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續千載和歌集卷第十八 雜歌下
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18. 續千載和歌集卷第十八
雜歌下

中納言朝忠

題志らず

世の中は唯今日のごとおもほえて哀れ昔になりも行く哉

讀人志らず

忘れずよなれし雲居の夜半の月光を袖のうへにやどして

圓光院入道前關白太政大臣

古への名殘やなほもへだてまし月におぼえぬ昔なりせば

藤原忠資朝臣

月催懷舊といふことを

見しこともかはらぬ月の面影や唯めのまへの昔なるらむ

近衛關白前左大臣

故郷月といふ事を

むかしをば思ひいづやと故郷の軒もる月にことやとはまし

後二條院御製

位におましましける時七月七日人々題をさぐりて百首の歌よみ侍りけるついでに對月忍昔と云ふ事をよませ給うける

ながめつゝ猶も昔を忍ぶべき月を隔つる我がなみだかな

慈道法親王

西山に住み侍りける頃よみ侍りける

むかしをも忘れぬ宿の月なれやかはらぬかげに墨染の袖

雲禪法師

題志らず

いく秋かはらぬ月のやどならむ跡は昔の庭のあさぢふ

行乘法師

みしまゝのかげだに殘れ夜半の月秋は昔の秋ならずとも

法印玄守

何ゆゑにかはらぬ友とたのむらむ月は昔の秋もしのばじ

西音法師

みれば先づ泪流るゝみなせ川いつより月の獨りすむらむ

圓光院入道前關白太政大臣

雨中忍昔といへる心を

むかし思ふ老の泪にそふ物は我が身を秋の時雨なりけり

惟宗忠秀

題志らず

古への野中の清水くまねども思ひ出でゝぞ袖ぬらしける

法印顯範

行く年は六十ぢつもりの浦風にかへらぬ老の波ぞ悲しき

丹波長有朝臣

今はわが八十ぢ餘りの友もなし誰と見し世の事語らまし

圓光院入道前關白太政大臣

あはれなり思ひしよりもながらへて昔をこふる老の心は

後鳥羽院御製

人々に五十首の歌めしけるついでに

見ずしらぬ昔の人の戀しきは此の世を歎くあまりなりけり

前參議雅有

懷舊の心を

昔まで遠くはいはじ過ぎぬれば昨日の事も戀しかりけり

藻壁門院少將

獨懷舊といふ事を

哀れとも誰かはきかむ人志れぬ心の内のむかしがたりは

天台座主慈勝

題志らず

かず/\に忍ぶべしとは思ひきや等閑にこそ過ぎし昔を

讀人志らず

行末も猶こし方のまゝならばいつを我が身の思出にせむ

岩藏姫君

忘られぬその思出もなき物を何ゆゑ忍ぶむかしなるらむ

藤原盛徳

今さらに昔を何と忍ぶらむうき世とてこそ思ひすてしか

祝部貞長

遠ざかる物とはいはじ思出でゝ忍ぶ心にかへるむかしは

藤原基有

思出のなきをうき身に喞ちてもたがため忍ぶ昔なるらむ

圓光院入道前關白太政大臣

たけぐまの松を頼みにながらへて昔をみきと誰に語らむ

民部卿實教

深草なる所にまかりて夕懷舊といふ事をよみ侍りける

つかへこし昔なりせば深草の里はくれぬと急がざらまし

祝部行氏

題志らず

老いぬればぬるが内にも古への同じ事こそ夢に見えけれ

二品法親王性助

みるまゝに夢になりゆく古へを思ひしりても何志ぶらむ

伏見院新宰相

伏見院に三十首の歌奉りける時、夜夢

夜を殘す寐覺の床におもふかな昔をみつる夢のなごりは

平齊時

遊女の心を

一夜あふゆきゝの人のうかれ妻いく度かはる契なるらむ

行蓮法師

題志らず

背く世にいつ思立つ道もなし暮るゝ日毎に明日は頼めど

前大僧正源惠

背くべき物ぞと世をばしりながら心ならでや誰も過ぐ覽

讀人志らず

山深くせめては誘ふ友もがな我と背くはかたき世なれば

何事を惜むとしもはなけれども厭ふにかたき浮世なりけり

前右大臣室

今更にすつ共何か惜からむ本より世にもある身ならねば

明玄法師

住侘びて背くべき世と思ひしる心にいつか身をも任せむ

大僧正道順

百首の歌奉りける時

歎くべき世のことわりはなき物を思ふにも似ぬ心なるらむ

法橋相眞

題志らず

うきたびに猶世を喞つ心こそげに數ならぬ身を忘れけれ

