University of Virginia Library

Search this document 

 1. 
 2. 
 3. 
 4. 
 5. 
 6. 
expand section7. 
 8. 
 9. 
 10. 
 11. 
 12. 
collapse section13. 
續千載和歌集卷第十三 戀歌三
 1287. 
 1288. 
 1289. 
 1290. 
 1291. 
 1292. 
 1293. 
 1294. 
 1295. 
 1296. 
 1297. 
 1298. 
 1299. 
 1300. 
 1301. 
 1302. 
 1303. 
 1304. 
 1305. 
 1306. 
 1307. 
 1308. 
 1309. 
 1310. 
 1311. 
 1312. 
 1313. 
 1314. 
 1315. 
 1316. 
 1317. 
 1318. 
 1319. 
 1320. 
 1321. 
 1322. 
 1323. 
 1324. 
 1325. 
 1326. 
 1327. 
 1328. 
 1329. 
 1330. 
 1331. 
 1332. 
 1333. 
 1334. 
 1335. 
 1336. 
 1337. 
 1338. 
 1339. 
 1340. 
 1341. 
 1342. 
 1343. 
 1344. 
 1345. 
 1346. 
 1347. 
 1348. 
 1349. 
 1350. 
 1351. 
 1352. 
 1353. 
 1354. 
 1355. 
 1356. 
 1357. 
 1358. 
 1359. 
 1360. 
 1361. 
 1362. 
 1363. 
 1364. 
 1365. 
 1366. 
 1367. 
 1368. 
 1369. 
 1370. 
 1371. 
 1372. 
 1373. 
 1374. 
 1375. 
 1376. 
 1377. 
 1378. 
 1379. 
 1380. 
 1381. 
 1382. 
 1383. 
 1384. 
 1385. 
 1386. 
 1387. 
 1388. 
 1389. 
 1390. 
 1391. 
 1392. 
 1393. 
 1394. 
 1395. 
 1396. 
 1397. 
 1398. 
 1399. 
 1400. 
 1401. 
 1402. 
 1403. 
 1404. 
 1405. 
 1406. 
 1407. 
 1408. 
 1409. 
 1410. 
 1411. 
 1412. 
 1413. 
 1414. 
 1415. 
 1416. 
 1417. 
 1418. 
 1419. 
 1420. 
 1421. 
 1422. 
 1423. 
 14. 
 15. 
 16. 
 17. 
 18. 
 19. 
 20. 

