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新後拾遺和歌集卷第十八 釋教歌
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18. 新後拾遺和歌集卷第十八
釋教歌

皇太后宮大夫俊成

花嚴經の高山頓説の心を

朝日さす高嶺の雲は匂へども麓の人は知らずぞ有りける

中務卿宗尊親王

同じ心を詠める

いづくにも春は來ぬれど朝日さす高嶺よりこそ雪は消ゆらめ

入道贈一品親王尊圓

方便品、唯有一乘法無二亦無三と云ふ心を

春は唯花をぞ思ふ二つ無く三つ無き物はこゝろなりけり

源空上人

釋教の歌とて詠みける

我れは唯佛に何時かあふひ草心のつまにかけぬ間ぞ無き

後嵯峨院御製

法華經序品、以是知今佛欲説法花經

法の花今も古枝に咲きぬとはもと見し人や思ひ出づらむ

寂然法師

妙音品

隈もなき月の光にさそはれて鷲の深山をさして來にけり

成尋法師母

夜ふけて月の入るを見てよめる

山の端に出で入る月も廻りては心の内に住むとこそ聞け

法眼源承

寶塔品

苔の庭を玉の砌に敷きかへてひかりを分つ峯のつきかげ

讀人志らず

題志らず

今ぞ知る誠の道に雲晴れて西をたのめばありあけのつき

慶政上人

梵網經、名聞強健努力脩善の心を

我れ斯くて山の端近く成る儘に過ぎし月日の數ぞ悲しき

前大僧正頼仲

化城喩品の心を

浮かれたる我身よ如何で故郷に旅と思はで住み定むべき

讀人志らず

題志らず

身を分けし教しなくば垂乳根の浮き世の闇を猶や歎かむ

津守國夏

唯識論を

とも斯も心こそなせ同じくば我とさとりを爭で知らまし

覺深法師

題志らず

皆人のこゝろの月の晴れやらで迷ふ後瀬の山の端のくも

頓阿法師

心經の不増不滅を

變らじな空しき空の夕月夜又ありあけにうつり行くとも

夢窓國師

釋教の歌とて

雲よりも高き所に出でゝ見よ志ばしも月に隔てやは有る

後京極攝政前太政大臣

舍利講

願はくは心の月をあらはして鷲のみ山にあとをてらさむ

信生法師

觀無量壽經の徳益分を

隔てこし世々の浮雲今日消えて昔まだ見ぬ月を見るかな

示證上人

想於西方を

入る月の名殘を添へて志たふかな峰より西の雲のをち方

權律師幸圓

華嚴經の心を詠み侍りける

うへもなく頼む日吉の影なれば高き峯とやまづ照すらむ

入道二品親王尊道

百日入堂の爲に比叡山の無動寺に登りて詠み侍りける

閼伽むすぶ跡をば殘せながらなる山の下水苔ふかくとも

前大僧正道玄

題志らず

誰れに又問はゞ答へむ我が山の法の流れの深きこゝろを

願蓮法師

濁ある水にも月は宿るぞと思へばやがて澄むこゝろかな

賢珠上人

濁る世の人の心をそのまゝに捨てぬ誓ひを頼むばかりぞ

讀人志らず

人なみに法の流れを傳へても水のこゝろやなほ濁るらむ

前大納言爲家

觀經釋文、釋迦此方發遺彌陀即彼國來迎

船よばふ聲にむかふる渡し守浮世の岸に誰れかとまらむ

前大納言基良

囑累品、今以付囑汝等の心を戀に寄せて詠み侍りける

忍べとて書きおく浦の藻鹽草長らへてだに形見ともなれ

法眼源承

涌出品、父少而子老

年經れど松のみどりは變らぬに霜をいたゞくかけの下草

寂然法師

十戒授くるを聞きて詠める

先の世の報と聞けど身の憂さに思ひこるべき心地こそせね

入道贈一品親王尊圓

囑累品、令一切衆生普得聞知を

みな人のうき世の夢もさむばかり遥に響けあかつきの鐘

權中納言爲重

前大納言爲定の十三年の佛事に一品經すゝめ侍りしに、五百弟子品の心を

夢よ待つよはの衣のうらなれば現に知らぬ玉も見てまし

重阿上人

題志らず

心をぞ猶磨くべき墨染のころものうらのたまは見ずとも

赤染衛門

涅槃經説くを聞きて

今はとて説きける法の悲しきは今日別れぬる心地こそすれ

如月法師

題志らず

法の道入るべき門は變れども遂には同じさとりとぞ聞く

花園院御製

此方何足厭一聚虚空塵

厭ふとも惜むともなり假初の浮世に宿る我が身と思へば