣祐殖

春日野の松も我身も老いに鳬二葉よりこそ仕へそめしか

前大納言經顯

貞和の百首の歌奉りし時

ことわりのたがはぬ道を春日山神の心と聞くもたのもし

三條入道前内大臣

春日の社に籠りて大將の事祈り申すとて思ひつゞけ侍りける

三笠山さすがにいかゞ捨てはてむ重なる家の藤の末葉を

此の後程なく右大將になりて侍りけるとなむ。

祝部成繁

題志らず

くもりなくてらす日吉の神垣に又ひかりそふ秋の夜の月

法印成繁

跡たるゝ神世を問へば大比叡や小比叡の杉にかゝる白雲

祝部行親

あひにあひて守る日吉の數々に七つの道の國さかゆらし

法印延全

神代よりかはらぬ松も年ふりてみゆき久しき志賀の唐崎

祝部成豐

おのづから仕へぬひまも心こそ猶をこたらぬ七の神がき

前大納言爲世

神祇の歌の中に

たのもしな祈るにつけて曇なき日吉のかげに道ぞ迷はぬ

讀人志らず

神垣や塵にまじはる光こそあまねく照すちかひなりけり

藤原雅朝朝臣

世のなかしづかならず侍りし頃熊野へ詠みて奉りける

さりともとねても覺めても頼む哉愚なる身を神に任せて

僧正良瑜

代々の跡にかはらず三山の檢校に補し侍る事を思ひて

仕へつゝ思ひしよりも三熊野のかみの惠ぞ身に餘りぬる

祝部行氏

神祇

神垣に御代治まれと祈るこそ君に仕ふるまことなりけれ

讀人志らず

白山にまうでゝ詠み侍りける

千早ぶる雪の白山わきて猶ふかきたのみは神ぞ知るらむ

後西園寺入道前太政大臣

嘉元の百首の歌奉りける時、神祇を

和歌の浦に玉拾ふべきみことのり道を守らば神もうくらむ

津守國道

前大納言爲世玉津島の社にて歌合し侍りける時

例なき光を添ふるたまつ島代々にもこえて神やうくらむ

皇太后宮大夫俊成

承安二年廣田の社の歌合を判じける奥に書きつけ侍りける

敷島や道は違へずと思へども人こそわかね神は知るらむ

伏見院御製

題志らず

神や知る世の爲とてぞ身をも思ふ身の爲にして世をば祈らず

前大納言爲家

道のべの松の下葉に引く志めはみわ据ゑ祭る印なるらし

從三位常昌

君が代をいのる心の誠をばいつはりなしと神はうくらむ

内大臣

社頭祝

明らけきあら人神に驗あらば曇らぬ御代をさぞ守るらむ

三條入道前太政大臣

題志らず

哀とやあら人神のみづはさす老木の松のとし經ぬる身を

源直氏

權大納言義詮北野の社に奉りける歌に、社頭祝

我が君の千世の爲とや宮居して一夜の松も年を經ぬらむ

伊勢大輔

住吉にまうでゝ詠める

ながらへむ世にもわすれじ住吉の岸に浪たつ松の秋かぜ

權大納言隆季

後白河院の御時、八十島の祭に、住吉にまかりて詠み侍りける

住の江に八十島かけてくる人や松を常磐の友と見るらむ

前中納言定家

西行法師すゝめ侍りける百首の歌に

憂きことも慰む道のしるべにや世を住吉と天くだりけむ

平政村朝臣

題志らず

住吉の松にまじれる玉垣のあけもみどりも年は經にけり

前大納言爲家

西園寺入道前太政大臣住居の社に、三十首の歌詠みて奉りけるに

いく世にか神の宮居のなりぬらむふりて久しき住吉の松

前中納言爲相

神祇

あらましの心のうちの手向ぐさまつと知らずや住吉の神

法印雲禪

敷島のみちをば道とまもらなむ世に住吉の神ならばかみ

津守國平

住吉の社の歌合、社頭祝

君が爲玉手のきしにやはらぐる光の末は千世もくもらじ

小辨

神樂を

吹きたつる庭火の前の笛の音を心すみてや神も聞くらむ

中務

小夜更けて霜は置くとも山人の折れる榊は色もかはらじ