後拾遺和歌集 (Goshui wakashu [Introduction]) | ||
15. 後拾遺和歌集第十五
雜一
善滋爲政朝臣
題志らず
宇治忠信女
藤原爲時
源師賢朝臣
船中月といふ心をよみ侍りける
良暹法師
池上月をよめる
大藏卿長房
後冷泉院の御時きさいの宮にて月をよみ侍りける
源頼家朝臣
連夜に月を見るといふ心をよみ侍りける
懷圓法師
月のいと面白う侍りける夜きし方行末もありがたき事など思うたまへてうちより輔親が六條の家に罷れりけるに夜更けにければ人もあらじと思ひ給ひけるにすみあらしたる家のつまに出でゐて前なる池に月のうつりて侍りけるをながめてなむ侍りける。おなじ心にもなどいひてよみ侍りける
永胤法師
中納言泰憲近江守にはべりける時三井寺にて歌合し侍りけるに月をよみ侍りける
江侍從
永承四年内裏の歌合に月をよめる
堀川右大臣
麗景殿の女御の家の歌合に
加賀左衛門
題志らず
永源法師
依月客來といふ心をよめる
後冷泉院御製
賀陽院におはしましける時石たて瀧落しなど志て御覽じける頃九月十三夜になりければ
彈正尹清仁親王
月夜中納言定頼が許に遣はしける
中納言定頼
その夜かへしはなくて二三日ばかり有りて雨の降りける日みこの許につかはしける
藤原範永朝臣
人の許よりこよひの月はいかゞといひたるかへりごとにつかはしける
賀茂成助
おほやけの御かしこまりにて侍りける頃賀茂のやしろによる/\まゐりていのり申しけるに月のおもしろく侍りければ
齋院中務
くらまより出で侍りける人の月のいとをかしかりければくらまの山もかくこそはなど思ひいでけるをきゝて
齋院中將
かへし
清原元輔
月のあかく侍りける夜小一條のおほいまうち君むかしをこふる心よみ侍りけるに詠める
藤原實綱朝臣
月の前に思ひをのぶといふ心をよみ侍りける
源師光
さきのくら人にて侍りける時對月懷舊といふこゝろを人々よみ侍りけるに
民部卿長家
齋信の民部卿のむすめにすみわたり侍りけるにかの女身まかりにければ法住寺といふ所にこもりゐて侍りけるに月を見て
江侍從
兼房の朝臣月いでばむかへにこむとたのめておとせざりければよみ侍りける
源爲善朝臣
思ふ事有りける頃山寺に月を見てよみ侍りける
聖梵法師
山にすみわづらひて奈良にまかりて住み侍りけるに志りたる人もなく又みし世のすみかにも似ざりければ月の面白く侍りけるを眺めてよめる
赤染衛門
中關白少將に侍りける時内の御ものいみにこもるとて月のいらぬさきにといそぎ出で侍りければつとめて女にかはりてつかはしける
三條院御製
例ならずおはしまして位などさらむと覺しめしける頃月の
を御覽じて陽明門院
後朱雀院の御時月のあかゝりける夜うへにのぼらせ給ひていかなる事かまうさせ給ひけむ
小辨
こむといひつゝこざりける人の許に月のあかゝりければつかはしける
小式部
かへし
讀人志らず
月あかく侍りける夜はじとみに女共の立ちて侍りけるを男まゐらむなどいひいれよとて侍りければよめる
藤原隆方朝臣
こよひ必と頼めたる女の許に月あかゝりける夜まかりて侍りけるにおろしこめて女あひ侍らざりければ歸りて又の日つかはしける
僧正深覺
月の山のはに入らむとするを見てよみ侍りける
藤原範永朝臣
侍從の尼ひろ澤にこもるときゝてつかはしける
中原長國妻
月を見てよみ侍りける
大納言道綱母
入道攝政物語などして寢待の月の出づる程にとまりぬべき事などいひたらばとまらむといひ侍りければよみ侍りける
月の朧なりける夜入道攝政まうで來て物語し侍りけるにたのもしげなき事などいひはべりければよめる
齋宮女御
村上の御時うへにのぼりて侍りけるにうへ御とのごもりにければ歸り下りてよみ侍りける
