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續拾遺和歌集卷第八 雜秋歌
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8. 續拾遺和歌集卷第八
雜秋歌

前左兵衛督教定

初秋の心をよみ侍りける

ふかき夜の老の寐覺の枕より露おき初めて秋はきにけり

光俊朝臣

詠めつゝ又いかさまになげゝとて夕の空に秋のきぬらむ

藤原季宗朝臣

袖の上にいつともわかぬ白露の草ばに結ぶ秋はきにけり

僧正聖兼

初秋風と云ふこと

今よりは凉しくなりぬ片岡の志のゝ葉分の秋のはつかぜ

荒木田延成

ごとに移ろひゆかばいかゞせむなびくあさぢの秋の初風

前大納言爲家

文永十二年七月七日内裏に七首の歌奉りし時

天の河八十ぢにかゝる老の波又たち歸りけふにあひぬる

醍醐入道前太政大臣女

かきながす涙ながらぞ手向けつる物思ふ袖のつゆの玉章

靜仁法親王

題志らず

荻のはの露の外なるなみださへ袖にくだけて秋風ぞふく

前内大臣

弘長元年百首の歌奉りける時、荻を

荻のはに昔はかゝる風もなし老はいかなる夕べなるらむ

前大納言爲家

古はおどろかされし荻のはに吹きくる風を寐覺にぞまつ

高階宗成

荻風驚夢といへる心を

秋のよの露より外の夢をだに結びも果てぬ荻のうはかぜ

常磐井入道前太政大臣

弘長元年百首の歌奉りける時、露

かりねする草の枕の秋風になみだよりちる野べの白つゆ

前大納言基良

秋の歌の中に

思ひおく涙の露はいく秋かことのはごとにかずつもるらむ

山階入道左大臣

常磐井入道前太政大臣の家の十五首の歌に

いかなりし秋に涙の落初めて身はならはしと袖のぬる覽

左近中將具氏

中務卿宗尊親王の家の歌合に、秋夕

身のうさを志らずば秋の習とて夕べばかりや袖濡さまし

後嵯峨院御製

題志らず

おく露は色もかはらぬ夕べかなわが身一つのすみ染の袖

前攝政左大臣

數まさるうれへは秋の夕べとて千々にくだくる袖の露哉

從三位忠兼

いつ迄と思ふに物のかなしきは命まつまの秋のゆふぐれ

平親清女妹

何ゆゑにかゝる露ぞと思ふにも袖さへつらき秋の夕ぐれ

藤原景綱

草ばのみ露けかるべき秋ぞとは我が袖志らで思ひける哉

讀人志らず

ゆふされば玉ぬくのべの露ながら風にかつ散る秋萩の花

源親行

夕されば涙やあまるさをしかの入野のをばな袖ぞ露けき

安嘉門院四條

よそにきく雲居の鴈の玉章も我が涙をやかけてきつらむ

前内大臣

河水にと渡る鴈のかげみえてかきながしたる秋の玉づさ

土御門院小宰相

建長三年九月十三夜十首歌合に、霧間雁

志るらめや霧立つ空に鳴く雁も晴ぬ思のたぐひ有るみを

藤原隆博朝臣

おなじ心を

晴れずたつ峯の秋霧分けきても思つきずや雁の鳴くらむ

中原行實

海邊霧

今は又たごのうら浪うちそへてたゝぬ日もなき秋の夕霧

淨助法親王

三井寺にて月の歌よみ侍りけるに

雲はるゝみかみの山の秋風にさゞ波とほくいづる月かげ

藤原時明

田家月と云ふこと

庵結ぶ伏見のを田は名のみしてねられぬ月に秋風ぞ吹く

