University of Virginia Library

Search this document 

 1. 
 2. 
 3. 
 4. 
 5. 
 6. 
 7. 
 8. 
 9. 
 10. 
 11. 
collapse section12. 
續拾遺和歌集卷第十二 戀歌二
 826. 
 827. 
 828. 
 829. 
 830. 
 831. 
 832. 
 833. 
 834. 
 835. 
 836. 
 837. 
 838. 
 839. 
 840. 
 841. 
 842. 
 843. 
 844. 
 845. 
 846. 
 847. 
 848. 
 849. 
 850. 
 851. 
 852. 
 853. 
 854. 
 855. 
 856. 
 857. 
 858. 
 859. 
 860. 
 861. 
 862. 
 863. 
 864. 
 865. 
 866. 
 867. 
 868. 
 869. 
 870. 
 871. 
 872. 
 873. 
 874. 
 875. 
 876. 
 877. 
 878. 
 879. 
 880. 
 881. 
 882. 
 883. 
 884. 
 885. 
 886. 
 887. 
 888. 
 889. 
 890. 
 891. 
  
 13. 
 14. 
 15. 
 16. 
 17. 
 18. 
 19. 
 20. 

12. 續拾遺和歌集卷第十二
戀歌二

前關白左大臣一條

題志らず

人問はゞよその思といひなさむ藻しほの煙風にまかせて

常磐井入道前太政大臣

みるめなき浦よりをちに立つ煙我をばよそに何こがす覽

從三位行能

名所の百首の歌奉りけるに

煙だに思ひばかりは志るべせよいそまの浦の蜑の藻汐火

按察使高定

戀の歌の中に

おのづから靡く心もありなまし哀れたく藻の煙なりせば

前攝政左大臣

下もえにむせぶ思の夕煙はてはむなしき名にや立ちなむ

前大納言爲氏

徒に立つ名計りや富士のねのならぬ思のけぶりなるらむ

權中納言公雄

かひなしや及ばぬふじの夕煙立つ名ばかりに思消えなば

權大納言忠信

寳治百首の歌奉りける時寄煙戀といへる心を

たぐへても志らじな富士の夕煙なほ立ち昇る思ありとは

[_]
[9]
卿有教女

題志らず

煙たつ淺間の嶽にあらねども絶えぬ思に身をこがすかな

源親長

いたづらに立つや煙のはてもなしあふを限ともゆる思は

源親行

徒らに思ひこがれて年もへぬ人をみぬめの浦の藻しほ火

常磐井入道前太政大臣

よと共に海士のなはたく漁船うきて思のこがれてぞふる

院少將内侍

我戀はなだかの浦のなびきもの心はよれどあふ由もなし

前中納言雅言

文永二年七月白河殿の七百首の歌に、寄網戀

いせの海の網のうけ繩わが方に心もひかぬ人に戀ひつゝ

俊頼朝臣

いかなりける時にか女に遣しける

まどろむに戀しき事の慰まば寐覺をさへは恨みざらまし

前右大將頼朝

題志らず

まどろめば夢にもみえぬ現には忘るゝ程の束のまもなし

前右兵衛督爲教

百首の歌奉りし時

ぬるが内も現の儘のつらさにて思ふ方にはみる夢もなし

後鳥羽院御製

千五百番歌合に

現こそぬるよひ/\も難からめそをだにゆるせ夢の關守

按察使高定

題志らず

さめてこそ後うき物と思ふとも戀しき人を夢にだにみむ

藤原伊信朝臣

あふとみばさても思の慰まではかなき夢は猶ぞかなしき

藤原景家

あふとみて頼むぞ難きうたゝねの夢てふ物は誠ならねば

平時村

ぬるが内にげに逢事もなき夢はいかにみしより頼初め劔

平宣時

ぬるがうちに暫し慰む心かな覺めては夢と思ひしれども

侍從雅有

入道二品親王の家の五十首の歌に

わが袖の泪のいろの露ならばときはの杜も猶や染めまし

權僧正實伊

戀の歌の中に

わが袖に數かくばかり行く水やはかなき戀の泪なるらむ

前大納言忠良

千五百番歌合に

戀をのみしづやのこ菅露深みかりにも袖の乾くまぞなき

大藏卿有家

山賤のおりたつ澤の眞菰草かりにのみこそ袖もぬるらめ

