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續拾遺和歌集卷第十八 雜歌下
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18. 續拾遺和歌集卷第十八
雜歌下

式乾門院御匣

懷舊の心を

立歸る昔ならねば思ひいでのなきにつけても猶ぞ戀しき

從二位家隆

おのづから猶ながらへて年ふとも何を昔の身とか忍ばむ

雅成親王

侘びぬればありて憂世ぞ惜まるゝ忍ぶ昔の名殘ばかりに

中務卿宗尊親王

憂身こそかはりはつとも世中の人の心のむかしなりせば

信實朝臣

題志らず

我身から遠ざかり行く昔かと思ふにつけて老ぞかなしき

源兼氏朝臣

老ぬれば忍ぶべしともしらざりし我古へぞさらに戀しき

法印源惠

忍ぶべきものともしらで過してし月日ぞ今は昔なりける

平政村朝臣

こしかたぞ月日にそへて忍ばるゝ又廻りあふ昔ならねば

藤原爲成

忍ぶれどかへらぬ物をなにと又昔を今におもひ出づらむ

平義政

曉の寐ざめに何のさそふらむ我はみぬ世の遠きむかしを

前大納言爲家

弘長元年百首の歌奉りける時、懷舊

見しことのたゞ目の前に覺ゆるは寐覺の程の昔なりけり

前大納言伊平

おなじ心を

つかへこし世々の昔をおのひ寐の曉つぐる鳥の音もうし

權大納言經任

つかへても折々袖のぬるゝかなむかしの御代を忍ぶ泪に

皇太后宮大夫俊成

近衛院の御時御物忌にこもりて侍りける夜遣水に月のうつれるをみて思ひ出づる事おほくてよみ侍りける

古への雲居の月はそれながらやどりし水の影ぞかはれる

信實朝臣

題志らず

昔をば面がはりして思へども見しよ忘れぬ月のかげかな

素暹法師

ねぬにみし昔の夢の名殘とて老のなみだにのこる月かげ

侍從能清

夢とてや今は人にも語らましいたづらにのみ過ぎし昔を

前内大臣

愁ひにしづみて後最勝金剛院の八講にまかりてあしたに前中納言定家のもとにつかはしける

數ならで年ふる夢に殘る身は昨日の朝をとふかひもなし

前左兵衛督教定

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に

けふといひ昨日とくらす夢の内に五十ぢ餘の過ぐる程なさ

大僧正道寳

夢を

五十ぢ餘我世ふけぬと思ふにもなほ驚かぬ夢ぞつれなき

花山院御製

長き世の始め終りもしらぬまに幾世の事を夢に見つらむ

藤原隆博朝臣

思寐の身のあらましにみる夢をいける限りの現ともがな

從三位光成

みる程は思ひもわかぬ轉寐の夢は覺めてぞ儚なかりける

衣笠内大臣

題志らず

まどろまぬほどを現と思ひしは夢の世しらぬ心なりけり

澄覺法親王

現にも夢にもあらぬ幻のありてなき世をなになげくらむ

僧正聖兼

おのづから驚くひまもあらば社夢の世とだに思ひ合せめ

源親長

轉寢の夢にもうとくなりにけりおやのいさめの昔語りは

從二位顯氏

徃事如夢といふこと

別をば一夜の夢と見しかども親のいさめぞ絶えて久しき

藤原公世朝臣

黄鐘調の調子をひき侍りけるに思ひ出づる事ありてよみ侍りける

垂乳根の親の諌めの形見とて習ひし琴の音をのみぞなく

從二位能清

題志らず

垂乳根のあらばあるべき齡ぞと思ふにつけて猶ぞ戀しき

前大納言爲家

名を殘す苔の下共待もせずある世ながらに埋れぬる身は

鴨長明

いかにせむつひの煙の末ならで立昇るべき道もなき身を

皇太后宮大夫俊成女

身をかへてあらぬ命の消ぬまをなき數にだに誰か忍ばむ

前大僧正慈鎭

文集の逝者不重廻存者難久留といへる心を

此世には二たびあはぬ別路に留まる人のなきぞかなしき

前大納言光頼

長恨歌の心を

形見とて折々ごとに見るものは泪の玉のかざしなりけり

圓融院御製

御心地れいならずおはしましける時四條太皇太后宮に奉らせ給ひける

