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續千載和歌集卷第十五 戀歌五
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15. 續千載和歌集卷第十五
戀歌五

平兼盛

云ひそめて久しくなりける人に

つらくのみ見ゆる君かな山の端に風待つ雲の定なき世に

權中納言敦忠

いかなりける時にかありけむ、女のもとにいひ遣しける

憂き事のしげさまされば夏山のした行く水の音も通はず

前中納言定家

題志らず

かけてだに又いかさまにいはみ潟なほ波高き秋のしほ風

信實朝臣

末の松あだし心のゆふ汐に我が身をうらと浪ぞこえぬる

兵刑卿元良親王

物申しける女こと人に物申す由聞きて遣しける

いつしかとわが松山の今はとて越ゆなる浪にぬるゝ袖哉

前大納言爲氏

光俊朝臣すゝめ侍りける百首の歌に

忘れじと契りし中の末の松たがつらさにか波は越ゆらむ

弘安の百首の歌奉りける時

忘らるゝ簔のを山の難面くもまつと聞かれむ名こそ惜けれ

法印定爲

嘉元の百首の歌奉りし時、會不逢戀

越えなれし跡とも見えず立歸りつらき後瀬の山の端の雲

權中納言公雄

永仁二年八月十五夜十首の歌講ぜられし時、月前恨戀といへる心を

なべて唯すぐさぬ月もかこたれぬつらき人ゆゑ曇る泪に

平時敦

戀の歌の中に

今は唯つらきかたみと厭へども袖をはなれぬ月の影かな

平貞時朝臣

つらしとも憂き人ならば云てまし見し夜に變る袖の月影

平齊時

永仁六年九月十三夜式部卿親王の家の三首の歌に月前恨戀

曇るとも見ざりしものをとはぬまの恨にかはる袖の月影

藤原宗朝

題志らず

つれなくて何かうき世に殘るらむ思ひも出でぬ有明の月

衣笠内大臣

いかにせむ曇る泪のます鏡うらみしよりぞ影は絶えにし

從二位成實

寳治の百首の歌奉りける時寄鏡戀

よしさらば泪にくもれ見る度にかはる鏡の影もはづかし

法皇御製

百首の歌めされしついでに

恨みてもかひ社なけれ天少女いさりたく火の燃焦れつゝ

院御製

恨戀の心をよませ給うける

名もつらし又もみぬめの浦波の朝夕袖にかゝるばかりは

土御門院御製

潮垂るゝ袖こそあらめ蜑のすむ恨みよとてのみるめなり

從二位家隆

おのづから問へかし人の海士のすむ里の知べに思ふ心を

平時元

題志らず

いかにせむよそに鳴門の沖つ波はては寄邊も知らぬ恨を

權律師圓世

朽ちねたゞ潮くむ海士のぬれ衣恨みはねぬと人に知せむ

藤原重綱

思知る人もなぎさにやく鹽のからき恨に身をこがすかな

正三位爲實

身をばさて思ひぞすてしうつせ貝空しき戀の恨せしまに

花山院内大臣

寳治の百首の歌奉りける時、寄虫戀

恨みわび我からぬるゝ袂哉藻にすむ虫にあらぬ身なれど

興風

題志らず

泣きわびて身を空蝉となりぬれば恨むる聲も今は聞えじ

法皇御製

百首の歌めされしついでに

はかなしな戀も恨も空蝉の空しき世には音のみなかれて

從三位光成

戀の歌の中に

うつゝには契絶えぬる思ひ寐の夢になしても猶や恨みむ

法眼行濟

心ひく方こそ知らね忘らるゝ身をば浮田の杜のしめなは

源親教朝臣

枯れはてば思ひ絶えなで眞葛原なにゝ殘れる恨なるらむ

前大納言通重

問へかしな絶えぬ恨の眞葛原風を待つまの露はいかにと

入道前太政大臣

弘安の百首の歌奉りける時

身のうきに思ひかへせば眞葛原たゞ恨みよと秋風ぞふく

安嘉門院大貳

題志らず

秋かぜに恨みわぶとも眞葛原露こぼるとは人にしらせじ

前大納言爲家

洞院攝政の家の百首の歌に

海士の住む里の苫屋のくずかづら一方にやは浦風もふく

皇太后宮大夫俊成

久安の百首の歌に

忘草つみにこしかど住吉のきしにしもこそ袖はぬれけれ

典侍親子朝臣

戀の歌の中に

いかにせむ身を住江の草の名に思傚してや訪ふ人のなき

荒木田氏之

うき人の心のたねの忘れぐさいつわが中に茂りそめけむ

賀茂經久

うき中は枯れはてぬるを思ひ草なにゝ泪の露かゝるらむ

平時邦

ほしわぶるおなじ袂の秋風にありしより猶露ぞこぼるゝ

圓蓮法師

うかりける人のこゝろの忘れ水など深からぬ契なるらむ

平貞
[_]
[1]A

契りしはさて山の井の忘水わすれし後は見るかげもなし

大江政國女姉

理と思ふにつけて悲しきは忘らるゝ身のつらさなりけり

藤原經定朝臣

今更に忘らるゝ身ぞ喞たるゝ豫て思ひしつらさなれども

