University of Virginia Library

紫の里近きあたり、とある門に炭團程なる黒き巣鳥をとりて、籠伏せして有けるに、 其夜親鳥らしく、夜すがら其家の上に鳴ける哀さに

子を思ふ闇やかはゆい/\と 聲を鳥の鳴あかすらん 一茶

盗人おのが古郷に隱れて縛れしに

業の鳥罠を巡るやむら時雨

御成り場所に、鳥どもの餌蒔をしたふ不便さに

人眤き鶴よどちらに箭があたる
箭の下に母の乳を呑む鹿子かな 立志

さすがのさつ男も髻切りしは斯る折になんありける。