13. 續千載和歌集卷第十三
戀歌三

順徳院御製

題志らず

僞のなき世なりともいかゞせむ契らでとはぬ夕暮のそら

龜山院御製

さりともと猶頼まるゝ夕暮を契りしまゝにとふ人もがな

前大納言爲世

嘉元元年卅首の歌奉りし時、待戀

たのみける心と人のしるばかり僞をだに待つときかれむ

太政大臣

戀の歌の中に

まこともやその兼言に混るらむ僞ばかりある世ならねば

入道前太政大臣

百首の歌奉りし時

人心昨日にかはるいつはりにしらずや末の世々のかね言

前大納言師重

題志らず

契れども猶僞とうたがひしこゝろの末ぞまことなりける

權少僧都能信

頼めばぞ變るもつらきかねてよりなど僞と思はざりけむ

法印行源

僞と思ひながらも言の葉にかゝるは露のいのちなりけり

平貞時朝臣

契りしもなほ頼まれず僞と思ひ初めにしこゝろならひに

平宣時朝臣

待ちよわる心やあると秋風の身にさむからぬ夕暮もがな

權律師圓世

我がための音づれとだに思はゞや人待つよひの荻の上風

入道前太政大臣

弘安の百首の歌奉りける時

色にいでゝいはぬ計りぞ小鹽山まつとは風の便にもきけ

前大納言爲世

たのめ置くたが誠より夕暮のまたるゝ物に思ひそめけむ

法印宗圓

前大納言爲世よませ侍りし春日の社の卅首の歌の中に

さのみやはわが僞に爲果てむつらくばまたぬ心ともがな

右大辨隆長

題志らず

頼めてもこぬ人を待つ夕ぐれに心をつくすいりあひの鐘

前大納言經長女

僞と思ひもはてばいかゞせむまつをたのみの夕ぐれの空

法眼源承

我が戀のけぶりとだにも志らせばやこぬ夕暮の空の浮雲

津守國冬

嘉元の百首の歌奉りし時、待戀

此暮のつらき報もみせてましまたるゝ程の我身なりせば

爲道朝臣

永仁二年八月十五夜十首の歌講ぜられし時、月前契戀といへる心を

いかにせむ月の知べは頼めども契りし夜はと思出でずば

津守國助

永仁元年八月十五夜龜山院に十首の歌めされける時、秋戀

僞のまことにならむ夕べまであはれ幾夜の月かみるべき

宰相典侍

題志らず

知せばや頼むる宵のまつの戸に更け行く月の心づくしを

大江政國女

今こむと契りし程も更けにけり今宵もさてや山の端の月

三善春衡朝臣

待ちかねて泪かわかぬ我が袖に宿るもつらくふくる月哉

前中納言資名

とはれつるいつの習のあり顔に今宵ふけぬと又歎くらむ

贈從三位爲子

後二條院位におましましける時人々に召されし卅首の歌の中に待つ夜ふくる戀といふことを

自ら思ひも出でばとふばかり更けぬる夜はと爭で知せむ

前太宰大貳俊兼

戀の歌の中に

暫しだに更けぬになして慰めむまつ夜の鐘の聲な聞かせそ

藤原景綱

つく%\と獨詠めて更けにけり槇の戸さゝぬ十六夜の月

平宣時朝臣

待侘ぶる心盡しの程をだにみせばや夜はの月ぞふけゆく

前大僧正實超

味氣なく待つ宵過ぐる月影をふけぬになして猶頼むかな

前大僧正仁澄

月のみぞおなじ枕にやどりける今夜も人は空だのめして

後二條院御製

頼めずばねなまし月とながめてもうき僞にふくる空かな

伏見院御製

せめて唯僞とだに思はゞや頼めてふくるよはのつらさを

今上御製

君まつといく夜の霜をかさぬらむ閨へもいらぬ同じ袂に

前大納言爲世

嘉元の百首の歌奉りし時、不逢戀

算へてもいつ迄獨またれけむ百夜も過ぬ志ぢのはしがき

修理大夫隆康

題志らず

君こずば誰とかさねむ唐衣つまふく風に夜はふけにけり

中納言家持

山吹を折て人のおこせたりければ

逢ふ事を今夜/\とたのめずば中々春のゆめはみてまし

右近大將道綱母

終夜人を待ちわびて

志らせばやつがはぬ春の浮蓴いかなる瀬々に亂れゆく覽

中宮

題志らず

頼めつゝ待つ夜空しきうたゝねを志らでや鳥の驚かす覽

入道前太政大臣

百首の歌奉りし時

今宵こそつらさ乍らに明けぬ共待ち鳬とだに爭で知せむ

秋田もる賤が假ほの稻むしろいなてふ夜はぞ床は露けき

紀淑氏朝臣

題志らず

思ひかねゆきてはかへる道芝の露をかさぬる袖の上かな

土御門院小宰相

寳治の百首の歌奉りける時、寄雨戀

思ひきや泪に志ぼる袖に猶身を志る雨をそへむものとは

後二條院御製

戀の歌とてよませ給うける

限あれば今ぞ重ぬるせき返しなみだに朽ちし夜半の衣手

昭訓門院權大納言

斯るべき契も志らず昨日までよそにも人を思ひけるかな

藤原泰宗

諸共にうちとけられぬ新枕かはせる夜半も苦しかりけり

讀人志らず

忘るなよ結ぶ一夜のにひまくら夢ばかりなる契なりとも

爲道朝臣

忍逢戀といふ事をよみ侍りける

今夜さへ同じ人目をいとふ哉あふにまぎるゝ泪ならねば

