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新勅撰和歌集卷第十二 戀歌二
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12. 新勅撰和歌集卷第十二
戀歌二

讀人志らず

寛平の御時きさいの宮の歌合の歌

夏虫にあらぬ我身のつれもなく人を思ひにもゆる頃かな

夏草の志げき思はかやり火の下にのみこそもえ渡りけれ

年をへてもゆてふ富士の山よりも逢はぬ思は我ぞ勝れる

清愼公

下臈に侍りける時女に遣しける

誰にかは數多思もつけそめし君より又は知らずぞ有ける

伊勢

題志らず

山河の霞へだてゝ仄かにもみしばかりにや戀しかるらむ

み山木の陰の小草は我なれや露しげゝれど知る人もなき

謙徳公

女をみて遣しける

譬ふれば露も久しき世の中にいとかく物を思はずもがな

とばりあげの女王

返し

明るまも久してふなる露の世は假にも人を知じとぞ思ふ

東三條入道攝政太政大臣

神無月のついたちに女に遣しける

歎きつゝ返す衣の露けきにいとゞ空さへ時雨れそふらむ

本院侍從

題志らず

にはたづみ行方志らぬ物思にはかなき泡の消えぬべき哉

道信朝臣

年をへてもの思ふ人の唐衣袖やなみだのとまりなるらむ

讀人志らず

かた糸もてぬきたる玉の緒を弱み亂や志なむ人の知べく

戀侘びぬ蜑の刈藻に宿るてふ我から身をも碎きつるかな

筏おろす杣山河のみなれ棹さしてくれどもあはぬ君かな

宮木引く泉の杣に立つ民のやむ時もなく戀ひわたるかな

遠つ人かりぢの池にすむ鴦の立ても居ても君をしぞ思ふ

朝柏ぬるや河べの志のゝめの思ひてぬれば夢に見えつゝ

さを鹿の朝ふすをのゝ草若み隱ろへかねて人に志らるな

白山の雪のした草われなれや下にもえつゝ年のへぬらむ

廣河女王

戀草をちから車になゝくるまつみて戀ふらくわが心から

九條右大臣

富士の嶺に烟たえずと聞きしかど我が思ひには立後れ鳬

權中納言敦忠

無き名たち侍りける女に遣しける

鹽たるゝ海士の濡衣同じ名を思ひかへさできる由もがな

右近大將道綱

つれなかりける女に遣しける

さ衣のつまも結ばぬ玉緒の絶えみ絶えずみ世をや盡さむ

讀人志らず

題志らず

相坂の名をば頼みてこしか共隔つる關のつらくもある哉

君に逢はむ其日をいつと松の木の苔の亂れて物をこそ思へ

いかばかりもの思ふ時の涙河からくれなゐに袖の濡る覽

秋と契りて侍りけるにえ逢ふまじき故侍りければ業平朝臣に遣しける

秋かけて云し乍もあらなくに木葉降敷くえに社ありけれ

修理

兵部卿元良親王ふみ遣しける返しによみ侍りける

たがく共何にかはせむ呉竹の一夜二夜のあだのふしをば

堀河院中宮上總

堀河院、の女房の艷書をめしけるによみ侍りける

つらし共いさやいかゞは石清水逢瀬まだきにたゆる心は

大納言俊實

返し

世々ふともたえじとぞ思ふ神垣や岩ねをくゞる水の心は

大炊御門右大臣

久安百首の歌奉りける、戀の歌

手に取てゆらぐ玉の緒絶えざりし人計だに
[_]
[10]逢見てしが

左京大夫顯輔

年ふともなほ岩代の結び松とけぬものゆゑ人もこそ知れ

權中納言國信

堀河院に百首の歌奉りける時

くりかへし天てる神の宮柱たてかふるまで逢はぬ君かな

藤原爲忠朝臣

戀の歌よみ侍りけるに

住吉の千木のかたそぎ我なれや逢はぬ物故年をへぬらむ

入道前太政大臣

建仁元年八月歌合に、久戀

待ちわびて三年も過ぐる床の上に猶かはらぬは涙なり鳬

御製

うへのをのこども忍久戀といへる心をつかうまつりける次でに

よそにのみ思ひふりにし年月の空しき數ぞ積るかひなき

權中納言定家

建保五年四月庚申久戀といへる心をよみ侍りける

戀死なぬ身のをこたりぞ年へぬるあらば逢夜の心強さよ

參議雅經

つれなしと誰をかいはむ高砂の松もいとふも年は經に鳬

源有長朝臣

