University of Virginia Library

Search this document 

 1. 
 2. 
 3. 
 4. 
 5. 
 6. 
expand section7. 
 8. 
collapse section9. 
續千載和歌集卷第九 神祇歌
 863. 
 864. 
 865. 
 866. 
 867. 
 868. 
 869. 
 870. 
 871. 
 872. 
 873. 
 874. 
 875. 
 876. 
 877. 
 878. 
 879. 
 880. 
 881. 
 882. 
 883. 
 884. 
 885. 
 886. 
 887. 
 888. 
 889. 
 890. 
 891. 
 892. 
 893. 
 894. 
 895. 
 896. 
 897. 
 898. 
 899. 
 900. 
 901. 
 902. 
 903. 
 904. 
 905. 
 906. 
 907. 
 908. 
 909. 
 910. 
 911. 
 912. 
 913. 
 914. 
 915. 
 916. 
 917. 
 918. 
 919. 
 920. 
 921. 
 922. 
 923. 
 924. 
 925. 
 926. 
 927. 
 928. 
 10. 
 11. 
 12. 
 13. 
 14. 
 15. 
 16. 
 17. 
 18. 
 19. 
 20. 

9. 續千載和歌集卷第九
神祇歌

後嵯峨院御製

建長五年、住江に御幸侍りて、行旅述懷と云ふ事を講ぜられ侍りけるに詠ませ給ひける

跡垂れし神世に植ゑば住吉の松も千年を過ぎにけらしも

太宰權帥爲經

幾千世と又行くすゑを契るらむ今日待ちえたる住吉の松

前右兵衞督爲教

住江や今日の御幸を待つとてぞ神も千年の種は蒔きけむ

山本入道前太政大臣

弘安八年住江に御幸侍りて同じ心を講ぜられ侍りけるに

住吉の松の千年もみゆきする今日の爲とや神も植ゑけむ

常磐井入道前太政大臣

住吉の神主國平、大宮院に御卷數、奉るとて松の枝に付けり侍りけるを見て女房に代りて

千年とも祈るしるしの言の葉をむすびや付くる住吉の松

權中納言爲藤

住吉の社を繪にあらはして神祇祝と云へる心を人々詠み侍りける時

住吉の松も花咲く御代に逢ひてとかへりまもれ敷島の道

津守經國

本社にさぶらひて雨を祈るとて詠める

さらぬだに淺澤小野の忘水忘れ果てゝもいくか經ぬらむ

皇太后宮大夫俊成

江上月を

思ひ出でよ神代も見きや天の原空もひとつに住の江の月

讀人志らず

題志らず

宮居せし神代思へば片そぎの行合ひの霜は年舊りにけり

津守國道

契有りてつかふる神の御しめ繩猶代々かけて身を頼む哉

前大納言爲家

玉津島に詣でゝ詠み侍りける

みがき置くあとを思はゞ玉津島今もあつむる光をもませ

前大納言爲氏

源兼氏朝臣すゝめ侍りける玉津島の社の十五首の歌に

敷島や大和ことの葉我が世まで享けゝる神の末も頼もし

前關白太政大臣家讃岐

題志らず

和歌の浦や藻に埋もれし玉も今光を添へて神ぞ見るらし

津守國助

和歌の浦に立てし誓の宮柱いく世もまもれしきしまの道

入道前太政大臣の家の十五首の歌に、述懷

一筋に憂きをもいかに歎かまし神に任せぬ我身なりせば

前大納言爲氏

春日の社に奉りける歌の中に

埋れ木の身は徒に舊りぬとも神だに春のめぐみあらはせ

前僧正實聰

前關白太政大臣、春日の社に詣で侍りけるに、山階寺の別當にて代々の跡に變らず執り行ひて思ひつゞけ侍りける

三笠山老木も今は花咲きて代々にかはらず春に逢ひぬる

前參議雅孝

題志らず

三笠山春のめぐみのあまねくば藤の末葉も猶やさかえむ

一條内大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、山

照せなほ山はみかさの朝日影あふぐ心もくもりやはする

前中納言定家

西行法師、人々すゝめて百首の歌詠ませ侍りけるに

なか/\に指しても言はじ三笠山思ふ心は神ぞ知るらむ

常磐井入道前太政大臣

水無月の頃春日の社に籠りて法樂し侍りける歌の中に

春日山深くたのみし夏草の茂きめぐみぞ身にあまりぬる

後二條院御製

神祇の心を詠ませ給ひける

人よりは哀れとおもへ春日山しかもたのみをかくる年月

前中納言定資

のぼるべき跡をば捨てし春日山今一さかは神にまかせむ

中臣祐茂

題志らず

かすが山あまつ兒屋根の眞澄鏡映りし影の月を見るかな

前僧正實聰

榊葉に志ら木綿かけてつもりけり三笠の杜の今朝の初雪

後京極攝政太政大臣