入道前太政大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、忍逢戀

形見とも後にこそみめ忍びつゝ逢ふ夜の月に雲隱れせよ

前大納言爲世

初逢戀

つれなきにすてし命も惜まれてあふに變るは心なりけり

光俊朝臣

弘長二年龜山殿の十首の歌に、稀逢戀

此儘にうき身にさめぬ夢ならば現にかへて又やなげかむ

大江頼重

戀の歌の中に

いかにせむ現も夢とたどられて逢ふにも迷ふ我が心かな

法印良兼

假初の今夜ばかりの夢ならで又みるまでの契りともがな

前大僧正實超

人はよもさむる名殘も惜しからじ心通はぬ夢のちぎりは

權大納言兼季

忍びつゝたゞ時のまにあふ程の心まよひぞ夢にかはらぬ

源光忠朝臣

ふけてとふ只等閑のつらさこそ來ぬには増る恨なりけれ

左京大夫實任

今夜だに思ひ志らるゝ身の程を今より後といかゞ契らむ

三善康衡朝臣

慰むるそのかねごともよしや今忍ばれぬべき別ならねば

光俊朝臣

衣々にならばいかにと思ふより夜深く落つる我が泪かな

源具行朝臣

題を探りて詩歌を合せられ侍りし時、別戀を

鳥の音の憂にもせめてなさじとやあくるをまたぬ別なる覽

從三位親子

題志らず

中々にむなしきよりもうき物をふけて逢ふ夜の鳥の聲々

民部卿實教

さらでだに別をいそぐうき人の心にかなふ鳥のこゑかな

前大納言家雅

うき人の心にいそぐ別路をよそなる鳥の音にかこつかな

法印公惠

恨みじよ明けぬと鳥はつげず共さて止るべき別ならねば

前僧正道性

二品法親王の家の五十首の歌に、別戀

慕ひわび泣くはならひの別路に何とか鳥の音をも喞たむ

少將内侍

百首の歌奉りし時

あけぬとも心あるべき別路をなど鳥の音に喞ち初めけむ

今上御製

別戀を

人はなほながらへぬべき心かと後をちぎるもうき別かな

遊義門院

行くすゑの深き契もよしやたゞかゝる別の今なくもがな

春宮權大夫有忠

あやにくに偖もや人の休らふと惜までみばやつらき別を

寂惠法師

暫しとも人はとゞめぬ別路の我のみつらきあかつきの空

祝部成久

暫しとて猶いかばかり志たはましこれを限の別なりせば

藤原秀長

つらしとや思ひはてまし又こむといひて歸らぬ別なりせば

藤原基祐

後とだにたのめも置かば別路の今のつらさは慰みなまし

讀人志らず

別路の後をばいかに契るともなぐさみぬべきわが心かは

三善貞康

あけぬとも暫しは猶や志たはまし忍ぶる中の別ならずば

藤原宗秀

くもれたゞ後に忍ばむかげもうしわが歸るさの有明の月

藤原宗行

月だにも面影とめよきぬ%\の袖の別を志たふなみだに

大藏卿隆博

弘安の百首の歌奉りける時

別路のうきにたへずばいきて世に又有明の月や見ざらむ

前大納言通顯

題志らず

うき物と又いとふともわかれ路に二たび見ばや有明の月

廣義門院

有明の月さへうしやいかなれば別かなしき空に見ゆらむ

法皇御製

きぬ%\の袖の泪をかたみにて面影とむるありあけの月

題をさぐりて詩歌を合せられ侍りし時、別戀の心をよませ給うける

見るまゝにこれやかぎりと悲しきは別るゝ袖の有明の月

今上御製

曉逢戀といふ事を

こひ/\てあふ夜もやがて別路の泪にくるゝ有明のつき

前關白太政大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、曉別戀

おきわかれ泪くもらぬ月ならば袖に名殘の影はみてまし

前關白左大臣押小路

百首の歌奉りし時

東雲の峰にも雲は別れけりわがきぬ%\の名殘のみかは

後二條院御製

正安四年六月五首の歌合に忍別戀といへる心をよませ給ひける

關守はあかつきばかりうちも寐よ我が通ひ路も忍ぶ別に

内大臣

百首の歌奉りし時

心にもあらでぞいそぐ關守のうちぬる程と思ふわかれは

前左兵衞督教定

戀の歌の中に

心からいくたび袖にかけつらむこりぬ別のしのゝめの露

後嵯峨院御製

寳治の百首の歌めしけるついでに、寄原戀

この寐ぬる朝の原のつゆけさはおき別れつる泪なりけり

左近大將朝光

女の許よりかへりて遣しける

音にのみ聞きしは偖も慰みきなどか今朝しも袖の露けき

入道前太政大臣

百首の歌奉りし時

なみだかと見るにも悲しわぎも子が歸る朝げの道芝の露

賀茂久世

題志らず

とけてぬる花田の帶の一筋に歸る色こそ今朝はつらけれ

參議定經

女のもとにまかりてあしたに遣しける

おき別れ歸る袂のいつのまに今朝さへ頓て露けかるらむ

讀人志らず

返し

思ひやれあだなる夢に結ぼゝれさむる方なき今朝の心を

