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後拾遺和歌集第十四 戀四
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
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14. 後拾遺和歌集第十四
戀四

清原元輔

心變り侍りける女に、人に代りて

契りきなかたみに袖をしぼりつゝ末の松山浪こさじとは

公圓法師母

中納言定頼が許に遣はしける

芦のねのうき身の程としりぬれば恨みぬ袖も波は立ち鳬

道命法師

年頃あはぬ人にあひて後につかはしける

逢見しを嬉しき事と思ひしはかへりて後のなげきなり鳬

藤原元眞

題志らず

み山木のこりや志ぬらむと思ふまにいとゞ思の燃増る哉

惠慶法師

岩代の杜のいはじと思へども雫に濡るゝ身をいかにせむ

曾禰好忠

味氣なし我身に増る物やあると戀せし人をもどきし物を

和泉式部

我といかに強面くなりて心みむつらき人こそ忘れ難けれ

相模

忍びて物思ひける頃によめる

怪しくも顯れぬべき袂かな忍びねにのみぬらすと思へど

西宮前左大臣

打忍びなくとせしかど君こふる涙は色にいでにけるかな

辨乳母

承暦二年内裏の歌合によめる

戀すとも涙の色のなかりせば暫しは人に志られざらまし

源道濟

題志らず

人志れぬ戀にし志なば大方の世のはかなさと人や思はむ

堀川右大臣

忍びたる女に

人志れず顏には袖を覆ひつゝ泣くばかりをぞ慰めにする

藤原國房

冬の夜の戀をよめる

おもひわびかへす衣の袂よりちるや涙のこほりなるらむ

清原元輔

題志らず

慰むる心はなくて夜もすがらかへす衣のうらぞぬれける

讀人志らず

世中にあらばぞ人のつらからむと思ふにしもぞ物は悲き

道命法師

夜な/\はめのみさめつゝ思遣る心やゆきて驚かすらむ

平兼盛

思ふてふ事はいはでも思ひ鳬つらきも今はつらしと思はじ

中原頼成妻

男の絶えて侍りけるに程へて遣しける

思ひやるかたなきまゝにわすれ行く人の心ぞ羨まれける

能因法師

題志らず

閨ちかき梅の匂に朝な/\あやしくこひのまさる頃かな

相模

危しとみゆるとだえのまろ橋のまろなど斯る物思ふらむ

和泉式部

世中に戀てふ色はなけれ共深く身にしむ物にぞありける

清原元輔

あり所しらぬ女に

笹蟹のいづくに人はありとだに心細くも志らでふるかな

大貳三位

堀川の右大臣の許に遣しける

戀しさのうきにまぎるゝ物ならば又二度と君を見ましや

藤原有親

題志らず

あればこそ人もつらけれ怪しきは命もがなと頼む也けり

源道濟

露おきたる萩にさして女の許につかはしける

庭の面の萩の上にてしりぬらむもの思ふ人の夜はの袂は

相模

題志らず

我袖を秋の草葉にくらべばや何れか露のおきはまさると

荒磯海の濱の眞砂をみなもがな獨ぬる夜の數にとるべく

藤原長能

數ふれば空なる星もしる物を何をつらさの數にとらまし

藤原道信朝臣

二月ばかりに女の許に遣しける

徒然と思へばながき春の日に頼む事とはながめをぞする

和泉式部

五月五日に人の許に遣はしける

只管に軒の菖蒲のつく%\と思へばねのみかゝる袖かな

題志らず

類なく憂き身也けり思知る人だにあらばとひこそはせめ

君こふる心はちゞに碎くれど一もうせぬ物にぞありける

泪川おなじ身よりは流るれど戀をばけたぬ物にぞ有ける

小辨

我戀は益田の池のうきぬなは苦しくてのみ年をふるかな

源道濟

大方にふるとぞみえし
[_]
[1]梅雨は
物思ふ袖の名に社ありけれ

[_]
[1] Shinpen kokka taikan (Tokyo: Kadokawa Shoten, 1983, vol. 1; hereafter cited as SKT) reads さみだれは.

西宮前左大臣

よそにふる人は雨とや思ふらむわがめにちかき袖の雫を

日にそへて憂事のみも増る哉暮ては頓て明けずもあらなむ

藤原元眞

天徳四年内裏の歌合によめる

君こふと且は消つゝ程ふるを斯てもいける身とや見る覽

題志らず

戀しさの忘られぬべき物ならば何にかいける身をも恨みむ

大和宣旨

中納言定頼が許に遣はしける

戀しさを忍びもあへず空蝉のうつし心もなくなりにけり

民部卿經信

小辨が許につかはしける

君が爲おつる涙の玉ならばつらぬきかけてみせまし物を

西宮前左大臣

題志らず

契あらば思ふがごとぞ思はましあやしや何の報なるらむ

けふしなばあす迄物は思はじと思ふにだにも叶はぬぞうき

入道攝政

女につかはしける

思ひには露の命ぞきえぬべき言の葉にだにかけよかし君

相模

題志らず

やくとのみ枕の下にしほたれて烟たえせぬとこの浦かな

永承六年内裏の歌合に

恨み侘びほさぬ袖だにある物を戀に朽なむ名社惜しけれ

題志らず

神な月夜はの時雨にことよせて片しく袖をほしぞわづらふ

和泉式部

さま%\に思ふ心はあるものをおし只菅にぬるゝ袖かな

藤原長能

わが心かはらむ物か瓦屋の下たくけぶりわきかへりつゝ

藤原範永朝臣女

かれ/\になり侍りける男に詠める

打はへてくぶるも苦しいかで猶世にすみ竈の烟絶ゆらむ

和泉式部

題志らず

人の身も戀にはかへつ夏虫のあらはに燃ゆとみえぬ計ぞ

苅藻かき臥猪の床のいを安みさ社ねざらめ斯らずもがな

入道攝政

女の許につかはしける

我戀は春の山べにつけてしをもえても君が目にもみえなむ

大納言道綱母

かへし

春の野につくる思の數多あれば孰を君が燃ゆるとか見む

入道攝政

おなじ女に

春日野は名のみ也鳬我身こそ飛ぶ火ならねど燃渡りけれ

相模

永承四年内裏の歌合によめる

いつとなく心空なるわが戀やふじの高嶺にかゝる志ら雲

堀川右大臣

うしとても更に思ぞ返されぬ戀は裏なき物にぞありける

平兼盛

つらかりける女に

難波がた汀のあしのおいのよに恨みてぞふるひとの心を

源重之

題志らず

松島や小島の磯にあさりせしあまの袖社かくはぬれしか

盛少將

限ぞと思ふにつきぬ涙かなおさふる袖もくちぬばかりに

藤原長能

雨のふり侍りける夜女に

掻暮らし雲まもみえぬ
[_]
[2]梅雨は
たえず物思ふ我身なりけり

[_]
[2] SKT reads さみだれは.

相模

題志らず

涙こそ近江の海と成りにけれ見るめなしてふ詠せしまに

和泉式部

露ばかり逢ひそめたる男の許につかはしける

白露もゆめもこの世も幻もたとへていはゞ久しかりけり