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續拾遺和歌集卷第十四 戀歌四
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14. 續拾遺和歌集卷第十四
戀歌四

常磐井入道前太政大臣

弘長元年百首の歌奉りける時、逢不遇戀といへる心を

同じ世にまた夕暮を歎くかなこりぬうき身の心よわさは

前大納言爲家

題志らず

わするべき今はわが身の泪だに心にかなふ夕ぐれぞなき

前内大臣

今はたゞ忘れむと思ふ夕暮をありしよりけに松風ぞ吹く

平親清女

さりともと暫しは待ちし夕暮も今はよそなる身の契かな

從二位行家

文永二年九月十三夜の歌合に、絶戀

たのめしは人の昔になりはてゝ我身にのこる夕ぐれの空

前大納言良教

九月十三夜五首の歌に同じ心を

あふさかの道やはかはる年ふれば人の心ぞ關となりける

權中納言具房

寄關戀と云ふ事を

うき物と思ひもはてぬ鳥のねにまた逢坂の往來をぞ待つ

藻壁門院少將

洞院攝政の家の百首の歌に、遇不逢戀

逢事の絶間がちなるつらさかと思ひし程の契りだになし

戀のこゝろを

見し人を思ひ出づるも悲しきに夕は月の待たれずもがな

太上天皇

文永五年八月十五夜の歌合に、月驚絶戀

何と又思ひ絶えても過ぐる身の月みるからに袖のぬる覽

權中納言長方

家に歌合し侍りけるに

待ちしよに思ひよそへて幾返り山のは出づる月を見つ覽

祝部成茂

寄月戀

いかにせむ月のとがとは思はねどうき面影におつる泪を

道生法師

おなじ心を

こひ/\て仄かに人を三日月のはてはつれなき有明の空

正三位顯家

後法性寺入道前關白の家の歌合に、戀依月増と云ふ事を

詠むれば戀こそまされ我妹子がつらき心や月にそふらむ

土御門院御製

題志らず

うらみこし人の心もとけやらず袖の氷にはるはきぬれど

藤原爲兼朝臣

忘れずよ霞のまよりもる月のほのかに見てし夜はの面影

讀人志らず

わが戀はまだ雪消えぬ若草の色にぞ出でぬ下にもえつゝ

典侍親子朝臣

あかざりし袖かと匂ふ梅が香におもひ慰むあかつきの空

前中納言定家

春の頃物申しそめける人の梅の花を折りてさしおかせ侍りける又の年おなじ所にてよみ侍りける

心からあくがれそめし花の香に猶もの思ふ春のあけぼの

我のみやのちも忍ばむ梅の花にほふ軒端のはるの夜の月

前中納言匡房

かたらひ侍りける男に忘られにける女にかはりて

うき身をば忘れはつとも古郷の花の便はおもひ出でなむ

前中納言雅言

寄山吹戀といふ心を

山吹の花さへつらし口なしの色にはなどか思ひそめけむ

源有長朝臣

戀の歌の中に

志らせばや神の志るしの葵ぐさ名をのみかけて頼む心を

祝部成茂

みあれの日人のもとに葵にそへて遣しける

葵てふ其名はさこそかけず共けふのかざしの印とは見よ

右衞門督實冬

夏夜戀

夏の夜と何か恨みむいつとてもあふ人からにあかぬ習は

皇太后宮大夫俊成女

建仁二年戀の十首の歌合に、夏戀

はかなしや夢も程なき夏の夜の寐覺ばかりの忘れ形見は

實方朝臣

四月ばかりに物いひそめける人の早月まで忍びけるに遣しける

忍びねのほどは過ぎにき郭公何につけてか今はなかまし

後嵯峨院御製

白河殿の七首の歌、寄沼戀

隱沼に生ふる菖蒲の我なれや繁きうきねも知る人ぞなき

赤染衛門

男に忘られにける人の五月五日枕に菖蒲をさして置きたりけるを見て

乾くまもなき獨寐の手枕にいとゞ菖蒲のねをやそふべき

周防内侍

あだなりける男の許に五月六日人にかはりて遣しける