今來むといひだにおかで白露の假の宿りを別れぬるかな

權大納言長家

法成寺入道前攝政かくれ侍りける又のとしの春上東門院より御せをそこありける御返事に

めづらしき春の光を今日みても雪ふる年の袖はかはかず

藻壁門院少將

信實朝臣身まかりて後春の比かの墓所にまかりたりけるに草のあをみわたりけるをみてよみ侍りける

年々の春の草にもなぐさまでかれにし人の跡を戀ひつゝ

なき人の植ゑ置きて侍りける梅の花の咲きたりけるを

色も香も哀れはしるや亡き人の心とゞめし宿のうめが枝

讀人志らず

題志らず

春ごとに馴れこし人の面影をまた忍べとや花のさくらむ

權中納言俊忠

堀河院かくれさせ給ひてあまたの春をへだてゝ後花見侍りける女車より歌を送りて侍りける返事に

思ひきやちりにし花の影ならで此春にさへあはむ物とは

普光園入道前關白左大臣

九條左大臣身まかりて後花をみてよみ侍りける

あだにちる花によそへてなき人を思へばおつる我泪かな

權中納言國信

題志らず

又くべき春を何とて惜むらむありし別れよいつか忘れむ

後堀河院民部卿典侍

藻壁門院かくれさせ給ひて又の年の五月五日大納言通方、結びたる花を佛の御前にとて民部卿典侍がもとにつかはしたりけるをその由光明峯寺入道前攝政のもとに申しつかはすとて

思ひきやかけし袂の色々を今日は御法のはなと見むとは

光明峯寺入道前攝政左大臣

返し

今日迄に露の命の消えやらで御法の花とみるぞかひなき

大納言通方

此由を聞きて民部卿典侍につかはしける

今更によそのなみだの色ぞそふ御法の花の露のことの葉

前内大臣

藤原忠季朝臣身まかりて後植ゑ置きて侍りける撫子をみて

露消えし後しのべとや植ゑおきて泪色そふなでしこの花

九條前攝政右大臣

籠り居て侍りける頃光明峰寺入道前攝政の墓所にてよみ侍りける

哀なり草のかげにも白露のかゝるべしとは思はざりけむ

近衞關白左大臣

秋の比人の身まかりけるをなげきてよみ侍りける

いつまでか秋の習ひと思ひけむうき泪にぞ袖はぬれける

皇太后宮大夫俊成

諒闇の年の秋鳥羽殿に美福門院おはしましける比前栽に蘭のしをれてみえけるを折りて人につかはしける

なべて世の色とは見れど蘭わきてつゆけき宿にもある哉

法印定圓

光俊朝臣身まかりて後人のとぶらひて侍りける返事に

思へたゞ消えにしあとの秋風に泪かずそふよもぎふの露

讀人志らず

題志らず

なき人を忍ぶの露に袖ぬれてあれ行く軒の月をみるかな

僧正實瑜

道助法親王かくれ侍りにける比經乘法師がもとより音づれて侍りける返事に

形見とてながむばかりの心だにあらばぞ月の影も曇らむ

權中納言俊忠

堀河院かくれさせ給ひての秋、月あかき夜權中納言師時がもとにつかはしける

此秋は馴れし御影の戀しくて其夜に似たる月をだにみず

權中納言師時

返し

君戀ふる泪に月は見えねども面影のみぞ立ちもはなれぬ

法成寺入道前攝政太政大臣

九月ばかりに四條太皇太后宮にまゐりあひて前大納言公任につかはしける

君のみや昔をこふるそれながら我が見る月もおなじ心を

前大納言公任

返し

今はたゞ君が御影を頼むかな雲がくれにし月を戀ひつゝ

權大僧都定縁

秋の暮母身まかりけるによみ侍りける

今も猶しぐるゝ袖はほしやらずみし夜の夢の秋の別れに

右近大將通忠女

人のなき跡にて時雨をきゝてよみ侍りける

袖ぬらすむかしながらの古郷に泪あらそふ夕しぐれかな

堀河院中宮上總

堀河院かくれさせ給ひて後五節に殿上人引きつれて皇后宮にまうでたりけるによみ侍りける

哀れにも尋ねけるかな有し世にみし諸人の面がはりせで

權中納言師時

返し

あらぬ世の豐の明にあふ人はみし面影を戀ひぬ日ぞなき

堀河

待賢門院かくれさせ給ひける御いみの程に八幡の行幸と聞えける日雪のふりけるにさき%\まゐる人もみえざりければ三條内大臣左衛門督に侍りける時だいばん所よりとてかのもとにつかはしける

