University of Virginia Library

19. 新後拾遺和歌集卷第十九
神祇歌

後九條前内大臣

弘長の百首の歌奉りける時、神祇

世の爲に立てし内外の宮柱たかき神路のやまはうごかじ

等持院贈左大臣

貞和の百首の歌に

身を祈る人よりも猶男山すなほなるをぞまもるとは聞く

源家長朝臣

石清水の社の歌合に

八幡山神やきりけむ鳩の杖老いてさかゆく道のためとて

攝政太政大臣

百首の歌奉りし時

春日山さか行く神の惠もて千世ともさゝじみねの松が枝

中臣延朝

題志らず

仕へこし跡をぞ頼む三笠山流石に神の捨てじとおもへば

後西園寺入道前太政大臣

ひとすぢに世を長かれと祈るかな頼む三笠の杜の志め繩

前中納言定家

建暦二年十二月、和歌所の廿首の歌に

跡垂れて誓ひを仰ぐ神も皆身のことわりに頼みかねつゝ

中務卿宗尊親王

文永二年二月二所に詣でける時伊豆のみ山に奉りける三十首の歌の中に

神も又捨てぬ道とは頼めども哀れ知るべき言の葉ぞ無き

信實朝臣

社頭述懷を

老の波猶志ば/\もありと見ばあはれを懸けよ玉津島姫

前大僧正光濟

新玉津島の社の歌合に、神祇

玉津島たむくるからに言の葉の露に磨く色や見ゆらむ

荒木田經直

題志らず

五十鈴河瀬々の岩波かけまくも畏き御代となほ祈るかな

左大臣

百首の歌奉りし時、神祇

頼むかな我がみなもとの石清水ながれの末を神に任せて

恒助法親王

題志らず

さのみなど濁る心ぞ石清水さこそ流れのかずならずとも

源顯氏朝臣

よしさらば神に任せて石清水澄める心を手むけにもせむ

祝部成繁

仕ふべき身とて捨て得ぬ理を流石哀れとかみや見るらむ

權少僧都慶有

梅宮の立柱の日詠める

更に今花咲く梅のみや柱立てゝぞ千世のさかりをも見む

賀茂脩久

題志らず

雲分けし神代は知らず今も猶かげみたらしに宿る月かな

正二位隆教

嘉元の百首の歌奉りける時

忘れずよみたらし河の深き江になれて影見し山あゐの袖

法眼玄全

神祇の歌に

辛崎や小波ながら寄る船を神代にかへすまつかぜぞ吹く

津守國冬

神垣の松も榊も常磐なるためしかさねて世をいのるかな

法眼禪嚴

題志らず

神垣や一夜の松のみしめ繩千とせをかけて世を祈るかな

度會朝勝

御禊する豐宮河の志き波の數よりきみをなほいのるかな


津守國平

沖つ風濱松が枝にかけてけりたむけがほなる浪の白木綿

權中納言爲重

百首の歌奉りし時、神祇

あらはれし元の潮路は知らねどもいま住吉も浦風ぞ吹く

津守國量

たちばなの小戸の潮瀬にあらはれて昔舊りにし神ぞ此神

藤原敏行朝臣

題志らず

住吉の松の村だち幾かへりなみにむかしの花咲きぬらむ