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新勅撰和歌集卷第八 羇旅歌
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8. 新勅撰和歌集卷第八
羇旅歌

大納言旅人

太宰帥に侍りける時府官らひきゐて香椎の浦に遊び侍りけるによめる

いざや子等香椎のかたに白妙の袖さへぬれて朝菜摘てむ

中納言家持

越中守に侍りける時國のつかさふせの湖に遊び侍りける時よめる

ふせの海の沖津白浪あり通ひいや年のはにみつゝ忍ばむ

額田王

飛鳥川原の御時近江に御幸侍りけるによみ侍りける

秋の野に尾花かりふき宿れりし宇治の都の假庵しぞ思ふ

持統天皇御製

芳野宮にみゆき侍りける時

みよし野の山下風の寒けくにはたやこよひもわが獨ねむ

田原天皇御製

慶雲三年難波の宮にみゆきの日

葦邊行くかものはがひに霜ふりて寒き夕のことをしぞ思ふ

讀人志らず

題志らず

何くにか我がやどりせむ高島のかちのゝ原に此日暮しつ

苦くもふりくる雨か三輪が崎さのゝ渡に家もあらなくに

辨基法師

待乳山夕こゑ行きていほざきのすみだ河原に獨かもねむ

大納言昇

亭子院の宮の瀧御覽じにおはしましける御供につかうまつりてひぐらし野といふ所をよみ侍りける

日暮し野行過ぎぬ共かひもあらじ紐とく妹もまたじと思へば

謙徳公

瓜生山をこえ侍るとて

行く人を止め兼てぞうりふ山峯立ちならし鹿も鳴くらむ

惠慶法師

大島の鳴門といふ所にてよみ侍りける

都にといそぐかひなく大島の灘のかけぢは鹽みちにけり

伊勢大輔

藤原惟規が越後へ下り侍りけるに遣しける

けふやさは思ひたつらむ旅衣身にはなれねど哀とぞ聞く

和泉式部

題志らず

こし方をやへの白雲隔てつゝいとゞ山路の遙かなるかな

藤原清正

みちの國へまかりける人に

かり初の別と思へどたけぐまの松に程へむことぞくやしき

左京大夫顯輔

宇佐の使の餞に

立ち別れ遙にいきのまつほどは千年を過す心地せむかも

道因法師

題志らず

志ぬ計けふだに歎く別路にあすは生くべき心地こそせね

入道前太政大臣

羇中曉といへる心をよみ侍りける

旅衣立つあかつきの鳥の音に露よりさきも袖はぬれけり

源家長朝臣

別の心をよみ侍りける

別路をおしあけ方の槇のとにまづさきだつは涙なりけり

藤原親繼

別れ行くかげもとまらず石清水相坂山は名のみふりつゝ

藤原兼高

土佐國に年へ侍りける時歌あまたよみ侍りけるに

曉ぞなほうきものとしられにし都を出でしありあけの空

藤原信實朝臣

權大納言忠信歌合し侍りけるに旅の戀をよめる

くれにもといはぬ別の曉をつれなく出でし旅のそらかな

前中納言匡房

旅の歌とてよみ侍りける

まだしらぬ旅の道にぞ出でにける野原篠原人に問ひつゝ

權大納言長家

宇治關白ありまの湯見にまかりける道にて秋の暮を惜む歌よみ侍りけるに

神なびの杜の方りに宿はかれ暮行く秋もさぞとまるらむ

權中納言通俊

齋宮群行のすゞかの頓宮にて旅の歌よみ侍りけるに

急く共けふはとまらむ旅寐する葦の假庵に紅葉散りけり

權大納言公實

關路曉雪といへる心をよみ侍りける

鳥の音に明けぬときけば旅衣さゆともこえむせきの白雪

皇太后宮大夫俊成

久安百首の歌奉りける旅の歌

わが思ふ人にみせばやもろ共にすみだ河原の夕ぐれの空

遙かなるあしやの沖のうきねにも夢路は近き都なりけり

後徳大寺左大臣

後法性寺入道前關白の家の百首の歌よみ侍りけるに旅の心をよみて遣しける

草まくらむすぶ夢路は都にてさむれば旅のそらぞ悲しき

後京極攝政前太政大臣

百首の歌奉りける時

うき枕風のよるべも白浪のうちぬるよひは夢をだにみず

式子内親王

荒磯の玉藻の床にかりねしてわれから袖を濡しつるかな

源師光

てる月のみち行く汐に浮寐して旅の日數ぞ思ひ志らるゝ

鎌倉右大臣

題志らず

世のなかは常にもがもな渚こぐ蜑の小船の綱手かなしも

法印幸清

入道二品親王の家に五十首の歌よみ侍りけるに、海旅

暮れぬとてとまりにかゝる夕浪のこと浦志るき海士の漁火

權中納言頼資

旅泊の心をよみ侍りける

夜を重ねうきねの數のつもれども浪路の末や猶殘るらむ

正三位知家

なみ枕夢にもみえずいもが島なにを形見の浦といふらむ

參議雅經

旅の心をよみ侍りける

たち返り又もやこえむみねの雲跡もとゞめぬ四方の嵐に

眞昭法師

月のいろもうつりにけりな旅衣すそ野の萩の花の夕づゆ

八條院高倉

都を離れて所々に詣でめぐり侍りける頃よみ侍りける

世をうしとなれし都は別れにきいづこの山を泊ともなし

白雲の八重たつ山をたづぬとも眞の道はなほやまどはむ

六條入道前太政大臣

建暦二年内裏の詩歌合羇中眺望といへる心をよみ侍りける

こえわぶる山も幾重になりぬらむ分けゆく跡を埋む白雲

前内大臣

建保二年内裏の歌合秋の歌

暮れば又わがやどりかは旅人のかち野の原の萩の下つゆ

蓮生法師

世をのがれて後修行の次でに淺香山をこえ侍りけるに昔のこと思ひ出で侍りてよみ侍りける

古の我とは志らじ淺香山みえし山井のかげにしあらねば

前大僧正慈圓

旅の心をよみ侍りける

歸りこばかさなる山の峯毎にとまる心を志をりにはせむ

禎子内親王家攝津

みちの國に下り侍りける人をおくりて粟津に泊りてよみ侍りける

東路の野路の草葉の露繁み行くもとまるも袖ぞ志をるゝ

業平朝臣

惟喬のみこの狩しけるともに日頃侍りてかへり侍りけるを猶とゞめ侍りければよみ侍りける

枕とて草引き結ぶこともせじ秋の夜とだに頼まれなくに

置始東人

難波にみゆき侍りける時よめる

大伴のたかしのはまの松がねを枕にぬれど家しおもほゆ