頼もしな佐保の河瀬の神さびて汀の千鳥八千代とぞ鳴く

中臣祐春

若宮の神主になりて後詠める

世々かけて神に仕ふる名取川かゝる瀬迄と身をぞ祈りし

狛秀房

題志らず

二葉より神をぞ頼むをしほ山我もあひおひの松の行く末

權大僧都公順

わづらふ事ありて久しく熊野に詣で侍らざりける頃詠み侍りける

思ひやる袖も濡れけり岩田河わたりなれにし瀬々の白浪

前大僧正禅助

題志らず

今もなほ哀れをかけよみくま野や昔のあとは神も忘れじ

法皇御製

稻荷山祈る驗のかひもあらば杉の葉簪しいつか逢ひ見む

權大納言經繼

二品法親王の家の五十首の歌に、杉雪

冬されば三輪の杉むら神さびて梢にかゝる雪のしら木綿

入道前太政大臣

弘安の百首の歌奉りける時

雪降れば三輪のすぎ村木綿懸けて冬こそ神の印見えけれ

從二位家隆

光明峰寺入道前攝政内大臣に侍りける時、家に百首の歌詠み侍りけるに

千早ぶる神の御室の眞澄鏡懸けていく世の影を變ふらむ

法性寺入道前關白太政大臣

題志らず

神がきや御室のやまの郭公ときはかきはの聲と聞かばや

祐子内親王家紀伊

御あれの日音づれて侍りける人の返事に

もろかづらかた/\懸くる心をば哀とも見し賀茂の瑞垣

從三位氏久

虫屋を作りて前大納言資季の許へ送り遣すとて

君のみや千とせも飽かず聞き舊りむ我が神山の松虫の聲

前大納言資季

返し

幾千世か鳴きて經ぬらむ千はやぶるその神山の松虫の聲

權僧正桓守

神祇を

曇なき君が御世にぞ千はやぶる神も日吉の影を添ふらむ

前大僧正仁澄

君守る神も日吉の影添へてくもらぬ御世をさぞ照すらむ

前大僧正慈鎭

日吉の社に詠みて奉りける百首の歌に

さりともと照す日吉を頼むかな曇らずと思ふ心ばかりに

法眼兼譽

神恩の深き事を思ひて詠める

淺からぬ惠に知りぬのちの世の闇も日吉の照すべしとは

天台座主慈勝

拜堂の後、社頭にて詠み侍りける

忘れじなおもひしまゝに見る月の契ありける七の神がき

前大納言爲世

百首の歌奉りし時

道まもる七の社のめぐみこそ我が七十ぢの身に餘りけれ

祝部行氏

題志らず

いにしへに神のみ舟を引きかけし梢や今のからさきの松

法眼慶宗

みな人のたのみを懸けて神垣に祈ればなびく松の白木綿

後近衛關白前右大臣

大方の世をしづかにと祈るこそ神の惠にまづかなふらめ

前關白左大臣押小路

百首の歌奉りし時

天地の開けそめける神代より絶えぬ日つぎの末ぞ久しき

法皇御製

寄國祝と云へる心を詠ませ給うける

かたぶかぬ速日の峰に天降るあめのみまごの國ぞ我が國

百首の歌めされしついでに

我が國に内外の宮とあらはれて傳へし法を今まもるらむ

前右大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、河

濁なきかみの心をあらはして御裳濯河やながれそめけむ

伏見院御製

河月と云へる心を

五十鈴川絶えぬ流れの底きよみ神代かはらず澄める月影

惠助法親王

澄む月の影を映して五十鈴川濁らぬ世にもかへる浪かな

法印最信

太神宮に詣でゝ詠み侍りける

五十鈴川とほきむかしの神代まで心にうかぶ夜半の月影

度曾行忠

題志らず

すべらぎの天のみおやのみことのり傳へて祈る豐の宮人

荒木田氏忠

神路山かげのこ草は萠えにけり末葉も洩れぬはるの惠に

法眼源承

伊勢の國に知る所侍りけるを人に妨げらるゝ由うたへ申し侍りけるが、未だ事行かず侍りけるに、民部卿資宣の許へ申し遣しける

伊勢の海や今も天照る神風に道ある浪のよるべをぞ待つ

大江貞重

題志らず

祈りこし志るしあらせよ石清水神も我身を思ひ捨てずば

前大納言師重

石清水臨時時祭を

九重の今日のかざしの櫻ばな神もむかしの春はわすれじ

後二條院御製

神祇の心を

世の爲もあふぐとを知れ男山むかしは神の國ならずやは

法皇御製

百首の歌めされし次でに

世を思ふ我がすゑまもれ石清水きよき心のながれ久しく

前大納言爲世

嘉元元年伏見院の三十首の歌奉りし時、夜神樂

更けぬるか眞弓つき弓押し返し謠ふ神樂のもとすゑの聲

前中納言定家

文治六年女御入内の屏風に、内侍所の御神樂の儀式のある所

空冴えてまだ霜ふかき明けがたにあか星うたふ雲の上人

前中納言匡房

天仁元年鳥羽院の御時大甞曾の悠紀方の神樂の歌、音高山を詠める

よばふなるおとたか山の榊葉の色にかはらぬ君が御世哉

左京大夫顯輔

康治元年近衞院の御時大甞曾の悠紀方の神樂の歌、三上山を詠める

千早振三上の山の榊葉を香をかぐはしみとめてこそ取れ

前大納言俊光

延慶二年新院の御時、大甞曾の悠紀方の神樂の歌、石戸山を詠める

久方の天の岩戸の山の端にとこやみ晴れて出づる月かな