University of Virginia Library

Search this document 

 0. 
expand section1. 
expand section2. 
expand section3. 
expand section4. 
expand section5. 
expand section6. 
expand section7. 
expand section8. 
expand section9. 
expand section10. 
expand section11. 
collapse section12. 
後拾遺和歌集第十二 戀二
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
expand section13. 
expand section14. 
expand section15. 
expand section16. 
expand section17. 
expand section18. 
expand section19. 
expand section20. 

12. 後拾遺和歌集第十二
戀二

祭主輔親

女にあひて又の日遣はしける

程もなくこふる心は何なれや志らでだに社年はへにしか

源頼綱朝臣

實範の朝臣のむすめのもとに通ひそめてあしたにつかはしける

古の人さへ今朝はつらき哉明くればなどか歸り初めけむ

永源法師

惟任の朝臣にかはりてよめる

夜をこめてかへる空こそなかりけれ羨ましきは有明の月

藤原隆方朝臣

平行親の朝臣のむすめのもとにまかりそめて又のあしたによめる

くるゝまは千歳を過す心地してまつは誠に
[_]
[1]久しかりかり

[_]
[1] Shinpen kokka taikan (Tokyo: Kadokawa Shonten, 1983, vol. 1) reads 久しかりけり.

源定季

題志らず

けふよりはとく呉竹のふし毎によは長かれと思ほゆる哉

少將藤原義孝

女の許より歸りて遣はしける

君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひける哉

伊勢大輔

人の許に通ふ人に代りて遣しける

けふくるゝ程待つだにも久しきに爭で心を懸てすぎけむ

藤原道信朝臣

女のもとより雪ふり侍りける日かへりてつかはしける

歸るさの道やは變るかはらねど解くるに惑ふ今朝の沫雪

明けぬればくるゝ物とは志り乍猶恨めしき朝ぼらけかな

ある人の許にとまりて侍りけるにひるはさらに見ぐるしとていで侍らざりければよめる

ちかの浦に浪寄せ懸くる心地して干るま無ても暮しつる哉

永源法師

題志らず

逢見ての後こそ戀はまさりけれつれなき人を今は怨みじ

西宮前左大臣

女につかはしける

現にてゆめばかりなるあふことを現ばかりの夢になさばや

藤原道信朝臣

題志らず

たまさかにゆき逢坂の關守は夜を通さぬぞ侘しかりける

清原元輔

知る人もなくてやみぬる逢事をいかで涙の袖にもるらむ

相模

男のまてといひおこせて侍りける返事によみ侍りける

頼むるを頼むべきには非ね共待つとは無て待れもやせむ

時々物いふ男くれゆく計りといひて侍りければよめる

詠めつゝ事ありがほに暮しても必夢にみえばこそあらめ

赤染衛門

なかの關白少將に侍りける時はらからなる人に物いひわたり侍りけり。たのめてこざりけるつとめて女にかはりてよめる

息らはでねなまし物をさ夜更けて傾ぶく迄の月を見し哉

和泉式部

人のたのめてこず侍りければつとめてつかはしける

おき乍明しつるかなともねせぬ鴨の上毛の霜ならなくに

大輔命婦

越前守景理夕さり來むといひて音せざりければよめる

夕霧を淺茅が上とみしものを袖におきても明しつるかな

藤原隆經朝臣

女のもとにつかはしける

如何にせむなあ生憎の春の日や夜半の景色の斯らましかば

童木

かへし

うば玉の夜半の景色はさもあらばあれ人の心を春日共がな

源重之

題志らず

淀野へとみ秣山に行く人も暮にはたゞにかへるものかは

源師賢朝臣

女の許にまかりけるにかくれてあはざりければかへりてつかはしける

歸りしは我身一つと思ひしを涙さへこそとまらざりけれ

讀人志らず

左大將朝光女の許に罷れりけるに、なやまし、歸りねといひ侍りければかへりてのあした女の許よりつかはしける

