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續拾遺和歌集卷第十七 雜歌中
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17. 續拾遺和歌集卷第十七
雜歌中

前中納言定家

題しらず

七十ぢの空しき月日數ふればうきにたへたる身の例し哉

左近中將公衡

ゆく末の覺束なさや立ちかへり此世にとまる心なるらむ

後京極攝政前太政大臣

立歸り道ある世にはなりぬれどおもふ思の末やまよはむ

前大納言爲家

述懷の心を

おもふほど心を人にしられねばうしといふにも理はなし

平泰時朝臣

たづぬれば理はなしとにかくに人の歎を我がうれへつゝ

權中納言經平

庄子、知其愚非大愚の心を

愚なる我身といかでしりぬらむ思ひわくべき心ならぬに

式乾門院御匣

題志らず

かゝらずば思もしらでやみなまし我身より社憂世なりけれ

赤染衛門

ありはてぬ身だに心に叶はぬに思のほかの世にもふる哉

藤原公世朝臣

哀など身にまかすべき心さへはてしらぬ世の習なるらむ

平親清女

とにかくに憂は此世の習ぞと思へば身をも恨みやはする

入道二品親王性助

百首の歌奉りし時

はかなくぞ憂は此世の習ともことわりしらで猶歎きける

平宣時

題志らず

數ならぬ身は理とおもへども猶うき時は世をぞうらむる

惟宗忠景

大方のならひにのみや慰めむ我身ひとつの浮世ならねば

平時遠

我袖はほすまもあらじ世の中のうきに任する泪なりせば

藤原則俊朝臣

さても猶つきせぬ物は數ならで我身世にふる泪なりけり

權少僧都嚴雅

憂き物と思ひとりにし身の程をしらで落つるは泪なりけり

從二位家隆

しらざりき袖に流るゝ泪川うきて思ひのかゝりける世を

按察使高定

寢覺述懷といふ事を

何と又さらに泪のこぼるらむうきは我身の寐覺のみかは

侍從能清

述懷の歌とて

何とかは人にも今は語るべき身のうき程はよそにみゆ覽

前内大臣

世やはうき人やはつらき大方の身を思はぬは心なりけり

前關白左大臣一條

恨むべき人は宛ら昔にて世にもしられぬ身とぞなりゆく

右兵衛督基氏

身の上を思ひ慰む程ぞうき人をみるにもためしやはある

九條前攝政右大臣

なに事もよゝの報と思ふにぞ人のつらさも忘られにける

常磐井入道前太政大臣

さきの世の報悲しき身の程をしらずがほにや又歎くべき

衣笠内大臣

ありとても今いく程の行末に我身ひとつを思ひわぶらむ

俊惠法師

後法性寺入道前關白の家の百首の歌に

思置く事だになくばとにかくに惜しかるべくもなき命哉

前内大臣

題志らず

何事も思ひ捨てたる身ぞやすき命ばかりに世をば任せて

從三位忠兼

何事を世には待つべき命とて長くもがなと身を思ふらむ

式乾門院御匣

限ある命ならずば世のうさにたへても物を思はざらまし

惟宗行經

長らへていけるを今は歎くかな憂は命のとがならねども

法印教範

身の程の憂をもしらでつれなきは猶長らふる命なりけり

心圓法師

待つ事のとにも斯にもあらば社存へばやと身をも思はめ

源兼朝

今は我れ年の殘をさりともと頼めし程のなぐさめもなし

藤原時景

行末を頼みてよをもすぐす哉憂をばよそに思ひなしつゝ

權大僧都乘雅

行末も猶こしかたに變らずばうきにそへてや老を歎かむ

法印公朝

數々に待たれし事は空しくて老ぞ身を志る始めなりける

靜仁法親王

老いぬとてもろき涙は曇れども心は月にすみまさりけり