權大納言實衡

結びけむあだし契ぞうかりける終に絶えぬる中となるにも

藤原懷世朝臣

斯計りげに絶果てむつらさとも暫しは知らで恨ざりしを

讀人志らず

恨みてもかひこそなけれ理とおもひ知るべき心ならねば

今上御製

思出でゝ又とふまでは難くとも忘られし身と爭で知せむ

讀人志らず

一筋に忘れもはてばいかゞせむうき例にや思ひ出づらむ

權中納言爲藤

今上みこの宮と申しける時五首の歌合に、絶戀

よしさらば思ひな出でそ中々にうき身知らるゝ昔語りを

藤原爲定朝臣

百首の歌奉りし時

自から思ひ出づともかひぞなき契りしまゝの心ならずば

信實朝臣

洞院攝政の家の百首の歌に、怨戀

かゝるべき契をなどか結びけむ先の世志らで人は恨みし

入道前太政大臣

戀の歌の中に

人もいざつらき方にや喞つらむ我は恨みて訪はぬ月日を

法印定爲

平宗宣朝臣よませ侍りし住吉の社の三十六首の歌に、逢不遇戀

忘らるゝ人はよそにて年月のつもるを咎に何かぞふらむ

永陽門院少將

題志らず

忘られぬ逢瀬はよその名のみして我が中河の自からぞうき

權大納言典侍

絶えはつる契をひとり忘れぬもうきも我身の心なりけり

前大納言爲世

嘉元の百首の歌奉りし時、忘戀

うきをだに思ひも知らぬ心にて我さへ身をも忘れける哉

左大臣

百首の歌奉りし時

我計りさのみ思ふもかひぞなきげにつらくなる人の心は

新院御製

つらきをもげに思知る中ならばいとかく人を慕はざらまし

二品法親王覺助

題志らず

忘れむと思ふ物から慕ふこそつらさも知らぬ心なりけれ

藤原經宣朝臣

つらさをも思ひとがめぬ我身こそせめて恨むる心なりけれ

藤原秀行

はては又我が身に返る恨かな暫しぞ人のうきも知られし

鴨祐敦

契らずようき面影を殘し置て忘らるゝ身の形見なれとは

讀人志らず

忘らるゝうき身の程を志らぬ哉人をつらしと思ふ計りに

藤原基夏

うき身にはつらさも知らで今は唯人を恨みぬ心ともがな

前齋宮折節

忘行く人計りこそつらからめ身をさへさのみ何恨むらむ

前關白太政大臣

嘉元の内裏の三十首の歌に

戀しさはさもこそあらめ何と又つらき方にも忘ざるらむ

百首の歌奉りし時

立返り人のつらさを恨むればうき身の咎を志るかひぞなき

前大納言爲家

後九條内大臣の家の三十首の歌に

うらむるも戀ふる心の外ならでおなじ泪ぞせく方もなき

權中納言師賢

題志らず

恨侘びかゝるとだにも知せばやつらさにたへぬ袖の泪を

讀人志らず

つらし共よその人目を喞たばや忍ぶより社いひも絶しか

平貞直

忘らるゝ後さへ猶も忍ばれて人のつらさを知らぬ身ぞうき

鴨祐夏

恨戀を

命こそうきにつれなき我ならめうらみに弱る心ともがな

從三位爲理

ありて世にのこる恨もなからまし逢ふを限の命ともがな

前大納言有房

嘉元の百首の歌奉りし時、おなじ心を

命だにつらさにたへぬ身なりせば此世乍らは恨みざらまし

前攝政左大臣

戀の歌の中に

數々に憂きより外は何をかは思ひ出でゝも人を志のばむ

藤原冬隆朝臣

絶えにしも我心ぞと云做して人のつらさを世には洩さじ

正三位惟繼

つらしともいはで心に思ふこそ忍びなれぬる恨なりけれ

平宣時朝臣

つらしともうしとも云はじ我袖の泪に思ふ色は見ゆらむ

藤原範秀

我が思ふ心のうちを志らせでや人のつらさも恨果てまし

權中納言爲藤

神無月の頃北白川にまかりて人々十首の歌講じ侍りし時、恨後絶戀

恨みずばくやしからまし言の葉もまたは通はぬ中の契に

山本入道前太政大臣

建治三年九月十三夜五首の歌に、絶戀

おのづから恨みし程の頼みだに今はよそなる身を歎く哉

皇太后宮大夫俊成

百首の歌よみ侍りけるに、戀

何せむにうしとも人を恨みけむさてもつらさは増る物故

和泉式部

題志らず

恨むべき方だに今はなきものをいかで泪の身に殘りけむ

左京大夫顯輔

家に歌合し侍りける時、戀の心を

つらからむ言の葉もがな侘つゝは恨みてだにも慰めにせむ
[_]
[1] The kanji for A is not available in the JIS code table. The kanji is Morohashi's Dai Kan-wa jiten's kanji number 1721. (Tetsuji Morohashi, ed., Dai Kan-Wa jiten, Tokyo: Taishukan shoten, 1966-68).