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新勅撰和歌集卷第十九 雜歌四
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19. 新勅撰和歌集卷第十九
雜歌四

中納言兼輔

亭子院大内山におはしましける時勅使にて參りて侍りけるに麓より雲の立ちのぼりけるをみてよみ侍りける

志ら雲の九重にたつ峯なれば大内山といふにぞありける

讀人志らず

題志らず

山城のくせのさぎ坂神代より春はもえつゝ秋はちりけり

久邇の都のあれにけるを見てよみ侍りける

みかの原くにの都はあれにけり大宮人のうつりいぬれば

皇太后宮大夫俊成

春日の社に百首の歌よみて奉りけるに、橋の歌

都いでゝ伏見を越ゆる明方はまづうちわたすひつ河の橋

内大臣

百首の歌よみ侍りけるに、早秋の歌

吹きそむる音だにかはれ山城のときはの森の秋のはつ風

僧正行意

建保四年百首の歌奉りける時

山城のときはの森の夕時雨そめぬみどりに秋ぞ暮れぬる

寂身法師

名所の歌よみ侍りけるに

志た草もいかでか色の變るらむ染めぬときはの松の雫に

眞昭法師

飛鳥河かはせの霧も晴れやらでいたづらに吹く秋の夕風

讀人志らず

題志らず

世中はなど大和なるみなれ河見馴れそめてぞあるべかりける

中納言家持

千鳥なく佐保の川瀬の清きせを駒うち渡しいつか通はむ

入道前太政大臣

春は花ふゆは雪とて志ら雲の絶えずたなびくみ吉野の山

正三位家隆

いにしへの幾世の花に春くれて奈良の都の移ろひぬらむ

源家長朝臣

前關白の家の歌合に名所月

何處にもふりさけ今や三笠山もろこしかけておつる月影

後京極攝政前太政大臣

百首の歌よみ侍りける

久かたの雲ゐに見えしいこま山春は霞のふもとなりけり

讀人志らず

題志らず

いとまあらば拾ひに行かむ住の江の岸によるてふ戀忘貝

和泉式部

住吉の有明の月をながむればとほざかりにし影ぞ戀しき

一條右大臣

亭子院の御供に仕うまつりて住吉の濱にてよめる

住吉の浦に吹きあぐる白浪ぞ汐滿つときの花と咲きける

太宰權帥公頼

同じみゆきに難波の浦にてよみ侍りける

難波潟志ほ滿つ濱の夕暮はつまなきたづの聲のみぞする

讀人志らず

謙徳公に遣しける

思ふこと昔ながらの
[_]
[19]はし橋
ふりぬる身こそ悲しかりけれ

正三位家隆

名所の歌奉りける時、あしの屋

短夜のまだふしなれぬ蘆の屋のつまも顯はに明くる東雲

藤原行能朝臣

布引瀧をよめる

布引の瀧の白糸わくらばにとひくる人もいくよへぬらむ

入道前太政大臣

百首の歌に紅葉をよみ侍りける

下葉まで心のまゝにそめてけり時雨にあまる神なびの森

安貴王

伊勢國に御幸の時よみ侍りける

伊勢の海おきつ白浪花にがも包みていもが家づとにせむ

正三位家隆

戀の歌よみ侍りける中に

いせの海の蜑のまてがたまて暫し恨に浪の隙はなくとも

大藏卿有家

名所の歌奉りけるに、鈴鹿山

秋深くなりにけらしな鈴鹿山紅葉は雨と降りまがひつゝ

家長朝臣

春浦月といへる心をよみ侍りける

梓弓いちしの浦の春の月海士のたくなはよるも引くなり

中務

志かすがのわたりにてよみ侍りける

ゆけばあり行ねば苦し志かすがの渡りにきてぞ思たゆたふ

正三位家隆

前關白の家の歌合に名所月をよみ侍りける

光そふ木のまの月におどろけば秋もなかばのさやの中山

藤原光俊朝臣

すみわたるひかりも清し白妙の濱名のはしの秋のよの月

讀人志らず

題志らず

戀しくば濱名の橋を出でゝ見よ下ゆく水に影やとまると

大中臣能宣朝臣

平兼盛するがのかみになりて下り侍りける時餞し侍るとてよめる

ゆき歸り手向するがの富士の山煙も立たぬ君を待つらし

仁和寺二品法親王守覺

家の五十首の歌

富士の嶺はとはでも空に知られ鳬雲より上にみゆる白雪

從三位範宗

名所の百首の歌奉りける時よめる

よと共にいつかは消えむ富士の山烟になれてつもる白雪

相摸

題志らず

いつとなく戀するがなる有渡濱の疎くも人になり増る哉

後京極攝政前太政大臣

百首の歌に

足柄の關路こえゆく志のゝめに一むらかすむうき島が原

