拾遺和歌集 (Shui wakashu [Book 1]) | ||
8. 拾遺和歌集卷第八
雜上
中務卿具平親王
月を見侍りて
貫之
清愼公の家の屏風に
大江爲基
めにおくれて侍りける頃月を見侍りて
藤原高光
法師にならむと思ひ立ちける頃月を見侍りて
藤原仲文
冷泉院の東宮におはしましける時月をまつ心の歌をのこどものよみ侍りけるに
伊勢
參議玄上がめの月のあかき夜かどのまへを渡るとてせをそこいひいれて侍りければ
素性法師
花山にまかりて侍りけるに駒ひきの御馬を遣はしたりければ
貫之
屏風のゑに
みつね
左大將濟時
廉義公後院に住み侍りける時うたよみ侍りける人々めしあつめて水上秋月といふ題をよませ侍りけるに
式部大輔文時
もとすけ
除目のあしたに命婦左近がもとに遣はしける
順
圓融院の御時御屏風の歌奉りけるついでにそへて奉りける
伊勢
權中納言敦忠が西坂本の山庄の瀧の岩にかきつけ侍りける
中務
貫之
題志らず
延喜十三年齋院の御屏風四帖が歌おほせによりて
右衛門督公任
大覺寺に人々あまたまかりたちけるにふるき瀧をよみ侍りける
躬恒
題志らず
齋宮女御
野宮に齋宮の庚申し侍りけるに松風入夜琴といふ題をよみ侍りける
忠見
天暦の御時名ある所を御屏風にかゝせ給ひて人々に歌たてまつらせ給ひけるに高砂を
貫之
延喜の御時御屏風に
同じ御時大井に行幸ありて人々に歌よませ給ひけるに
住吉に國のつかさの臨時祭し侍りける舞人にてかはらけとりてよみ侍りける
伊勢
五條の内侍のかみの賀の屏風に松の海にひたりたる所を
能宣
物へ罷りける人にぬさつかはしけるきぬばこに浮島のかたをし侍りて
よみ人志らず
題志らず
能宣
あひかたらひ侍りける人みちの國へまかりければ
源道濟
河原院の古松をよみ侍りける
よみ人志らず
題志らず
貫之
つかさたまはらで歎き侍りけるころ人のさうしかゝせ侍りける奧にかきつけ侍りける
源爲憲
明石の浦のほとりを舟にのりてまかりけるに
よみ人志らず
題志らず
左大將濟時
山寺にまかりける曉に日ぐらしの鳴き侍りければ
藤原清忠
天暦の御時御屏風のゑに長柄の橋のはし柱のわづかに殘れるかたありけるを
よみ人志らず
大江の爲基が許にうりにまうで來りける鏡の包みたりける紙にかきつけて侍りける
橘の忠基が人のむすめに忍びて物いひ侍りける頃遠き所にまかり侍るとて此女のもとにいひ遣はしける
貫之
題志らず
藤原後生
清愼公月林寺にまかりけるに後れてまうできてよみ侍りける
菅原の大臣かうぶりし侍りける夜はゝのよみ侍りける
人麿
題志らず
もろこしへ遣はしける時によめる
贈太政大臣菅
ながされ侍りける道にてよみ侍りける
浮木といふこゝろを
平定文
つかさとられて侍りける時いもうとの女御の御許に遣はしける
伊勢
中宮の長恨歌の御屏風に
人麿
大津の宮のあれて侍りけるをみて
能宣
初瀬へまうでける道にさほ山のわたりに宿りて侍りけるに千鳥の鳴くを聞きて
物へまかりける人のもとに幣を結び袋に入れて遣はすとて
元輔
初瀬の道にて三輪の山を見侍りて
對馬守小野のあきみちがめ隱岐がくだり侍りける時にとも雅の朝臣のめ肥前がよみて遣はしける
人麿
詠天
藻をよめる
山をよめる
詠葉
貫之
題志らず
人麿
伊勢の御幸にまかりとまりて
御製
天暦十一年九月十五日齋宮下り侍りけるに内よりすゞりてうじてたまはすとて
齋宮女御
圓融院の御時齋宮下り侍りけるに母の前の齋宮もろともに越え侍りて
人麿
あすかの女王ををさむる時よめる
小野宮太政大臣
小一條左大臣まかり隱れて後かの家に侍りける鶴のなき侍りけるをきゝ侍りて
愛宮九條右大臣第五女
左大臣の土御門の左大臣のむこになりて後したうづのかたをとりにおこせて侍りければ
元輔
大貳國章ごくのおびをかり侍りけるを筑紫よりのぼりて返し遣はしたりければ
中務
題志らず
ゆげのよしとき
田舍にてわづらひ侍りけるを京より人のとぶらひにおこせて侍りければ
元輔
神明寺の邊に無常所まうけて侍りけるがいとおもしろく侍りければ
二條右大臣、左近番長佐伯清忠をめして歌よませ侍りけるをのぞむ事侍りけるがかなひ侍らざりける頃にてよみ侍りける
元輔
加階し侍るべかりける年えし侍らで雪のふりけるをみて
源景明
司申に給はらざりける頃人のとぶらひおこせたりける返ごとに
よみ人志らず
題志らず
男侍りける女をせちにけさうし侍りて男のいひ遣はしける
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