新拾遺和歌集 (Shin Shui wakashu) | ||
10. 新拾遺和歌集卷第十
哀傷歌
人丸
題志らず
日置皇子かくれ給ひける時よみ侍りける
額田王
天智天皇かくれさせ給ひける時詠める
貫之
題志らず
重之
子におくれて歎きける比輔親が許へ申し遣しける
祭主輔親
返し
道命法師
三條院隱れさせ給うける比郭公の鳴きけるに
赤染衛門
題志らず
新少將
田上と言ふ所へまかりける時關山を過ぎ侍りけるに古へ父俊頼朝臣のもとにまかりし事を思ひ出でゝ車をとゞめてやすらひける時よめる
按察使公通
待賢門院隱れさせ給ひける御忌に籠りて九月盡日申し遣しける
堀河
返し
前中納言定家
題志らず
西行法師
鳥羽院隱れさせ給うて御葬送の夜高野より思はざるに參りあひて詠み侍りける
信實朝臣
八條院隱れさせ給ひて後程なく又春花門院失せさせ給ひにけるを鳥羽へ送り奉りけるに詠み侍りける
藤原秀茂
母の終りける面影尚身に添ふ心地し侍りて
近衞關白前左大臣
歎く事侍りける比詠み侍りける
前大僧正公豪
浄土寺入道前太政大臣隱れ侍りて後詠める
如圓法師
信實朝臣みづから影を寫し置きて侍りけるを身まかりて後見侍りてよめる
永陽門院左京大夫
昭慶門院の少將身まかりける時人の許へ申し遣しける
前權僧正圓伊
六條内大臣隱れて後法事いとなみ侍りける時申し遣しける
前中納言有忠
返し
源頼時女
題志らず
達智門院兵衛督
寄夢無常を詠み侍りける
前大僧正慈鎭
無常の歌とて
隆信朝臣
物申しける女の、母の諫によりてつらくのみ有りけるに、かの女身まかりぬと聞きて母の許へ遣しける
かく申し遣したりける返事に此の人のかぎりに侍りける時はらからなりけるものに、我がなからむ折尋ぬる人あらばこれを見せよとて書き置きたる文を遣したりけるに書きたりける歌
これに添へて母の遣したりける
後伏見院御製
伏見院の御忌の比花園院未だ位におはしましけるに紅葉につけて奉らせ給うける
花園院御製
御返し
按察使實繼
陽祿門院隱れさせ給ひて後、人のとぶらひて侍りし返事に
安喜門院大貳
神無月の比法性寺にて母身まかりにける時志ぐれの降りけるに詠める
前大納言雅言
後一條入道前關白隱れ侍りし比雨の降りける日申し遣しける
源邦長朝臣
返し
法眼源承
入道二品親王性助隱れ侍りける又の日雨いと降り侍りしに法眼行濟に遣しける
法眼行濟
返し
境空上人
中園入道前太政大臣隱れ侍りて二尊院にて後のわざし侍りし時あまたのはらからの中にひとり送り侍りし事を思ひて詠める
從三位吉子
同じ所にまかりて思ひつゞけ侍りける
前權僧正玄圓
題志らず
僧正澄經
法印經深
母の思ひに侍りける比詠める
藤原行春
行應法師身まかりて後服脱ぎける時詠み侍りける
權大納言長家
民部卿濟信の女にすみ侍りけるが身まかりて後服ぬぎ侍るとて
大江廣房
父廣茂なくなりて後よめる
鴨長明
旅の歌詠み侍りける中に
壽成門院
前坊隱れさせ給ひし比詠ませ給ひける
藤原俊顯朝臣
春月の歌詠み侍りけるに
西花門院
月あかき夜二條殿にて後二條院の御世の事を思しめし出でゝ
妙宗法師
九月十三夜にをはりをとりける時みづから書きける歌
源高秀
無常の心を
式部卿久明親王
女の身まかりけるをとぶらひて四種の供養し侍りける時枕にかきつけ侍りける
後宇多院宰相典侍
母の思ひに侍りける比おなじ歎きする人の許へ申し遣しける
法印榮運
老の後成運法印が卅三年の佛事いとなみ侍るとて
江侍從
枇杷の皇太后宮隱れさせ給ひて後御帳の内を何となく見入れ侍りければしかせ給ひたりけるあやめの草の侍りけるをみてよめる
權大納言義詮
等持院贈左大臣隱れて後五月五日詠み侍りける
性威法師
又の年三月つごもりの日常在光院にて詠み侍りける
出羽辨
大納言經信服に侍りける又の年申し遣しける
大納言經信
返し
上東門院
後朱雀院隱れさせ給ひて後白河殿にかき籠らせ給ひて月日の行くもしらせ給はざりけるに今日は七月七日と人の申しける事を聞かせ給ひて
廉義公
清愼公隱れて後かのつくりて置きて侍りける住の江のかたを見て詠み侍りける
祝部成仲
子に後れて歎きける比都に侍りけるむすめの許へつかはしける
女
返し
前參議教長
久安の百首の歌に
二品法親王慈道
身まかりて侍りけるわらはの爲に佛事いとなみける人に遣しける
法印實性
歎く事侍りけるを程經てとひける人の返りごとに
己心院前攝政左大臣
題志らず
從二位家隆
雨中無常
少僧都源信
題志らず
頓阿法師
贈從三位爲子身まかり侍りし比蝉のもぬけたるを朝顏の花に付けて前大納言爲定の許に申し遣しける
前大納言爲定
返し
前中納言惟繼
同じ頃願文の草あつらへける書きて遣すとて包み紙にかき侍りける
中納言爲藤
返し
祝部成光
正三位成國身まかり侍りし頃よみ侍りける
中務卿宗尊親王
從一位倫子の思ひに侍りける頃
順徳院御製
後鳥羽院隱れさせ給うて後御惱の程の御文を御覽じて
同じ御歎きの頃月を御覽じてよませ給うける
隆信朝臣
美福門院隱れさせ給ひける御葬送の御供に草津と云ふ所より舟にて漕ぎ出でける曙の空の景色浪の音折から物悲しくてよみ侍りける
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