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續千載和歌集卷第十四 戀歌四
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14. 續千載和歌集卷第十四
戀歌四

坂上是則

題志らず

秋山に朝立つ霧のみねこめて晴れずも物を思ふころかな

九條右大臣

物申しける人に又かよふ人ありと聞きて遣しける

秋萩の下に通ひし鹿の音も今はかひなくなりやしぬらむ

前中納言定家

建仁元年五十首の歌奉りける時

假にだに訪はれぬ里の秋風に我身うづらの床は荒れにき

後深草院辨内侍

戀の歌の中に

もの思ふ泪をそへておく露にわが身の秋とぬるゝ袖かな

前大納言爲氏

さぞとだに思ひも出でじ秋の田の假にも斯と驚かさずば

二條院讃岐

千五百番歌合に

石の上ふるのわさ田に綱はへて引く人あらば物は思はじ

光明峰寺入道前攝政左大臣

會不逢戀といふことを

頼め置きし言の葉さへに霜枯れて我身むなしき秋の夕暮

皇太后宮大夫俊成女

洞院攝政の家の百首の歌に、同じ心を

枯れはつる契もつらし跡絶えてふる野の道の霜の志た草

二品法親王覺助

家に五十首の歌よみ侍りし時、絶戀

分馴れし小野の淺茅生霜枯れて通ひし道のいつ絶にけむ

前中納言公脩

題志らず

色かはる人のこゝろの淺茅原いつより秋の霜は置くらむ

九條左大臣女

尋ねても訪はるゝほどの跡もなし人はかれにし庭の蓬生

皇后宮内侍

變らずば尋ねて見ばや三輪の山ありし梢の杉の志るしを

前大僧正道玄

嘉元の百首の歌奉りし時、忘戀

消えねたゞ忘れ形見の言の葉もあるかなきかの袖の白露

權僧正慈仙

題志らず

濡れてほすひまこそなけれ戀衣身を志る雨の晴れぬ思に

大江廣房

言の葉の移ろふ秋の時雨には我が身一つの袖ぞ濡れぬる

源親教朝臣

つきぐさの花色ごろもたが袖の泪よりまづ移りそめけむ

左衛門督公敏

うつり行く人の心の秋のいろに昔ながらの言の葉ぞなき

左大臣

正安三年九月盡日伏見殿に御幸ありて人々題をさぐりて五十首の歌よみ侍りける時、絶戀

身の秋ぞ喞つ方なき言の葉に露もかゝらずなりぬと思へば

讀人志らず

題志らず

露ばかりかけし情もとゞまらずかれゆく中の道の志ば草

本院侍從に遣しける

朝毎にほす方もなしから衣夜な/\袖のそぼちまされば

本院侍從

返し

ほす方もありとこそ聞けから衣うすくなり行く人の袂は

藤原雅朝朝臣

戀の歌の中に

立ち歸り幾たび袖をぬらすらむよそになるみの沖つ白波

右衞門督教定

逢ふ事も今はなぐさの濱風に猶なみさわぐ袖を見せばや

平時元

知られじな海士の藻汐木こりずまに猶下燃の絶えぬ思は

前權僧正雲雅

人ごゝろあさかの浦の澪標深き志るしもかひやなからむ

正三位經朝

逢ふ事も今はかたみのうら波に遠ざかりゆく海士の釣舟

從三位宣子

いかにせむうき中河の水を淺みせだえがちなる心細さを

觀意法師

流れてと契りし末のいかなればありしにかはる中河の水

唯教法師

逢ひみても人の心のかはるせに又そで濡らす中川のみづ

大江貞重

とにかくに變るぞやすき飛鳥川ふち瀬や人の心なるらむ

前權僧正定顯

夏虫のかげ見し澤の忘れ水思ひ出でゝも身はこがれつゝ

平重時朝臣

水鳥にあらぬ泪の浮寐して濡れつゝ今はなかぬ日もなし

參議雅經

深き江のうきに萎るゝ芦のねのよゝの契も朽や志ぬらむ

平宗宣朝臣

忘れ草心なるべき種だにも我が身になどか任せざるらむ

丹波經長朝臣

いかにして思絶えなむ忘れゆく人の心を我が身ともがな

前關白太政大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、忘戀

斯て唯とはぬばかりはつらくとも心よりだに忘果てずば

源宗氏

題志らず

忘らるゝ身をうき物と思ひ志る心一つのなどなかるらむ

前參議雅孝