常磐井入道前太政大臣

弘長元年百首の歌奉りし時、不逢戀

風荒きすさの入江の波こえてあぢきなき迄ぬるゝ袖かな

中納言家成

家に歌合し侍りけるに

あさりする海士の衣にあらねども汐垂れまさる袖の上哉

土御門院御製

題志らず

いくよとか袖の志がらみせきもみむ契りし人は音無の瀧

常磐井入道前太政大臣

寳治百首の歌奉りける時、寄瀧戀

ぬきとめよあはずば何をかた糸の亂れておつる瀧の白玉

光明峰寺入道前攝政左大臣

題志らず

年へぬるならの小川に御祓して祈りしせをも猶すぐせとや

常磐井入道前太政大臣

洞院攝政の家の百首の歌に、不遇戀

消えぬべしさのみはいかゞ思ひ川流るゝ水の哀とも見よ

前大納言爲氏

弘長三年内裏に百首の歌奉りし時、寄池戀

根蓴のねぬなはかけてつらさのみ益田の池の自らぞうき

賀茂重保

戀の歌の中に

うらやまし誰れ逢坂の關こえて分るゝ鳥の音を歎くらむ

和泉式部

みな人を同じ心になしはてゝ思ふ思はぬなからましかば

正三位經家

正治の百首の歌に

知るらめやてびきの糸の一筋にわくかたもなく思ふ心を

讀人志らず

題志らず

思ひわびつれなき中はながらへて戀を命と猶やたのまむ

光俊朝臣

文永十年七月内裏の七首の歌奉りし時

ながらへて逢見む事は命とも思はぬ人や身にはかふらむ

從三位顯氏

戀の心を

頼めおく人の心もみるばかりうきに死にせぬ命ともがな

式乾門院御匣

百首の歌奉りし時

契りおく情ばかりを僞のなき世になしてたのみけるかな

平行氏

題志らず

契りしはうゑもとほらぬわすれ水頼むや淺き心なるらむ

藤原爲世朝臣

契隱戀と云ふ事を

今は又あかず頼めし影もみずそことも知らぬ山の井の水

兵部卿隆親

戀の歌の中に

逢ふことのいつを限と頼まねば我泪さへ果てぞ知られぬ

從二位行家

逢ふことは風にわかるゝ浮雲の行末とだにえこそ頼まね

源俊平

寳治の百首の歌奉りける時、寄橋戀

戀ひわたる心は空にかよへども逢ふはよそなる鵲のはし

津守國助

入道二品親王の家の五十首の歌に

さのみやはさのゝ舟橋同じ世に命をかけて戀ひ渡るべき

院辨内侍

建長三年吹田にて十首の歌奉りけるに

逢ふ迄の命を人に契らずばうきにたへてもえやは忍ばむ

典侍親子朝臣

戀の歌とて

逢ふことに誰かはかへむ惜からで我だに今はすつる命を

前大納言爲家

山階入道左大臣の家の十首の歌に、不遇戀

たのまじな逢ふにかへむと契るとも今いく程の老の命は

平時直

題志らず

あふ事にかへぬ命も限あれば戀死ぬとてや人のつれなき

中務卿宗尊親王

思ふにもよらぬ命のつれなさは猶長らへて戀やわたらむ

平義政

逢事をいつとも知らずながらへて命にそふは思なりけり

藤原基頼

逢迄の命とだにも頼まれず人のつらさのはてを志らねば

平政長

久戀のこゝろを

おなじ世を頼む計やつれなくて戀にたへたる命なるらむ

覺助法親王

百首の歌奉りし時

今は又あす志らぬ身もなげかれず此世に頼む契ならねば

中務卿宗尊親王家小督

戀の歌の中に

かくこひむ報を人の思はでや後の世志らずつれなかる覽

信實朝臣

こりざらむ心のはての強面さも身を存へて猶やみせまし

戀死ぬるはてをば志らで逢ふ迄の命を惜しく思ひける哉

左近中將具氏

たがをしむ命なればか死ぬ計なげくに猶もつれなかる覽

山階入道左大臣

常磐井入道前太政大臣の家に十五首の歌よみ侍りけるに

思はずにあはれつれなき命哉いけらば後の頼みばかりに

從二位行家

文永二年九月十三夜五首の歌合に、不逢戀

いける日のつらさに換て逢事をまたぬ命と戀や志なまし

侍從能清

戀の歌の中に

いける身のかひは無れど戀死なば同世をだに猶や別れむ

安嘉門院高倉

寳治の百首の歌奉りける時、寄原戀

戀死なむ命は人のためなればあさぢが原の露をだにとへ

宜秋門院丹後

題志らず

戀死なばうき名計やとゞまらむ我身は苔の下に朽つとも

後徳大寺左大臣

女の許に遣しける

戀死なむ行方をだにも思ひ出よ夕の雲はそれとなくとも
[_]
[9] Kanji in our copy-text here is illegible. SKT reads 藏.