新拾遺和歌集 (Shin Shui wakashu) | ||
17. 新拾遺和歌集卷第十七
釋教歌
此の歌は、住吉の社にまうでゝ通夜し侍りける人の夢に示し給ひける普賢菩薩の御歌となむ。
傳教大師
比叡山の中堂に始めて常燈ともして揚げ給ひける時
花山院御製
修行せさせ給うける時粉河の觀音にて、御札に書かせ給うける御歌
大貳三位
人の功徳つくりし所に捧物遣すとて
慈覺大師
題志らず
清少納言女
法華經序品
花山院入道前太政大臣
前大納言爲家日吉の社にて八講おこなひ侍りける時、人々に一品經の歌すゝめけるに、方便品
花山院前内大臣
譬喩品
法印房觀
得未曾有非本所望
入道二品親王尊圓
化城喩品、從冥入於闇永不聞佛名の心を
前大納言忠良
採薪及菓
從二位行家
勸持品
前大納言資名
涌出品
土御門入道前内大臣
壽量品
前大納言良信
柔和質直者則皆見我身の心を
法眼源承
隨喜功徳品、何况於法會
寂蓮法師
如寒者得火
中納言爲藤
なき人をとぶらひて法華經書きて品々の心を歌に詠み侍りけるに、普門品、火澄變成池
前中納言定家
母の爲に經書きける時、嚴王品の心を
寂然法師
普賢經、我心自空罪福無主
周防内侍
小野右大臣の千日の講をたび/\聞きてはての日捧物遣しける包紙に
入道二品親王覺譽
延文二年七月雨の御祈承はりて水天供つとめ侍りしに詠み侍りける
二品法親王覺助
文保の百首の歌奉りし時
高階宗成朝臣
題志らず
前大納言宗明
十如是の心を詠み侍りしとき、如是縁
靜仁法親王
題志らず
法印憲實
金剛經の是法平等無有高下の心を
薀堅法師
無量義經の四十餘年未顯眞實の心を
法眼源忠
扇解脱風除世惱熱
夢窓國師
世尊不説之説、迦葉不聞之聞と云へる心を
左兵衛督直義
釋教の歌に
圓胤上人
赤染衛門
法師のかたはらなる局に來りしに經讀めと云はせしかば、いと暗し、火燈してと云ひしに油やるとて
入道親王尊道
二品尊圓親王書き置きたりける聖教を見て思ひつゞけ侍りける
前僧正慈勝
六帖の題にて詠み侍りける歌の中に、釣を
中務卿宗尊親王
不偸盜戒を
法印源全
延暦寺戒壇さらに造りて澄覺法親王受戒おこなひける時思ひつゞけゝる
前僧正顯遍
識實性の唯識の心を
後宇多院御製
釋教の御歌の中に
僧正慈能
一色一香無非中道
前大僧正公澄
善惡不二邪正一如の心を
素性法師
世間相常住の心を
欣子内親王
題志らず
正嚴法師
讀人志らず
雙救上人
般舟讃、一到彌陀安養國元來是我法王家の心を
權僧正圓位
題志らず
兼空上人
九品往生の心を
法印顯詮
各留半座乘花葉待我閻浮同行人
讀人志らず
題志らず
仁明天皇御製
權少僧都源信
參議雅經
五神通の中に、天耳通の心を
前大僧正隆辨
彌勒を
前大僧正桓守
釋教の歌の中に
法印守遍
十住心の中に、覺心不生心の心を
前大僧正榮海
法流の事勅問につきて奏し侍りし時、思ひつゞけ侍りける
後法性寺入道前關白太政大臣
法界體性智の心を
崇徳院御製
沙羅林を
瞻西上人
雪にて丈六の佛を造り奉りて供養すとて詠める
後京極攝政前太政大臣
禪波羅密
慈威上人
釋教の歌詠みける中に
心海上人
山の常行堂の流通の鐘に鑄つけ侍りける歌
前大僧正良信
菅原寺を興隆し侍りて後、古寺鐘と云ふ事を
慶政上人
地藏菩薩を
爲道朝臣
地藏の名號を始に置きて六首の歌詠み侍りけるに
天台座主院源
題志らず
土御門院御製
後嵯峨院御製
月夜極樂を觀ぜさせ給ふとて
皇太后宮大夫俊成
美福門院に極樂六時讃の繪に書かるべき歌奉るべき由侍りけるに夜のさかひ靜にて漸く中夜に至るほど
前權僧正慈慶
究竟即の心を
前大僧正良覺
心月輪の心を
惟賢上人
菩提心論の我見自心形如月輪を
權僧正寛伊
前大僧正成惠に法流の事申しおくとて詠み侍りける
入道親王尊道
前大僧正桓豪、大僧都慈濟に灌頂さづけ侍りし又の朝申し遣しける
前大僧正桓豪
返し
岡本前關白左大臣
懺法の悲歎の聲を聞きて詠み侍りける
和泉式部
鞍馬に參りたりけるに、かたはらの局より扇にくだ物を入れておこせたりければ
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