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新拾遺和歌集卷第十四 戀歌四
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14. 新拾遺和歌集卷第十四
戀歌四

皇太后宮大夫俊成

戀の歌の中に

現には思ひ絶え行く逢ふ事をいかに見えつる夢路なる覽

前中納言定家

入道二品親王道助の家の五十首の歌に、寄枕戀

おもひ出づる契の程もみじか夜の春の枕に夢は覺めにき

藻壁門院少將

題志らず

思ひつゝいかに寐し夜を限にて又も結ばぬ夢路なるらむ

花園院御製

憂しと見し一夜の夢の名殘より心に覺めぬ物をこそ思へ

大納言師賢

寄夢戀

明くるをも待たぬ契の悲しきは逢ふと見る夜の夢の別路

性威法師

鳥羽玉の夢かあらぬか逢ふ事もたゞ一夜にてやみの現は

前中納言資平

名所戀と云ふ事を

現には訪はで年ふる三輪の山いかに待ち見むゆめの通路

中納言爲藤

後西園寺入道前太政大臣の家にて歌詠み侍りしに、寄山戀

うき身には越えて後こそ逢坂の山も隔つる關となりけれ

權中納言經定女

題志らず

越えてしも悔しかりける逢坂の關路を何に許しそめけむ

人麿

今のみもいもをば戀ひず奥山の岩根苔生ひて久しき物を

坂上大孃

中納言家持に遣しける

とに斯に人は云へども若狹路の後瀬の山の後も逢はむ君

中納言家持

返し

後瀬山後も逢はむと思ふにそ死ぬべき物を今日迄もあれ

三條右大臣女

中納言兼輔に逢ひはじめける頃は未だ下臈に侍りければ、女は逢はむの心やなかりけむ、男も宮仕にひまなくて常にも逢はざりける頃詠める

焚物のくゆる心はありしかど獨はたへて寐られざりけり

平政村朝臣

遇不逢戀

逢はでこそ戀をいのりと頼みしか今はた何か命なるべき

康資王母

題志らず

さらぬだに逢ふ事難き我が戀を年さへ痛く隔て行くかな

伏見院御製

戀の御歌の中に

自から又逢ふ契ありとてもなれしながらの世には歸らじ

馬内侍

絶えにし人の立ち歸り又云ひおこせたる返事に

君がこと思はぬ人のつらからば我は心もあくがれなまし

大納言顯實母

題しらず

つらかりし心くらべの一方も弱らぬ末はとほざかりつゝ

津守國夏

後宇多院の宰相典侍の歌合に、絶戀

頼まれぬ中とは豫て云ひしかど唯一夜とは思ひやはせし

前關白左大臣近衛

戀の歌の中に

憂きに猶こりずぞたのむ僞をかこちて絶えむ心ならねば

皇嘉門院別當

後法性寺入道關白の家の百首の歌に、遇不逢戀

つれなきを恨みし袖もぬれしかど泪の色は變りやはせし

前參議爲秀

關白前左大臣の家に題を探りて歌詠み侍りけるに、變戀

言の葉の變るにつけて憂き人の心の色もまづ知られつゝ

中宮大夫公宗母

文保の百首の歌奉りし時

よしさらば忍ぶる程に絶えもせよ顯はれば憂き中の契は

權大納言義詮

契戀を

世々かけて契りし迄は難くとも命のうちに變らずもがな

式部卿恒明親王

題志らず

逢ふ事は思絶ゆとも同じ世にありと計りを知せてしがな

法眼聖承

同じ世に生けるばかりを契にて又逢ふ迄は思ひ絶えにき

岡屋入道前攝政太政大臣

寄雲戀の心を

逢見ても隔つる中に行く雲のなど絶々にしぐれそめけむ

後鳥羽院下野

寳治二年百首の歌奉りける時、同じ心を

眺めやるそなたの空の雲だにも跡なき果ぞ消えて悲しき

信實朝臣

あだ人の心の花にまがへばや浮きたる雲のあとも定めぬ

法性寺入道前關白太政大臣

題しらず

志ら菊もうつろひにけり憂き人の心ばかりと何思ひけむ

徳大寺前内大臣