誰も皆けふの御幸に誘はれて消えにし跡を問ふ人ぞなき

前大納言爲家

九條左大臣かくれ侍りてほかにうつし侍りにける朝雪ふかく積りたりけるに右衛門督忠基のもとにつかはしける

いつのまに昔の跡となりぬらむたゞよの程の庭のしら雪

右衛門督忠基

返し

思はずよ唯夜の程の庭の雪に跡をむかしと忍ぶべしとは

藤原基隆

父基綱身まかりて後雪のふりける日かの墓所にてよめる

ふりまさる跡こそいとゞ悲しけれ苔のうへまで埋む白雪

良心法師

雪の朝に父が墓所にまかるとてよめる

雪深き苔の下にも忘れずばとふべき人のあとやまつらむ

信實朝臣

從一位倫子身まかりにける年の暮に中原行範がもとにつかはしける

世の常の年の暮とぞをしまゝし夢の裡なる日數ならずば

前大納言忠良

女の思ひにてよみ侍りける

覺めやらで哀れ夢かと辿るまに儚く年のくれにけるかな

權大納言長雅

ともなへりける女の身まかりにけるときよみ侍りける

時のまも立ちやはなれし今はとてそはぬ煙の果ぞ悲しき

藻壁門院少將

少將の内侍身まかりにける比よみ侍りける歌の中に

夢ぞとは思ひながらも覺めやらぬ心ぞ長き迷ひなりける

三條入道左大臣

世の中はかなく聞えける頃權大納言實國のもとにつかはしける

あすしらぬ我身のうさは驚かで哀をよそに聞くぞ儚なき

權大納言實國

返し

誰れもげに憂世の夢と知りながら驚かでのみ過ぐる儚さ

久我内大臣

美福門院の御ことの後皇太后宮大夫俊成にあひて日數の過ぐるも夢のやうなることなど申して又の日つかはしける

定めなきこの世の夢の儚さをいひあはせても慰めしかな

皇太后宮大夫俊成

返し

かなしさの猶さめがたき心にはいひ合せても夢かとぞ思ふ

權僧正永縁

親の身まかりにけるをとはざりける人のおや又なくなりにければつかはしける

我身にて習はざりせば歎くらむ人の心をいかでしらまし

法印定圓

題志らず

埋もれぬ名のみ殘してなき人のいづくにつひの宿定む覽

禪空上人

後嵯峨院かくれさせ給ひて又の年の春御はてにあたりける日詠み侍りける

めぐりきて形見とならば慰まで同じ月日は猶ぞかなしき

清輔朝臣

美福門院かくれさせ給ひける頃素服の人あまた參りあひたりけるをみて皇太后宮大夫俊成がもとにつかはしける

人なみにあらぬ袂はかはらねど泪は色になりにけるかな

皇太后宮大夫俊成

返し

墨染にあらぬ袖だにかはるなりふかき泪の程はしらなむ

祝部成茂

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[10]
仲身まかりにける頃社のならひにて着服せぬことをなげきてよめる

限りあれば我れとはそめぬ藤衣涙の色にまかせてぞきる

前大僧正慈鎭

題志らず

儚なさに爭でたへましこれぞ此世の理りと思ひなさずば

後堀河院民部卿典侍

藻壁門院かくれさせ給ひける頃人のとぶらひて侍りけるに

夢の世に別て後の戀しさをいかにせよとて君になれけむ

安嘉門院大貳

從三位爲繼身まかりにける頃人のもとよりいかばかりなる心のうちにかと申して侍りける返事に

悲しさは又も類ひのあらばこそいか計り共人にしらせめ

常磐井入道前太政大臣

冷泉太政大臣身まかりにける後よみ侍りける

面影を忘れむと思ふ心こそわかれしよりも悲しかりけれ

前中納言定家

八條院の御忌日に蓮花心院に參りて侍りけるに思ひ出づる事おほくておなじく參りあひたりける女房の中にさしおかせ侍りける

老らくのつらき別れは數そひて昔見しよの人ぞすくなき

前大納言基良

なき人のふみを經のれうしになすとて

形見とて今は泪の玉章をかきやるかたもなく/\ぞみる

法印澄憲

公守朝臣母身まかりて後朝夕手なれける鏡に梵字をかきて供養し侍りける導師にまかりて又のあした後徳大寺左大臣のもとに申しつかはしける

見し人の影もなければます鏡空しきことを今やしるらむ

法印覺源

父前中納言定家すみ侍りける家に年へて後歸りまうできて昔の事を思ひいでゝよみ侍りける

面影はあまた昔の古郷に立ちかへりても音をのみぞなく

平親清女妹

父身まかりて後よめる

今日迄もながらふべしと思ひきや別しまゝの心なりせば

津守國助

仁助法親王三井寺にてかくれ侍るよし聞きていそぎかしこに行くとて相坂山にてよみける

思ひきやよそに聞きこし相坂を別の道にけふ越えむとは

蓮生法師

信生法師ともなひてあづまのかたにまかりけるにうつの山の木に歌を書き付けて侍りける後程なく身まかりにければ都にひとりのぼり侍るとてかの歌のかたはらにかきそへ侍りける

うつの山現にて又越え行かば夢とみよとやあと殘しけむ

寂蓮法師

あづまのかたに侍りける頃同じ旅なりける人の都なる女の身まかりにけるを聞きて歎き侍りけるにつかはしける

言とはで思ひしよりも都鳥聞きて悔しきねをや鳴くらむ

讀人志らず

返し

都鳥きゝて悔しき夢のうちを驚かすにぞねはなかれける

和泉式部

彈正尹爲尊親王かくれて後つきせず思ひ歎きてよみ侍りける

かひなくて流石にたえぬ命かな心を玉のをにしよらねば

同じ頃雨のいみじう降りける日いかにととぶらひて侍りける人の返事に

いつとても泪の雨はをやまねどけふは心の雲間だになし
[_]
[10] SKT reads 允身.