遊義門院

後朝の戀の心を

鳥の音におき別れつるきぬ%\の泪乾かぬ今朝の床かな

永福門院

別れてもまだ夜は深き鳥の音を獨なごりの床にきくかな

二品法親王覺助

百首の歌奉りし時

今はとて己がきぬ%\立別れ鳥の音おくる志のゝめの道

大藏卿隆博

朝戀を

忘ればやはかなき夢の名殘ゆゑ今朝の枕にのこる面かげ

祭主輔親

人に物いひて後に遣はしける

今日だにも慰めがたき心にはいかですぐしゝ昔なりけむ

素性法師

題志らず

いたづらに立歸りにし志ら波の名殘に袖のひる時ぞなき

光明峰寺入道前攝政左大臣

家に百首の歌よみ侍りける時、戀を

須磨のあまの鹽燒衣おのれのみなれてもかゝる袖の浪哉

前大納言俊光女

戀の歌の中に

いかにせむうき中河の淺き瀬に結ぶ契のさても絶えなば

皇太后宮大夫俊成女

名所の百首の歌奉りける時

思のみます田の池のうきぬなは絶えぬ契ぞ苦しかりける

和泉式部

近き所にかたらふ人ありと聞きける人に遣はしける

天の河同じ渡りにありながら今日も雲居のよそに聞く哉

源兼氏朝臣

稀戀の心を

よしや又さても絶えずば銀河同じ逢瀬にたゝへこそせめ

後近衛關白前右大臣

弘安七年九月九日三首の歌講ぜられける時、寄菊戀といへる心を

うつろはむ人の心もしら菊のかはらぬ色となに頼むらむ

前大納言爲世

頼まじなうつろひぬべき白菊の霜待つほどの契ばかりは

津守國道

題志らず

我にのみ移りはつとも月草のうす花ごゝろいかゞ頼まむ

法印長舜

あだにのみ移ろふ色のつらければ人の心の花はたのまじ

權中納言公雄

はながつみかつ見ても猶頼まれず淺香の沼のあさき心は

前參議能清

弘安の百首の歌奉りける時

ながらへば我が心だにしらぬ身の人の契をえやは頼まむ

藤原宗秀

人の鏡のうらにかきつけゝる

面かげを思ひも出づなます鏡またこと人にこゝろ移らば

藤原利行

題志らず

ひく方はあまたありとも梓弓もとの心のかはらずもがな

藤原宗泰

斯れとは祈らざりしをみしめ繩あらぬ心の誰にひくらむ

讀人志らず

業平朝臣伊勢へ下り侍りける時齋宮に侍りける女房の許より

千早ぶる神の忌垣も越えぬべし大宮人の見まくほしさに

業平朝臣

返し

戀しくばきても見よかし千早振神の諌むる道ならなくに

中納言兼輔

月へだゝりにけりと女のいひおこせたりければ

浮雲に身をしなさねば久方の月へだつとも思はざりけり

土御門院御製

旅戀をよませ給うける

別れてもいく有明をしのぶらむ契りて出でしふる郷の月

左大臣

百首の歌奉りし時

月にしもとふべき物と思はぬをなど見るからに泪そふ覽

今上御製

正和二年九月盡日十首の歌めされしついでに、希待戀

今更に思ひいづるもたのまねば待つともいはじ夕暮の空

後鳥羽院御製

戀の心をよませ給うける

ともねせぬ鴨の上毛の夜の霜おき明しつる袖を見せばや

皇太后宮大夫俊成

百首の歌よみ侍りけるに

難波女の芦のしのやのしの薄一夜のふしも忘れやはする

中臣祐春

二夜隔たる戀といふ事をよめる

昨日けふ芦間の小舟さはりきてあすを逢ふ夜と又契る哉

藤原行朝

題志らず

衣々の別れだにうき鳥の音をこぬ夜の床に聞きや明さむ

法印圓勇

諸共に見しを泪のはれまにてこぬ夜はくもる袖の月かげ

丹波忠守朝臣

見しまゝの袖に泪は晴れやらでこぬ夜もつらき月の影哉

道義法師

おも影も泪にはてはくもりけり月さへ人のちぎり忘れて

藤原基有

ほしわぶるわが袖かたれ夜半の月人は泪の外に見るとも

權中納言爲藤

百首の歌奉りし時

面かげぞいつしか變るます鏡みざりしよりもくもる泪に

權中納言親房

春宮にて逢後増戀といへる事を人々よみ侍りけるに

いとゞ猶逢見て後もかゝれとは誰がならはしの袖の涙ぞ

前大納言爲氏

寳治元年十首の歌合に、遇不逢戀

在しよを戀ふる現はかひなきに夢になさばや又も見ゆやと

前大納言爲世

おなじ心を

歎けども覺めての後にかひなきはまだ見ぬ夢の契なりけり

藤原基任

旅戀を

別れては忘れやすらむ故郷の人のこゝろをみる夢もがな

從三位爲信

嘉元の百首の歌奉りし時、會不逢戀

人心いかなるひまにかよひけむ又はゆるさぬ夜半の關守

權中納言公雄

人はよも人に語らじありし夜の夢を夢とも思ひ出でずば

前攝政左大臣

つらかりし其難面さの儘ならば中々かゝるものは思はじ

前大納言忠良

住吉の社によみて奉りける百首の歌の中に

見るもうしおきて別れし有明の空にかはらで殘る月かげ

和泉式部

長月の有明の頃よみ侍りける

よそにてもおなじ心に有明の月は見るやと誰にとはまし