百首の歌奉りし時

自から又もやとふと待たれしはつらさになれぬ心なりけり

前大納言通顯

戀の歌の中に

悔しくぞ契り置きける存へてかはる心のはてをみるにも

讀人志らず

おもひやる心ばかりの通路はよひ/\ごとの關守もなし

太宰權帥爲經

せく袖のいろさへかはる泪かな見しにもあらぬ人の契に

女三宮治部卿

深くのみ思ひそめにしまゝならで心の色のなど變るらむ

津守國助

いづかたに又秋風のかはるらむ靡きそめにし小野の篠原

花山院内大臣

寳治の百首の歌奉りける時、寄風戀

言の葉は便あらばと思ひしをことかたにのみ秋風ぞ吹く

前參議實俊

題志らず

つれなくも猶したはるゝ心かな思ひ絶えねとつらき契を

權中納言實前

逢見しも人のこゝろの外なれや又つれなさにかへる契は

中納言定頼

久しく音づれもせで人のもとに申し遣しける

池水のいひ絶えぬとや思ふらむふかき心はいつか變らむ

源邦長朝臣

題志らず

山の井の淺きながらも頼みしは影見しまでの契なりけり

爲道朝臣

なにゆゑに袖ぬらすらむ人心あさ澤みづの思ひ絶えなで

安嘉門院甲斐

ふかゝらぬ人の契にいにしへの野中の水は結び絶えにき

前大納言爲世

二品法親王の家の五十首の歌に、絶戀

遂にきて絶えける物を水無瀬川ありて行く水今は頼まじ

權中納言爲藤

三十首の歌奉りし時

河舟のみをさかのぼる綱手繩たえにし後も身は焦れつゝ

冷泉太政大臣

寳治の百首の歌奉りける時、寄橋戀

かづらきや久米の岩はし中たえて通はぬ人の契をぞ知る

源兼氏朝臣

戀の歌の中に

戀ひ渡る心ばかりや絶えざらむ久米路の橋のよるの契は

式部卿久明親王

逢ふ事はをだえの橋の橋柱又立ちかへり戀ひわたるかな

權大納言冬教

思はずよそをだに後の形見にてうかりし節も忍ばれむとは

禪心法師

諸共に思ふが中のいかならむつらきだに社戀しかりけれ

源義行

斯ばかり思ふといふを頼まぬは誰につらさを傚初めけむ

津守國助

永仁二年龜山院に五十首の歌めされける時

命をばあふにかへてし中なればある物とだに人は思はじ

前内大臣

題志らず

はかなくぞ此世ばかりを契りける又逢ふ迄もしらぬ命に

永福門院

同じ世を頼む方にはあらね共なれし名殘ぞ忘れかねぬる

權大納言兼季

戀ひ死なむ後を頼まむこの世こそ短かりける契なりとも

前關白太政大臣

嘉元の内裏の二十首の歌に

絶えなばと誓ひし末の命さへわがいつはりに存へにけり

平貞俊

戀の歌の中に

せめてなどその曉を限ぞといひても人のわかれざりけむ

平宣時朝臣

今は早やよそにのみ聞く曉も同じ音にこそ鳥はなくなれ

前内大臣

諸共にいとひなれにし鳥の音を獨聞くにも袖はぬれけり

從二位行家

寳治の百首の歌奉りける時、寄鏡戀

山鳥のはつ尾の鏡それならば隔つる人のかげも見てまし

二條院讃岐

題志らず

今更にいかゞはすべき新枕としの三年を待ちわびぬとも

右近大臣道綱母

打ちはらふ塵のみ積る狹莚も歎く數にはしかじとぞ思ふ

平泰氏

今ははや待ちならひこし夕暮を昔になして濡るゝ袖かな

津守棟國

今さらにくべき宵とも頼まれず契絶えにしさゝがにの糸

藤原貞忠

とはずとていつまで人を恨けむ思絶えては言の葉もなし

藤原宗行

夏引の手引の糸のわくらばに訪はれし中ぞ今は絶えぬる

爲道朝臣

こぬまでも心ひとつを慰めて頼みし程のいつはりもなし

後二條院御製

はかなくぞ一夜二夜の隔てをも身にならはずと昔恨みし

中宮

自から思ひ出づやと頼むかなつらき心のはては見しかど

萬秋門院

嘉元の百首の歌に、逢不會戀

いつなれし面影ぞとも喞たれず唯身にそふを慰めにして

僧正覺圓

題志らず

めぐり逢ふ月は變らぬ面影をいかなる雲の立ち隔てけむ

前大納言爲氏

弘安の百首の歌奉りける時

面影の忘れぬばかり形見にて待ちしに似たる山の端の月

大藏卿隆博

戀の歌の中に

もろ共に待出でし夜の面かげも更に戀しき山の端のつき