さもこそは假初ならめ菖蒲草やがて軒端に枯れにける哉

前左兵衛督教定

戀の歌の中に

夏草の下ゆく水のありとだにむすばぬ中は知る人もなし

源家長朝臣

とぶ螢それかあらぬか玉の緒のたえぬばかりに物思ふ頃

法眼慶融

つゝめども我さへ身にぞ餘りぬる螢よりけにもゆる思は

丹波尚長朝臣

寄蝉戀といへる心を

夏衣をりはへ蝉の音にたてゝうすくや中の遠ざかりなむ

讀人志らず

題志らず

恨みてもかひなき物は夏ごろも我身にうすき契なりけり

殷富門院大輔

寄七夕戀といふ事を

織女にたえぬ思は變らねど逢ふ夜は雲のよそにこそきけ

權中納言顯基

七月七日女に遣しける

かつ見ても戀しき物を七夕の秋のためしと何ちぎりけむ

讀人志らず

題志らず

逢事はけふもかた野の天の川この渡こそうきせなりけれ

前中納言資平

人の許に遣しける

かけてだに思ひも志らじ淺茅生の小野の朝露消え返る共

光俊朝臣

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に

風吹けばたゞよふ雲の空にのみ消えてもの思ふ秋の夕暮

醍醐入道前太政大臣

題志らず

頼めとや思ひ絶えぬるよひ/\を猶秋風の松にふくらむ

紫式部

方たがへにまうできたりける人の覺束なきさまにて歸りにける朝に朝顏を折りて遣しける

覺束なそれかあらぬかあけ暮の空おぼれする朝がほの花

讀人志らず

返し

いづれぞと色わく程に槿のあるかなきかになるぞ悲しき

前中納言定家

建保百首の歌奉りける時

初雁のとわたる風のたよりにもあらぬ思を誰につたへむ

前攝政左大臣

戀の歌の中に

うかりける人の心の秋風に萩のした葉のいろもうらめし

權大納言長雅

百首の歌奉りし時

眞葛原下葉ばかりの秋ならば思ひかへして恨みざらまし

安嘉門院四條

山階入道左大臣の家の十首の歌に、寄秋風戀

秋風の吹くにまかせて眞葛原われとは人を恨みやはする

前内大臣

寄秋月戀

身を秋の泪ばかりをたよりにてかたみもつらき袖の月影

讀人志らず

題志らず

秋はきぬ人は強面し今よりの長き夜寒み待ちつゝや寐む

從二位家隆

音にのみきくの濱松した葉さへ移ろふころの人は頼まじ

正三位知家

うつろはむ物とやひとの契り置きし後瀬の山の秋の夕露

藤原永光

大方のことの葉までもいろかはる秋や生田のもりの下露

信實朝臣

弘長元年百首の歌奉りけるに、逢不會戀

言の葉も秋にはあへず移ればや變るつらさの色を見す覽

光明峯寺入道前攝政左大臣

家の戀の十首の歌合に、寄枕戀

しぐれゆく紅葉の下のかり枕あだなる秋の色に戀ひつゝ

光俊朝臣

題志らず

今ぞ志る我をふるせる時ぞともしぐれてかはる秋の夕暮

順徳院御製

言のはもわが身時雨の袖の上に誰を忍ぶの杜の木がらし

光明峰寺入道前攝政左大臣

建保百首の歌奉りける時

言のはのとはぬに深き色見ても袖の時雨はほす隙もなし

東三條入道前攝政太政大臣

右近大將道綱の母の、もとよりしぐるゝ空もわりなくなど申し遣したりける返事に

思ひやる心の空になりぬれば今朝や時雨と見ゆるなる覽

前中納言匡房

十月許に女に遣しける

獨ぬる寐覺の床のさむければ時雨の音をたえず聞くかな

曾禰好忠

題志らず

ひとりぬる風の寒さに神無月しぐれふりにし人ぞ戀しき

安嘉門院高倉

誰か又ふるき枕に思ひ出む夜な/\霜の置きわかれなば

院少將内侍

寳治百首の歌奉りける時、寄鳥戀といへる事を

いかにせむ同じえならぬ契のみ憂名を鴦のね社なかるれ

參議雅經

建保五年内裏の歌合に、冬夜戀

泪せく袖の氷をかさねても夜はのちぎりは結びかねつゝ