小町

題志らず

武藏野のむかひの岡の草なればねを尋ねても哀とぞ思ふ

讀人志らず

葛飾のまゝの浦まをこぐ舟のふな人さわぐ浪たつらしも

前大僧正慈圓

かつしかの昔のまゝのつぎ橋をわすれずわたる春霞かな

能因法師

常陸にまかりてよみ侍りける

よそにのみ思ひおこせし筑波ねの峯の白雪けふみつる哉

清原元輔

天祿元年大甞會悠紀方の御屏風の歌

唐崎の濱のまさごの盡くるまで春の名殘は久しからなむ

前大僧正慈圓

山にのぼりける道にて月をみてよみ侍りける

大たけの峯ふく風に霧はれてかゞみの山の月ぞくもらぬ

鎌倉右大臣

題志らず

春きては花とかみえむおのづから朽木の杣にふれる白雪

參議雅經

花さかでいくよの春にあふみなる朽木のそまの谷の埋木

後京極攝政前太政大臣

伊勢の勅使にて甲賀のうまやにつき侍りける日

遙なるみかみの島をめにかけていくせ渡りぬやすの河浪

讀人志らず

題志らず

今更にさらしな河の流れてもうき影見せむ物ならなくに

寂蓮法師

とくさ苅るきその麻衣袖ぬれて磨かぬ露も玉と置きけり

源有教朝臣

信濃國に罷りける人にたき物おくり侍りける

忘るなよあさまのたけの煙にも年へて消えぬ思ありとは

讀人志らず

題志らず

陸奥にありといふなる玉河の邂逅にだ逢ひ見てしがな

源信明朝臣

陸奥守に侍りける時忠義公のもとに申しおくり侍りける

あけくれは籬の島をながめつゝ都戀しき音をのみぞ鳴く

讀人志らず

題志らず

つらきをも岩での山の谷に生ふる草の袂ぞ露けかりける

清輔朝臣

名所の歌あまたよみ侍りけるに

ふる里の人にみせばや白浪のきくよりこゆる末のまつ山

祝部成重

題志らず

心ある海士の藻汐木たきすてゝ月にぞあかす松がうら島

寂延法師

寄露戀をよめる

忍山木の葉志ぐるゝ下草にあらはれにける露のいろかな

平政村

題志らず

宮城野の木のしたふかき夕露も涙にまさる秋やなからむ

信明朝臣

天暦の御時、屏風の歌

昔より名にふりつめる白山の雲居の雪は消ゆるともなし

大納言師頼

百首の歌奉りける、雪の歌

かき暮し玉ゆらやまずふる雪のいくよ積りぬこしの白山

讀人志らず

題志らず

朝毎に石見の河のみを絶えず戀しき人にあひ見てしがな

内大臣

前關白の家の歌合に名所月といへる心を

夕なぎに明石のとより見渡せば大和しまねを出づる月影

大納言旅人

題志らず

鞆の浦のいその室の木みる毎に逢見し妹は忘られむやは

後京極攝政前太政大臣

浪高きむしあけの瀬戸に行く船のよるべ知せよ沖つ汐風

入道前太政大臣

春秋の雲居の雁もとゞまらずたが玉章のもじのせきもり

讀人志らず

妹がため玉を拾ふときの國の由良のみ崎にこの日暮しつ

藻刈舟沖漕來らし妹がしまかたみの浦にたづかけるみゆ

正三位家隆

時しあれば櫻とぞ思ふ春風のふきあげの濱にたてる白雲

前參議教長

名所の歌よみ侍りけるに

浪よする吹上のはまの濱風に時しもわかぬ雪ぞつもれる

權中納言國信

堀河院に百首の歌奉りける時、山の歌

淺みどり霞わたれる絶間よりみれどもあかぬ妹脊山かな

入道前太政大臣

百首の歌に眺望の心をよみ侍りける

和田の原なみと一つにみくまのゝ浦の南は山のはもなし

七條院大納言

題志らず

みくまのゝ浦わの松の手向草いくよかけきぬ浪の白ゆふ

寂蓮法師

後京極攝政の家の百首の歌に草の歌十首よみ侍りける

風吹けば濱松がえの手向草いく代までにか年のへぬらむ

中院入道右大臣

家に十首の歌よみ侍りけるに晩霞隔浦といへる心をよみ侍りける

淡路島とわたる舟やたどるらむ八重たちこむる夕霞かな

前内大臣

和歌所の歌合に海邊霞をよみ侍りける

あはぢしま志るしの煙みせわびて霞をいとふ春の舟びと

讀人志らず

題志らず

志賀の蜑の煙やきたてやく鹽のからき戀をも我はする哉

志賀の蜑のめかり鹽やき暇なみ櫛笥の小櫛とりもみなくに

前大僧正慈圓

霞志く松浦の沖にこぎ出でゝもろこし迄の春を見るかな

正三位知家

秋山鹿といへる心をよみ侍りける

あさぢ山色かはり行く秋風にかれなで鹿の妻を戀ふらむ
[_]
[19] SKT reads はしばしら.