信實朝臣

いかにせむ慰む月のなさけだに又身に厭ふ老となりぬる

常盤井入道前太政大臣

弘長元年百首の歌奉りける時

老いぬとて身をも歎かじ有明の月も盛のころは過ぎにき

前大僧正隆辨

述懷の歌の中に

みるまゝに老の影こそかなしけれ六十ぢ餘りの有明の月

藤原長綱

うき物と老の寐覺を聞きしかどかくてぞ見ける有明の月

信實朝臣

聞きわかぬゆふ付鳥のこゑよりも老の寐覺ぞ時は定むる

前關白左大臣一條

哀なり老の寐覺の鳥の音に今いくたびか夜をのこすべき

後嵯峨院御製

題志らず

いつとなく今はならひの寐覺にて老いて志らるゝ曉の空

後徳大寺左大臣

老後述懷といふ事を

老らくのかゞみの山の面影はいたゞく雪の色やそふらむ

源仲業

同じ心を

うき事はもとの身にして老らくの影のみ變るます鏡かな

平時廣

寄鏡述懷

影うつすかゞみを何と恨むらむ老はわが身にかはる姿を

基俊

堀河院に百首の歌奉りける時

老らくのかげ見るたびにます鏡なほ昔こそ戀しかりけれ

正三位知家

述懷の心を

さりともと昔は末を頼みきて老ぞ歎きのかぎりなりける

侍從能清

百首の歌奉りし時

行く年のつもるばかりと思ひしに老は泪の數もそひけり

道圓法師

題志らず

立ちよれば袖こそぬるれ年へぬる身さへ老蘇の杜の下露

前大僧正承澄

老いにける六十ぢの年を數へても殘なき身を猶歎くかな

藤原秀茂

かくて世に惜しからぬ身ぞ年經ぬる憂や強面き老となる覽

靜仁法親王

述懷の歌の中に

うし迚も心一つに捨てやらで世に惜まれぬ身社ふりぬれ

普光圓入道前關白左大臣

大方の憂世はよしや厭はれず身のつらさにぞ袖はぬれける

常磐井入道前太政大臣

志り乍ら厭はぬ世こそ悲しけれ我爲つらき身を思ふとて

中務卿宗尊親王家右衞門督

いくたびか心のうちに背くらむ誠にすてぬ此世なれども

權少僧都澄舜

あればうく背けば惜しき世の中をいつ一かたに思定めむ

藤原長綱

歎くまに月日ぞ過ぐる背きても身を隱すべき浮世ならねば

大江頼重

何と又背かれぬ世のうきたびにまづ歎かるゝ心なるらむ

源兼氏朝臣

思ふ事せめて空しきはては又心なるべき世をぞそむかぬ

衣笠内大臣

百首の歌よみ侍りける時

其事に心とまるとなけれども背くとならば世をや惜まむ

丹波尚長朝臣

題志らず

心から歎きけるこそ悲しけれうきは習ひの世をば背かで

平政村朝臣

捨遣らぬ心からにや出でざらむ憂世の關はもる人もなし

中納言教良

述懷の心を

憂き度に惜しからずとは厭へ共捨遣られぬは我身也けり

土御門院御製

つらしとて人を恨みむゆゑぞなき我心なる世をば厭はで

前大納言基良

さらでだに有るにも非ぬ身の程をなきになしても猶や厭はむ

寂蓮法師

あぢきなやたれ又身をば思へとて心にさへも厭ひはつ覽

權中納言公雄

百首の歌奉りし時

憂身ぞと思ひそめつる心より袖の色さへあらずなりぬる

藤原爲顯

出家の後よみ侍りける

いかに我が結び置きける元結の霜より先に變りはつらむ

入道内大臣

百首の歌奉りし時

年つもる老とは何か歎きけむ憂世を厭ふしるべなりけり

信實朝臣

題志らず

老てこそ世を背くとは思ひしにさてしも年の猶積るかな

僞のなからむ世をぞ背くべき家を出づるもまことならねば

從三位忠兼

そむかばと昔思ひし世中のなほうき時ぞなぐさめもなき

三條入道左大臣

守覺法親王の家の五十首の歌に

位山さかゆきこえて後にこそやすくは道に思ひいりしか