曾禰好忠
題志らず
小式部
六條前齋院に歌合あらむとしけるにみぎに心よせありと聞きて小辨が許に遣はしける
小辨
かへし
五月五日六條前齋院に物語合せ志侍りけるに小辨遲くいだすとてかたの人々とめてつぎの物語を出し侍りければ宇治の前太政大臣、かの小辨が物語はみどころなどやあらむとてこと物語をとゞめてまち侍りければ岩がきぬまといふ物語を出すとてよみ侍りける
馬内侍
はゝきの國に侍りけるはらからの音し侍らざりければたよりにつけて遣しける
讀人志らず
煩ふ人の道命をよび侍りけるにまからで又の日いかゞと訪らひに遣はしたりける返事に
中務典侍
わづらひて山里に侍りける頃人のとひて侍りけれど又おともせずなりにければ
齋宮女御
馬のないしが許に遣はしける
相模
ある人のむすめをかたらひつきて久しくおとし侍らざりければ
男の許より、けはひのかはりたるはいかに今はまかるまじきかといひおこせて侍りければ
讀人志らず
忍ぶ事ある女に中納言兼頼忍びて通ふと聞きてをとこ絶え侍りにけり。中納言さへ又かれ%\になり侍りにければ女のよめる
大江匡衡朝臣
赤染、右大臣道綱に名たち侍りけるころつかはしける
源雅通朝臣女
定輔の朝臣かれ%\になりてほかに心など有りければ時々は引きとゞめよといふ人侍りければ
道命法師
熊野へ參るとて人の許にいひつかはしける
思はむとたのめたりける人のさもあらぬけしきなりければよみ侍りける
久しくおとづれぬ人のもとに
周防内侍
後冷泉院うせ給ひて世の憂き事など思ひ亂れて籠りゐて侍りけるに
位につかせ給ひて後七月七日參るべき由仰せ事侍りければよめる小大君
源頼光の朝臣女におくれて侍りけるころ霜のおきたるあしたにつかはしける
清原元輔
大貳國章妻なく成りて秋風の夜寒なるよしたよりにつけていひおこせて侍りける返事につかはしける
忠務卿具平親王
春頃爲頼長任など相共に歌よみ侍りけるにけふの事をば忘るなといひわたりて後爲頼の朝臣身まかりて又の年の春長任が許に遣はしける
祭主輔親
能宣身まかりて後四十九日の内にかうぶり給はりて侍りけるに大江匡衡が許より其由いひおこせて侍りける返事にいひつかはしける
能因法師
陸奥にまかり下りけるに志のぶの郡といふ所にはやうみし人を尋ねければその人なくなりにけりと聞きて
大納言道綱朝臣
母におくれ侍りて又の年のわざなど過ぎてつれづれに侍りける夕暮に塵積りたる琴などおしのごひてひくとはなけれど今は程など過ぎにければをり/\ならしけるををばなりける人のあひすみける方より、ことの音きけば物ぞかなしきなどいひおこせて侍りける返事によめる
源經隆朝臣
母に後れて侍りける頃兄弟のかた%\にとぶらひの人々まで來けれどわが方にはおとづるゝ人も侍らざりければ
少將井尼
物思ひける頃時雨いたく降り侍りけるあしたこよひの時雨はなど人のおとづれて侍りければよめる
後朱雀院御製
故中宮うせ給ひての又の年の七月七日宇治前太政大臣の許につかはしける
小左近
後朱雀院うせ給ひてうち續き世のはかなき事ども侍りける頃花の面白く侍りければ
辨乳母
故皇太后宮うせ給ひて明くる年その宮の櫻の花面白く咲きたりけるに人々いと口惜くなどいひければ
小辨
世中はかなくて右大將道房かくれ侍りぬときゝて
齋宮女御
たゞにもあらで里にまかり出で侍りけるに十月ばかりほどちかうなりてうちより御とぶらひありける返事にたてまつり侍りける
藤原範永朝臣
後朱雀院うせさせ給ひて上東門院白河にわたり給ひて嵐のいたく吹きけるつとめてかの院に侍りける侍從の内侍の許につかはしける
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