藤原長景

月前述懷と云ふ心を

身のうさを月に慰さむ秋のよに誰がため曇る涙なるらむ

法印禪助

せめてなど月みる夜はも身の程のうきは數そふ泪なる覽

澄覺法親王

身のうさの忘やすると詠めつゝ今宵も月の更けにける哉

前大納言爲家

弘長元年百首の歌奉りける時、月を

身のうさのさのみは如何増るぞと又廻りあふ月やみる覽

前關白左大臣一條

秋の歌の中に

月だにも老の涙のへだてずばむかしの秋の友とみてまし

如願法師

建保二年秋の十首の歌奉りける時

物思ふ秋はいかなる秋ならむあらしも月もかはる物かは

前大納言爲家

題志らず

みしことの皆かはり行く老の身に心ながきはあきのよの月

西行法師

ごともかはりのみ行く世の中に同じ影にてすめる月かな

高辨上人

秋のよも常なるべしと思ひせば長閑にみまし山のはの月

法印公朝

身のうさもかはらぬそらの月をみて何か昔の秋は戀しき

兵部卿隆親

建長三年九月十三夜十首の歌合に、名所月

年をへてみしも昔になりにけり里はみなせの秋のよの月

鷹司院帥

月の歌とて

月ならで又誰にかはことゝはむみぬ世の秋のむかし語りを

皇太后宮大夫俊成女

詠むれば空やはかはるあきの月みしよをうつせ袖の涙に

秋毎の月を雲居のかたみにてみしよの人のかはる面かげ

二條院讃岐

もろ共になれし雲居は忘れぬに月は我をぞしらず顏なる

藤原長綱

藏人おりて後よみける

雲の上の月みし秋を思ふにはあけの衣のいろもうらめし

前大納言爲家

常磐井入道前太政大臣の家にて月の歌よみ侍りける中に

つかふとてみるよ無りし我宿の月には獨ねぞなかれける

前中納言定家

洞院攝政の家の百首の歌に、月

昔思ふ草にやつるゝ軒ばより有りしながらの秋のよの月

和氣種成朝臣

松門到曉月徘徊と云ふことをよめる

松の戸の明方ちかき山のはにいかでやすらふ秋のよの月

前關白左大臣一條

圓明寺にて、山月と云ふこと

山ふかく心のうちに契りてもかはらでみつる秋のよの月

光俊朝臣

題志らず

世をばさて何故捨し我なればうきに止りて月をみるらむ

法眼源承

そむきても浮世はなれぬ秋をへて同じ涙に月をみるかな

道洪法師

世をそむきて後、月をみてよめる

月は猶みしに變らぬ秋ながら身社うき世の外に出でぬれ

定修法師

本山の事を思ひ出でゝよみ侍りける

またすまむ山里ありと思ひきやわがたつ杣の秋の月かげ

法印覺宗

月の歌の中に

今はまた身によそへてもしたふ哉半過ぎ行く秋のよの月

信實朝臣

しばし猶月をもみむと思へども老いて殘の秋ぞすくなき

前大僧正道玄

月をみる山路の秋の苔の袖ぬれてほすべき露のまもなし

順徳院御製

名所の百首の歌めしけるついでに

伊駒山雲なへだてそ秋の月あたりのそらは時雨なりとも

良暹法師

題志らず

晴れゆけば光ぞ増る秋の月しばし志ぐるゝ程はうけれど

源家長朝臣

建保二年秋の十首の歌奉りけるに

數ふれば四十餘りの秋の霜みのふりゆかむ果をしらばや

前内大臣

百首の歌の中に

靜なる秋の寐覺のみになくば老のつらさもしられざらまし

讀人志らず

題志らす

[_]
[4]