百首の歌奉りし時、寄杜戀

神なびの秋ならねども豫てより移ろふ色の見ゆる中かな

待賢門院堀川

心變りたる男の灌佛のつくり物に松に鶴の居たりけるをおこせて、千とせまで契し深き中なれば松の梢に鶴ぞ居にけると云ひて返しを請ひけるに

鶴のゐる松とて何かたのむべき今は梢になみも越えなむ

進子内親王

百首の歌の中に、寄鳰戀

鳰鳥の下の通ひ路絶えざらば浪の浮巣はうかれたりとも

右兵衛督爲遠

頼むぞよ鳰の浮巣の浮きながら下の通ひの絶えぬ計りを

源兼氏朝臣

寄鳥戀

鳰鳥のすむ池水の絶えもせばいかに忍べと通ひそめけむ

清愼公

忍びたる女の、などかは來ぬと聞えたりければ

小田山の苗代水にあらなくに流れそめては絶えむ物かは

讀人志らず

戀の歌の中に

我妹子に又も近江のやす川の安きいも寐ず戀ひ渡るかも

藤原公時朝臣

遂に又いかなる瀬にか絶え果てむ山下水の淺きちぎりは

中納言爲藤

龜山殿の千首の歌に、遇不逢戀

谷川の岩間に洩れし山みづの又は如何なる瀬に淀むらむ

文保三年百首の歌奉りける時

水草ゐし野中の清水今さらにすむともいさやもとの心は

前中納言定家

光明峯寺入道前攝政の家の戀の十首の歌合に、寄鏡戀

行く水の花の鏡の影も憂しあだなる色のうつりやすさは

前大僧正賢俊

百首の歌奉りし時おなじ心を

移り行く心ぞつらきます鏡誰れ故かげとなる身なるらむ

人丸

題志らず

ます鏡絶えにし妹を逢見ずば我が戀やまじ年は經ぬとも

小町

忘草我が身につむとおもひしを人の心に生ふるなりけり

讀人志らず

紀の國のあくらの濱の忘れ貝われは忘れじ年はふるとも

從二位行家

建長元年、五首の歌に、寄海戀

つらかれと駿河の海の濱つゞらくる夜は稀に人ぞなりゆく

二條院讃岐

題志らず

いかなれば泪の雨は隙なきを阿武隈川の瀬だえしぬらむ

法印定爲

初瀬川結ぶ水泡のうき身世に消返りても絶えじとぞ思ふ

中園入道前太政大臣

百首の歌奉りし時、寄杉戀

初瀬川又逢ひ見むと頼めてし志るしやいづら二もとの杉

實方朝臣

戀の歌の中に

我がごとや久米路の橋も中絶えて渡しわぶらむ葛城の神

源和義朝臣

寄橋戀

岩橋の絶えにし中を葛城の神ならぬ身はなほも待つかな

源基幸

題志らず

今はたゞ思ひ絶えにし面かげのはかなく通ふ夢のうき橋

權中納言實直女

寐ぬる夜に逢ふと見つるも夢路にて彌はかなゝる契なり

前大納言爲氏

思ひ出づる心一つのかひもなし同じ世にだに知らぬ契は

月花門院

百首の御歌の中に、戀の心を

さらに又おなじ心にわすれなで何に思はぬ人を戀ふらむ

今出川院近衛

戀の歌の中に

忘れえぬ我が心こそいとはるれはて憂かりける人の契に

衣笠前内大臣

思餘り昔までやはつらからぬ誰が世に人を忘れそめけむ

平親清女

いかにして忘れむと思ふ心にも猶かなはぬは涙なりけり

行蓮法師

又も見ぬ夢路ながらは絶えもせでつらき現に殘る魂の緒

大藏卿行宗

寄夢戀

逢ふと見る夢も空しく覺めぬればつらき現に又なりに鳬

源和氏

思ひ寐にしばし慰む夢をだにゆるさぬ夜半の鐘の音かな

按察使實繼

貞和二年七月七日仙洞にて三首の歌つかうまつりけるに、遇不逢戀と云ふ事を

やがてなど昔語りになりぬらむ見しはまぢかき夢の通路

藤原政元

題志らず

いかにせむ通ふ夢路も頼まれず思寐ならぬ夜はしなければ

惟明親王

正治二年百首の歌奉りけるに

逢ふことは夢になりにし床の上に泪ばかりぞ現なりける

御製

百首の歌めされし次でに、寄枕戀

知らざりきその曉をかぎりとも我にはつげの枕ならねば

式乾門院御匣

