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新後拾遺和歌集卷第十四 戀歌四
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14. 新後拾遺和歌集卷第十四
戀歌四

西園寺入道前太政大臣

洞院攝政の家の百首の歌に

曇るさへ嬉しと見えし大空の暮るゝもつらく何時なりに劍

讀人志らず

題志らず

言の葉もかき絶えぬればつらかりし空頼めさへ戀しかり鳬

爲冬朝臣

元亨三年三月盡、後醍醐院に三首の歌講ぜられける時、契戀

僞と思はゞ猶も如何ならむ頼むにだにもかはるちぎりを

前大納言爲定

契變戀

契りしも頼まぬ物を今更に變るこゝろの如何で見ゆらむ

後勸修寺前内大臣

貞和二年、百首の歌に

逢ふまでを限る命と思ひしは行くすゑしらぬ心なりけり

讀人志らず

題志らず

來る人もあらじ今はの山かづら曉かけてなにと待つらむ

津守國助

寄帆戀

頼まじなことうら風に行く舟の片帆ばかりにかゝる契は

讀人志らず

題志らず

寄る方と頼むもよその中なれやこと浦舟のすゑの潮かぜ

太上天皇

百首の歌召されし時、絶戀

こと浦に心をかけしかた帆より跡まで知らぬ中のはや舟

讀人志らず

煩ひて久しうこざりける男の許よりさうぶの實を遣して身のなり行くさまを見せばやと云へりける返りごとにむすめに代りて

永からぬうきねと見れば菖蒲草我ぞ物思ふ身とはなりぬる

中納言朝忠

語らふ女の音せぬに

今年生ひの竹の一夜も隔つれば覺束なくもなり増るかな

太上天皇

をのこども題を探りて卅首の歌仕うまつりける時變戀と言へる事を詠ませ給ひける

頼めこし淺茅が末に秋暮れて今はのつゆを袖にかけつゝ

讀人志らず

思ひやみにたる事を傳ふる人の許より

嵐吹く外山の紅葉冬來れば今はことの葉絶え果てぬらむ

前大納言公任

とありければ

遠近の嶺のあらしに言とはむいづれの方か色はかはると

從二位嚴子

題志らず

今こむと契りしなみも早越えぬうき僞のすゑのまつやま

津守國助

變戀

越えぬなり末の松山すゑ遂にかねて思ひし人のあだなみ

崇賢門院

百首の歌奉りし時、絶戀

逢ふ事は遠山鳥のおのづから影見し中もへだて果てつゝ

定顯法師

戀の歌に

果は又ゆくへも知らぬ村鳥の立つ名ばかりを何歎きけむ

太宰大貳重家

逢不會戀

御狩野のつかれになづむ箸鷹のこゐにも更に歸りぬる哉

大江宗秀

題志らず

つらかりし鳥の音計り形見にて我が逢坂は隔て果てゝき

宜秋門院丹波

千五百番歌合に

中々に越えてぞ迷ふ逢坂の關のあなたやこひ路なるらむ

權大納言宗實

題志らず

立ち歸り越ゆべき物と思ひきや絶えにし中のあふ坂の關

源頼之朝臣

寄關戀と云へる事を

通ふとも人は知らでや宵々に心のせきのさはり果つらむ

侍從爲敦

百首の歌奉りし時、遇不逢戀

關守の打ちぬる程と待ちし夜も今は隔つる中のかよひ路

前大納言爲家

同じ心を

今は早十市の池のみくり繩來る夜も知らぬ人に戀ひつゝ

秀胤法師

題志らず

小山田の引板のかけ繩絶えしより驚かすべき便だになし

藤原行詮

今は早よそにみつのゝこも枕假寐の後はゆめだにもなし

三善頼秀

面影を忘れもやらぬこゝろこそ人の殘さぬ形見なりけれ

兵部卿隆親

寶治の百首の歌奉りける時、寄橋戀

舊りにける長柄の橋の跡よりも猶絶えぬべき戀の道かな

藤原長秀

同じ心を

片糸のをだえの橋や我が中にかけしばかりの契なるらむ

平貞秀

寄水戀と云ふ事を

さもこそは淺き契のすゑならめやがて瀬絶えし中河の水

前中納言爲忠

貞和二年、百首の歌に

如何にせむ憂き中河の淺き瀬に結ぶとすれば絶ゆる契を

讀人志らず