長き夜の寐覺の床のきり%\す同じ枕にねをのみぞなく

平忠時

住みなるゝ床はくさばの蛬霜にかれゆく音をや鳴くらむ

法印公朝

蛬鳴くを我が身のたぐひにてしらぬ思ひを哀れとぞきく

覺助法親王

まどろまぬ程を知せて夜もすがら物思ふ人や衣うつらむ

前大納言良教

百首の歌奉りし時

老が世の寐覺かさなる恨みとも思ひしらでや衣うつらむ

藤原隆博朝臣

少將に侍りける比よみ侍りける

いくとせかかざしきぬらむみかさ山同じ麓の秋の紅葉ば

院辨内侍

長月の例幣に神祇官にまゐりて侍りけるに錦おり出ぬよし申しける折しも時雨のふりければ

夕時雨木のはを染る時しもあれなどおりあへぬ錦成らむ

法眼慶融

紅葉をよみ侍りける

わきて又立寄る袖もほしやらず紅葉の陰は猶時雨れつゝ

式乾門院御匣

秋の暮の歌

思ひやる方こそなけれめぐりあはむ命もしらぬ秋の別は

從三位爲繼

寳治百首の歌奉りける時、初冬時雨といふこと

冬のくる嵐をさむみ神なびのみ室の山やまづ時雨るらむ

藤原重名朝臣

題志らず

かねてだに木葉しぐれし神なびのみ室の山に冬はきに鳬

寂蓮法師

よそにのみ嵐の聲はおとづれて窓うつ物は木葉なりけり

前中納言資宣

ふりはつる木葉の後の夕時雨まがふかたなく
[_]
[5]ぬるゞ袖哉

土御門院御製

柞原しぐるときけば我が袖のかひなき色ぞまづ變りける

前中納言資平

百首の歌奉りし時

五十餘り老曾の杜の神無月しぐれ/\てみこそふりぬれ

靜仁法親王

冬の歌の中に

神無月ふりそふ袖の時雨哉さらでももろき老のなみだに

前大僧正隆辨

幾度か袖ぬらすらむむら時雨ひとりふりぬる老の寐覺に

荒木田延季

袖ぬらす物とはきけど槇のやに過ぐるはをしき初時雨哉

定意法師

うき身には涙も袖にふる物を時雨ばかりとくもる空かな

法印公朝

世にふればいとゞ歎きの色そへて時雨に似たる我が涙哉

權少僧都圓勇

神な月しぐるゝ空を詠めてもいたづらにふるみを歎く哉

澄覺法親王

我ならでまた徒らにふり行くはをのへの松の時雨也けり

平義宗

嵐吹く峯のうきぐもたえ%\に時雨れてかゝる葛城の山

中務卿宗尊親王

入道二品親王高野山にこもり侍りける頃つかはしける

いか計高野のおくのしぐるらむ都は雲のはるゝまもなし

入道二品親王性助

返し

しぐるらむ都の空におもひしれ高野は雪の雲ぞかさなる

心圓法師

古寺鐘と云ふこと

高野山曉をまつ鐘のおともいくよの霜にこゑふりぬらむ

選子内親王

神無月の頃曉いたく霜さえければ里に出でたる人につかはしける

露霜とおきふしいかであかすらむならはぬ旅の草の枕に

蓮生法師

冬の歌の中に

流れゆく紅葉をむすぶ山川のこほりぞ秋の色をとゞむる

權律師仙覺

こやの池のあしまの水に影さえて氷をそふる冬のよの月

皇太后宮大夫俊成

永治元年讓位の後籠りゐ侍りけるに新甞會の日皇后宮の御かたに侍りける人につかはしける

珍しき日影をみても思はずや霜枯れはつる草のゆかりを

源義氏朝臣

霰を

霰ふる雲の通路かぜさえてをとめのかざし玉ぞみだるゝ

上西門院兵衛

雪の降りけるをみてよめる

世中にふれどかひなき身の程は溜らぬ雪によそへてぞみる

讀人志らず

題志らず

里人の通ふ計りの道をだにまだふみ分けぬ今朝の白ゆき

典侍親子朝臣

たが通ふ道の關とかなりぬらむよひ/\ごとにつもる白雪

平時茂

まつ人のとはぬ日數やつもるらむ跡たえはつる庭の白雪

前關白左大臣鷹司

跡つけて問れぬ庭の雪みれば世にふりにける程ぞ知るゝ

左近中將師良

野徑雪と云ふ心をよみ侍りける

春日野に舊にし世々の跡とめて雪踏分くる道を知らばや

前大納言良教

雪の歌とて

誰も皆同じ世にこそ降る雪の我れ獨りやは道なかるべき

前大納言爲家

建長三年吹田にて十首の歌奉りける時

立返り又つかふべき道もがな年ふりはつる宿の志らゆき

松雪と云ふこと

冬きては雪の底なる高砂の松をともとぞいとゞふりぬる

讀人志らず

題志らず

よそにみる老曾の杜に降雪の積る年さへ身に知られつゝ

後堀河院民部卿典侍

年の暮によみ侍りける

ゆくすゑを遙に待ちし慰めの頼だになきとしのくれかな

從二位家隆

前大納言爲家の家に百首の歌よみ侍りけるに

思ふ事まちよわり行く七十のあまりかなしき年の暮かな
[_]
[4] SKT reads 題志らず.
[_]
[5] SKT reads ぬるるぞそでかな.