戀の歌に

思はじと思ふも物の苦しきをやすくや人の忘れはつらむ

前大納言爲氏

會不逢戀の心を

今は唯思ひたえたるつらさにて契くやしき夕ぐれのそら

前大納言爲世

絶不逢戀

今は早や絶えにしまゝの現にてみる慰めの夢だにもなし

源高秀

忘戀を

はかなくも思ひ出づやと頼むかな我が習はしの心弱さに

永福門院内侍

伏見院に三十首の歌奉りけるに

はかなくて絶えにし中の名殘しも心にとまる果ぞ悲しき

關白前左大臣

百首の歌奉りし時、寄鐘戀

待ちしよに又立ちかへる夕かな入相の鐘に物わすれせで

前關白左大臣近衛

別路に聞きしも今は昔にて厭はぬかねのねをのみぞなく

藤原爲重朝臣

ひとりぬる霜夜の鐘の響きより秋に更け行く契をぞ知る

洞院攝政左大臣

家に百首の歌詠み侍りけるに

なら柴のなれし思や今さらにかり塲の小野のよその秋風

源仲教

題志らず

いつまでか逢ふ事難きあら鷹の手なれぬ中に心おくらむ

前參議定宗

かはり行く人の心の秋かぜにあふたのみだになき契かな

權僧正果守

寄草戀と云ふ事を詠み侍りける

淺茅原なひくもおなじ秋風の移ろふ色に吹きかはるらむ

正三位知家

洞院攝政の家の百首の歌に、逢不會戀を

かよひこし里は伏見の秋かぜに人の心のあれまくも惜し

龜山院御製

おなじ心を

つらきかな待ちしに變る夕暮を身は憂き時と秋風ぞ吹く

閑院

平貞文絶えて後程經て逢ひて露のおきゐてと申しける返事に

白露の起臥誰を戀ひつらむ我はきゝおはす磯のかみにて

前中納言季雄

戀の歌の中に

見し儘に形見なるべき月だにも憂きより外の面影ぞなき

前内大臣

寄月戀

村雲の空行く月もある物を絶え%\にだに見えぬ君かな

榮子内親王

自から思ひも出でば忘れじと契りしまゝの月や見るらむ

權中納言公雄

山階入道前左大臣の家の十首の歌に、寄秋月戀

身をさらぬ面影ばかりさやかにて月のため憂き我が涙哉

壽曉法師

題志らず

いかなれば立ちも離れぬ面影の身にそひ乍ら戀しかる覽

江侍從

身まかりける男の文をとり集めてやりすつとて

見るまゝに落つる泪の玉章はやる方もなく悲しかりけり

貫之

文やる女の、いかなるにかありけむ、あまたゝび返事せざりければ、やりつる文どもをだに返せと云ひやりたりければ、紙やきたる灰をこれなむそれとておこせたれば詠みてやりける

君が爲我こそ灰となり果てめしら玉章はやけてかひなし

式部卿宇合

題志らず

玉藻苅るおきべはゆかし敷妙の枕せし人わすれかねつも

前中納言定家

光明峰寺入道前攝政の家の百首の歌に、名所戀

いかにせむ浦のはつ島はつかなる現の後は夢をだに見ず

藻壁門院但馬

寄舟戀を

蜑小舟我をばよそにみ熊野の浦よりをちに遠ざかりつゝ

前議經宣

寄海戀

足たゆく來るてふ蜑にこととはむ枯れなで殘るみるめ有りやと

源貞世

題志らず

追風にまかぢしげぬき行く舟の早くぞ人は遠ざかりぬる

前大納言爲家

から藍の八しほの衣ふりぬとも染めし心の色はかはらじ

藤原爲重朝臣

寄衣戀を

小夜衣かけはなれてもいとゞ猶ほさぬは袖の泪なりけり

昭覺法師

おなじ心を

つき草に摺れる衣のいろよりも移るはやすき心とぞ見る

己心院前攝政左大臣

戀の歌の中に

萎るればこれをも海士の衣とや契りし中の間遠なるらむ

達智門院

重ねてもなれにし中の小夜衣隔つる物といつなりにけむ

前參議爲實

文保三年百首の歌奉りける時

音をぞなくとほ山鳥のひとり寐に長きへだての中の契は

後鳥羽院御製

十首の歌合に、久戀

よと共に亂れてぞ思ふ山鳥のをろの長尾の長きつらさに