建保三年内大臣の家の百首の歌よみ侍りけるに名所戀といへる心をよめる

高砂の尾上にみゆる松のはの我もつれなく人を戀ひつゝ

源家長朝臣

庚申久戀歌

いたづらにいく年波の越えぬらむ頼めかおきし末の松山

如願法師

あだにみし人の心のゆふ襷さのみはいかゞかけて頼まむ

殷富門院大輔

題志らず

逢見てもさらぬ別のある物をつれなしとても何歎くらむ

崇徳院御製

百首の歌めしける時

愚にぞ言の葉ならばなりぬべき云でや君に袖をみせまし

さきの世の契ありけむと計も身をかへて社人に知られめ

權大納言隆季

相坂のせきの關守こゝろあれや岩間の清水影をだにみむ

典侍因子

前關白の家の歌合に寄鳥戀といへる心をよみ侍りける

よそにのみゆふつけ鳥の音をぞ鳴く其名も知らぬ關の往來に

殷富門院大輔

戀の歌よみ侍りけるに

また越えぬ相坂山の石清水むすばぬ袖を志ぼるものかは

中宮少將

いかにせむ戀路のすゑに關すゑてゆけども遠き相坂の山

祝部成茂

逢坂の山は往來の道なれどゆるさぬ關はそのかひもなし

勝命法師

賀茂重保社頭にて歌合し侍りけるに戀の心をよめる

戀路にはたが据ゑ置きし關なれば思ふ心を徹さゞるらむ

藤原伊經朝臣

戀路にはまづ先に立つ我涙思ひかへらむ志るべともなれ

權中納言長方

題志らず

伊勢の海をふの恨を重ねつゝ逢事なしの身をいかにせむ

寂蓮法師

をふの海の思はぬ浦にこす鹽のさてもあやなく立つ烟哉

參議雅經

入道二品親王の家の五十首の歌、寄烟戀

恨みじな難波のみつに立つ烟心からやくあまの藻しほ火

正三位知家

恨みてもわが身のかたにやく鹽の思ひは志るく立つ煙哉

源家長朝臣

關白左大臣の家の百首の歌、忍戀

志らせばや思ひ入江の玉がしは舟さす棹の下にこがると

藤原行能朝臣

戀の歌よみ侍りけるに

數ならぬ三島がくれにこぐ船の跡なきものは思なりけり

寂蓮法師

春霞たなゝし小船いり江こぐ音にのみ聞く人を戀ひつゝ

殷富門院大輔

憂かりけるよさの浦浪懸てのみ思ふにぬるゝ袖をみせばや

皇太后宮大夫俊成

崇徳院の御時うへのをのこども忍戀の歌つかうまつりけるに

わが戀は浪こすいその濱楸しづみ果つれど知る人もなし

權中納言國信

堀河院の御時殿上にて題を探りて十首の歌よみ侍りけるに鹽がまをよみ侍りける

恨むとも君は知じな須磨の浦にやく鹽がまの煙ならねば

後法性寺入道前關白太政大臣

家百首の歌よみ侍りけるに不遇戀の心を

我戀はあはでの浦のうつせ貝むなしくのみもぬるゝ袖哉

入道前太政大臣

百首の歌奉りける時、戀の歌

石見がた人の心は思ふにもよらぬ玉藻のみだれかねつゝ

高松院右衞門佐

後京極攝政の家に百首の歌よませ侍りけるに、戀の歌

磯菜つむ蜑の志るべを尋ねつゝ君をみるめにうく涙かな

藤原隆信朝臣

よと共にかわくまもなきわが袖や汐ひもわかぬ浪の下草

正三位家隆

題志らず

春の浪のいり江に迷ふ初草のはつかに見えし人ぞ戀しき

前大納言隆房

女に遣しける

人しれぬ憂身に志げき思草おもへば君ぞたねは蒔きける

左近中將公衡

女のゆかりを尋ねて遣しける

傳へてもいかに知らせむ同じ野の尾花が本の草の縁りに

前中納言國道

題を探りて歌よみ侍りけるに思草をよめる

下にのみいはでふる野の思草靡く尾花はほに出づれども

藤原頼氏朝臣

戀の心をよみ侍りける

さしも草もゆる伊吹の山のはのいつ共わかぬ心なりけり

關白左大臣

百首の歌よみ侍りけるに、不遇戀

いつまでかつれなき中の思草むすばぬ袖に露をかくべき

入道前太政大臣

百首の歌奉りける時、戀の歌

逢ふ迄と草を冬野に踏みからし往來の道の果を知らばや

參議雅經

み芳野のみくまが菅をかりにだにみぬ物からや思亂れむ

消えぬとも淺茅が上の露しあらば猶思ひ置く色や殘らむ

正三位知家

建保六年内裏の歌合、戀の歌

人目もるわが通路の志の薄いつとか待たむ秋のさかりを
[_]
[10] SKT reads あひ見てしかな.