平時夏

恨むべき世にし非ねば中々に數ならぬ身ぞ住みよかりける

賀茂基久

斯て身の憂きにつけても厭はずばげに世をすつる折やなからむ

平宗直

定なき習ならずば世の中のうきにややがて厭ひはてまし

藤原景綱

厭ひても後はいかにと思ふこそ猶世にとまる心なりけれ

藤原頼氏

世をすつる數にさへ社洩にけれうき身の末を猶頼むとて

前左兵衛督教定

厭ひても心をすてぬ物ならば浮世へだつる山やなからむ

中臣祐春

一すぢに山の奥とも急がれず住み果てぬべき心ならねば

源隆泰

浮世をば厭ひぞはてぬあらましの心は山の奥にすめども

昭慶門院一條

いつまでかすまで心にかゝるべき深きみ山の峯の志ら雲

平時常

捨果てむ後こそ人に世のうさをいはで厭ひし身ともしられめ

權大納言兼季

述懷の心を

在りはてぬ浮世の中の假の宿いづくにわきて心とゞめむ

院御製

賤がやに圍ふや柴の假の世は住みうしとても哀いつまで

示證上人

題志らず

ありとてもうき身はよしや吉野川早く此世を厭果てなむ

權大僧都嚴教

憂き事き有果てぬよと思はずばいつを限に身を歎かまし

平宣時朝臣女

今は早世をも恨みず身一つの憂きに爲てぞ音は泣れける

權少僧都定圓

身こそ早心の儘になりにけれうしと思ひし世を遁れつゝ

權中納言公雄

嘉元の百首の歌奉りし時、述懷

歎かじようき身にそへる浮世ともしらでぞ山の奥は求めし

おなじ心を

捨てし世の志るしや何ぞ今も猶うき身離れぬ我が泪かな

入道前太政大臣

出家の後年頃申しかはしける女世をのがれて今は後の世も頼もしき由申して侍りければ

生ける身の爲と計りに見し人の長き世までの友と成ける

讀人志らず

返し

生ける身のうさも忘れて後の世の友ときくにぞ今は嬉しき

兼好法師

題志らず

いかにして慰む物ぞうき世をも背かで過す人にとはゞや

後徳大寺左大臣

寂蓮法師世をのがれぬと聞き侍りて申しつかはしける

世の中を出でぬとなどか告げざりし後れじと思ふ心ある物を

寂蓮法師

返し

人をさへ導く程の身なりせば世を出ぬとは告げもしてまし

常磐井入道前太政大臣

大原にまかりて草庵の所などしめおきて後寂圓上人に申しつかはしける

嬉しくぞまだみぬ山の奥もみし世のうき時の宿求むとて

入道前太政大臣

前參議實俊出家して侍りけるにつかはしける

同じ世をすつる心のへだてなく共にもとめむ道ぞ嬉しき

前參議實俊

返し

尋ねいるおなじ道にといそぎてぞ衣の色も思ひそめにし

後一條入道前關白左大臣

述懷の歌の中に

いかにせむつらき所の數そへて吉野の奥もすみよからずば

靜仁法親王

弘安の百首の歌奉りける時

老の身に吉野の奥のすゞ分けて浮世をいづる道は知にき

平宗宣朝臣

題志らず

長らへて有りはつまじき理を思ふよりこそ浮世なりけれ

順助法親王

幾程もあらじ物ゆゑながらへて何と浮世の夢をみるらむ

右兵衛督基氏

醒易き老のねぶりの夢にこそ彌果敢なゝる程はみえけれ

二品法親王覺助

積りゆく我がよの程の年月はたゞ時のまのうたゝねの夢

藤原冬隆朝臣

現だに思ふにたがふ行く末をみし夢とてもいかゞ頼まむ

權少僧都澄舜

七十ぢの夢より後のいかならむ永きねぶりの果ぞ悲しき

前大僧正仁澄

心をば夢のうちにぞなぐさむる現はつらき浮世なれども

藤原盛徳

いかにして現のうさを慰めむ夢てふ物をみぬ世なりせば

前大僧正守譽

世の中は唯かりそめの草枕むすぶともなき夢とこそみれ

式乾門院御匣

夢とのみ思ひなしてややみなまし浮世慕はぬ心なりせば

太政大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、夢

ぬるが内が夢をも夢と思はねばしらず孰れか現なるらむ

三善爲連

題志らず

おどろかで心のまゝにみる程は夢も現にかはらざりけり

讀人志らず

世をわたる現もさぞとあだにみて思ひしらるゝ夢の浮橋

中務卿具平親王

世の中はいつかは夢と思はねど現すくなき頃にもある哉