University of Virginia Library

惟然坊は元禄の一畸人にして、一茶坊は今世の一奇人なり。そが發句のをかしみは、 人々の口碑に殘りて、世のかたり草になるといへども、たゞに俳諧の皮肉にして此坊 が本旨にはあらざるべし、中野のさと一之が家に秘めおける一巻物や、ざれ言に淋し みをふくみ、可笑みにあはれを盡して、人情世態無常觀想殘す處なし、もし百六十年 のむかしに在て祖翁の過眼を得むには、惟然の兄とやのたまはんか、弟とや申し玉は むか

惺庵西馬