University of Virginia Library

男にきらはれて親のもとに住みけるに、おのが子の初節句見たくも晝は人目茂ければ

去られたる門を夜見る幟かな よみ女しらず

子を思ふ實情さもと聞へて哀なり。猛きものゝふの心を和らぐるとはかゝる眞心をい ふなるべし。いかなる鬼男なりとも、風の便りにもきゝなば、いかでかふたゝび呼び 歸さざらめや。

所有畜類是レ世々ノ親族ナリとなん、親をしたひ子を慈む情、何ぞへだてのあるべき や。

人の親の鳥追けり雀の子 鬼貫
夏山や子にあらはれて鹿の鳴 五明
負て出て子にも鳴かする蛙哉 東陽
鹿の親笹吹く風にもどりけり 一茶
小夜しぐれなくは子のない鹿にがな
子をかくす藪の廻りや鳴雲雀