順徳院御製

暮をだに猶まちわびし有明のふかき別となりにけるかな

月もなほ見し面影やかはるらむなきふるしてし袖の泪に

信實朝臣

いつまでと知らぬかたみの月影を宿す泪に袖や朽ちなむ

大藏卿隆博

永仁二年八月十五夜十首の歌講ぜられし時、月前契戀といへる心を

月をだに見しよの影と思出でよ契の末はあらずなるとも

爲道朝臣

おのづから共に見し夜の面かげも昔になりぬ秋のよの月

新院兵衛督

題志らず

廻りあふ月を其夜の形見とも人はかけても思ひ出でじを

太政大臣

色かはる月のかつらの影よりや秋の心はうつりはてけむ

參議公明

忘らるゝ我身ぞあらぬめぐりあふ月は昔の影もかはらで

前參議雅孝

おのづから思ひや出づるうき人の心志らせよ夜はの月影

法眼行濟

もろともに見しを形見の面かげに月ぞ泪を猶さそひける

義圓法師

うきながら今は形見の夜半の月せめて泪に曇らずもがな

前中納言經繼

嘉元の百首の歌奉りし時、忘戀

人はよも思ひも出でじあふ事は見しをかぎりの有明の月

廣義門院

題志らず

有明の月こそ見しにかはらねど別れし人は影だにもなし

基俊

有明の月と共には出でしかど君が影をばとゞめざりけり

藤原爲綱朝臣

かぎりとも知らで別れし有明の月を形見と幾夜みるらむ

今出河院近衛

思出づる有明の月も掻暮れてうかりし中は形見だになし

藤原泰宗

諸共にながめし夜半の月ばかり面影殘るかたみとぞなる

平齊時

忘れずよ八重雲がくれ入る月のへだてし中に殘る面かげ

從三位親子

うき人は影離れにし袖の上に月なればとていかゞ宿さむ

前大納言良教

弘長の内裏の百首の歌奉りける時、寄月戀

諸共に見しを形見の月だにも朽ちなば袖に影や絶えなむ

津守國助

戀の歌の中に

いかにみし木の間の月の名殘より心づくしの思そふらむ

從二位行家

ひとりわが泪にくらす月影を誰とさやかに人の見るらむ

其儘に夢のたゞぢも絶えにけりいかに定めし夜半の枕ぞ

前大僧正隆辨

弘安の百首の歌奉りける時

片敷の袖のみぬれていたづらに見し夜の夢は又も結ばず

平貞資

題志らず

稀に見し夢の契も絶にけり寐ぬ夜や人のつらさなるらむ

中臣祐春

驚かす契はさこそ難からめ見し世をだにも夢になせとや

平行氏

逢ふ夢につらさを猶やそへつらむさむる現に物思へとて

前中納言爲相

嘉元の百首の歌奉りし時、逢不遇戀

結ばでもあらまし物をなれし世の契を今の夢と知りせば

今出河院近衛

戀の歌の中に

見ずもあらで覺めにし夢の別より綾なくとまる人の面影

中宮

いかなれば見し夜の夢を現とも思ひあはせぬ契なるらむ

太政大臣

百首の歌奉りし時

我のみぞ思ひあはするそのまゝに又見ぬ夢の昔がたりは

前參議家親

題志らず

今はたゞ夢とぞなれるいつまでか思ひ出でしも現なりけむ

龜山院御製

弘安の百首の歌めされける次でに

おなじ世に見しは現もかひなくて夢ばかりなる人の面影

正三位爲實

戀の歌とてよみ侍りける

夢にても又逢ふ事や難からむまどろまれぬぞせめて悲しき

祝部成良

おのづから見しや其夜の面影もいかなる夢の契なりけむ

源重之女

逢見しは夢かとつねに歎かれて人に語らまほしき頃かな

貫之

平貞文の家の歌合に、會後戀

あかずして別れし人をゆめに見て現にさへも落つる涙か

友則

題志らず

立ち返り思ひ捨つれど石の上ふりにし戀は忘れざりけり

業平朝臣

年だにも十とてよつはへにけるを幾度人を頼みきぬらむ

宗于朝臣

年月は昔にもあらずなりぬれど戀しき事は變らざりけり

後深草院少將内侍

忘られぬ物からつらき年月はいかなる中の隔てなるらむ

藤原爲明朝臣

さりともと猶頼みしは年月を隔てぬ程のつらさなりけり

院御製

遇不逢戀を

一夜だに猶へだてじと思ひしにうき年月の積りぬるかな

龜山院御製

戀の歌とてよませ給うける

年月のあはぬつらさを重ねても猶立ちかへる袖のうら波