題志らず

中川の淺き契のすゑかけて猶も逢ふ瀬をたのむはかなさ

衣笠前内大臣

思ひ出づや荒磯なみのうつせ貝われても逢ひし昔語りは

津守國量

權中納言爲重の家にて三首の歌詠ませ侍りしに、絶不逢戀を

我が中は身を宇治橋と舊りしよりいざよふ波を懸けて戀ひつゝ

宗祐法師

題志らず

よそにのみ鳴海の海の沖つ浪立ち歸りてもしたふ頃かな

讀人志らず

人目もる山下くゞる水莖のかき絶えぬるか音づれもせぬ

參議雅經

み草のみ茂る板井の忘れ水汲まねば人のかげをだに見ず

權中納言爲重

思ひ出でよ野中の水の草隱れもとすむ程の影は見ずとも

前大納言宗明

結び置くもとの契の面影も見えぬ野中のみづからぞ憂き

前大納言爲家

かき遣りし山井の清水更に又絶えての後の影を戀ひつゝ

寶篋院贈左大臣

延文の百首の歌に、寄枕戀

敷妙の枕にかゝる涙かな如何なるゆめの名ごりなるらむ

入道二品親王尊道

同じく奉りける百首の歌に、寄衣戀

須磨の蜑の潮垂衣朽ちぬ間や間遠ながらも重ねきつらむ

左兵衛督基氏

寄虫戀を詠める

枯れ果つる人の契は淺茅生になほ松虫の音こそなかるれ

宗覺法師

題志らず

白菊の移ろひ果つる契ゆゑ濡れて干す間も無きたもと哉

大納言通具

さても猶えやはいぶきの下草の跡なき霜に思ひ消えなむ

寶篋院贈左大臣

延文の百首の歌に、寄風戀

吹く風に嶺越えて行くうき雲の如何に跡なき契なるらむ

安嘉門院高倉

題志らず

言の葉のかゝる方なくなりぬれば僞さへぞ今はこひしき

後岡屋前關白左大臣

貞和二年百首の歌奉りけるに

遠ざかる人の心に任せなば見し面かげも身をやはなれむ

太宰權帥仲光

永徳元年六月十二日内裏にて三十首の歌講ぜられけるに、違約戀と云ふ事を

遂にさて障り果てぬる人目こそつらきかごとの契なりけれ

祝部行親

會不逢戀

昔ともおもひなされぬ面影におなじ世つらき身の契かな

權律師實藏

題志らず

面影の殘るかたみもかひぞ無き見し夜の夢の契ならねば

中宮大夫公宗母

文保の百首の歌に

自ら思出でゝも訪はれぬは同じ世になき身とや知るらむ

大中臣行廣朝臣女

戀の歌とて

今はたゞ思ひ絶えねと月日さへ隔つる中を何したふらむ

後二條院御製

忍絶戀を

志ばしこそ人目思ひし宵々の忍ぶ方より絶えや果つべき

今出河院近衞

題志らず

同じ世に何慕ふらむ有明の面かげばかりさらぬわかれを

源氏經朝臣

廻り逢ふ月こそひとの形見とも涙曇らで見る夜はぞ無き

伴周清

よしさらば涙いとはで袖の月曇るをだにも形見とや見む

前關白左大臣

百首の歌奉りし時、遇不逢戀

今はまたありしその夜の面影もつらき形見に月ぞ殘れる

源頼遠

題志らず

忘れては見し夜の影ぞ忍ばるゝ憂き習はしの有明のつき

源親長朝臣

そのまゝに頓て別れの形見とも知らでぞ見つる有明の月

後二條院御製

忘らるゝ身をこそ月に喞ちつれ人をうらみぬ心よわさに

正二位隆教

嘉元の百首の歌奉りけるに

あだ人の形見顏なる影も憂し見し世に變る山の端のつき

西園寺入道前太政大臣

題志らず

待つとせしならひばかりの夕暮に面影のこる山の端の月

左衛門督資康

三十首の歌講ぜられける時、寄鏡戀

面影は殘るともなき眞澄鏡曇るなみだもよしやいとはじ

法印守遍

題志らず

つらしともたれをかこたむ眞澄鏡曇るも人の泪ならねば

前大納言爲家

人はいさ鏡に見ゆる影をだにうつる方には頼みやはする

攝政太政大臣

延文の百首の歌に、寄鏡戀

何時よりか鏡に見ゆる影をさへ向ふ泪にへだて果てけむ

讀人志らず

題志らず

月日のみうつるにつけて眞澄鏡見し面影は遠ざかりつゝ

前大納言爲氏

寶治の百首の歌奉りける時

眞澄かゞみ何面影の殘るらむつらき心はうつりはてにき