天雲のかへるばかりのむら雨に所せきまでぬれし袖かな

一宮紀伊

ものいひ侍りける男のひるはかよひつゝ夜とまらざりければよめる

我戀は天の原なる月なれやくるれば出づる影をのみ見る

讀人志らず

大貳高遠物いひ侍りける女の家の傍に又忍びて物いふ女の家侍りけり。かどのまへより忍びて渡り侍りけるをいかでか聞きけむ、女の許より遣はしける

過ぎてゆく月をも何に怨むべきまづ我身こそ哀なりけれ

大貳高遠

かへし

杉立てる門ならませば訪てまし心の待つは如何志るべき

和泉式部

題志らず

津國のこやとも人をいふべきに隙こそなけれ芦の八重葺

高階章行朝臣女

兼仲の朝臣のすみ侍りける時忍びたる人かず/\にあふ事難く侍りければよめる

人めのみ繁きみ山の青つゞらくるしき世をも思侘びぬる

讀人志らず

題志らず

こぬもうくくるも苦しき青葛籠いかなる方に思絶えなむ

讀人志らず

人の娘の親にも志らせで物いふ人侍りけるを親きゝつけていひ侍りければ男まうできたりけれど歸りにけりときゝて女にかはりて遣はしける

志るらめや身こそ人めを憚りの關に涙はとまらざりけり

相模

忍びて物思ひ侍りける頃色にや志るかりけむ、打とけたる人、などか物むづかしげにといひ侍りければ心の内になむ思ひける

諸共にいつかとくべきあふ事のかた結びなる夜はの下紐

赤染衞門

物いひわたる男のふちは瀬になどいヘりける返事によめる

淵やさは瀬にはなりける飛鳥川淺きを深くなす世也せば

讀人志らず

道濟が田舍へまかりくだりけるに女のもとよりつかはしける

逢見てはありぬべしやと試みる程は苦しき物にぞ有ける

右大臣

心ならぬ事や侍りけむ、かたらひける女の許にまかりて枕にかきつけ侍りける

我心心にもあらでつらからば夜がれむ床の形見ともせよ

讀人志らず

男のこむといひ侍りけるを待ちわづらひてゆふけをとはせけるによにこじとつげ侍りければ心ぼそくおもひてよみ侍りける

來ぬまでもまたまし物を中々に頼む方なき此ゆふけかな

大納言道綱母

入道攝政九月ばかりの事にや、よがれして侍りけるつとめてふみおこせて侍りける返事につかはしける

消歸り露もまだひぬ袖の上に今朝は時雨るゝ空もわりなし

馬内侍

なかの關白女の許より曉に歸りて内にもいらでとに居ながら歸侍りければよめる

あかつきの露は枕におきけるを草葉の上となに思ひけむ

相模

あすの程にまでこむと言ひたるをとこに

昨日けふ歎く計の心地せばあすに我身やあはじとすらむ

和泉式部

雨のいたうふる日涙の雨の袖になどいひたる人に

見し人に忘られて降る袖に社身を志る雨はいつもをやまね

讀人志らず

輔親物いひ侍りける女の許に、よべは雨の降りしかばはゞかりてなどいへりける返事に、とくやみにしものをとて女のつかはしける

忘らるゝ身を知る雨はふらねども袖計こそ乾かざりけれ

藤原能通朝臣

忍びて通ふ女のまたこと人にものいふときゝてつかはしける

こえにける浪をば志らで末の松ちよ迄とのみ頼みける哉

藤原實方朝臣

かたらひ侍りける女のこと人にものいふときゝてつかはしける

浦風になびきにけりな里のあまのたくもの烟心よわさは

清少納言人に志らせで絶えぬ中にて侍りけるにひさしう音づれ侍らざりければよそ/\にて物などいひ侍りけり。女さし寄りて忘れにけりなといひ侍りければよめる

忘れずよまた變らずよ瓦屋の志たゝく烟志たむせびつゝ

讀人志らず

をとこかれ%\になり侍りける頃よめる

風の音の身にしむ計聞ゆるはわが身に秋や近くなるらむ

大貳三位

かれ%\なるをとこのおぼつかなくなどいひたりけるによめる

有馬山ゐなのさゝ原風吹けばいでそよ人を忘れやはする

赤染衛門

右大將道綱ひさしうおとせでなどうらみぬぞといひて侍りければむすめにかはりて

恨む共今はみえじと思ふこそせめてつらさの餘り也けれ

和泉式部

夜毎にこむといひて夜がれし侍りけるをとこのもとにつかはしける

今宵さへあらば斯こそ思ほえめけふ暮れぬ間の命共がな

赤染衛門

をとこうらむることやありけむ、今日をかぎりにて又はさらに音せじといひていで侍りにけれどいかにおもひけむ、ひるつかたおとづれて侍りけるによめる

あすならば忘らるゝ身に成ぬべしけふを過さぬ命共がな

藤原長能

題志らず

厭ふとは志らぬにあらず知乍ら心にもあらぬ心なりけり

後冷泉院御製

七月七日二條院の御方に奉らせたまひける

逢事は棚機つめにかしつれど渡らまほしきかさゝぎの橋