University of Virginia Library

Search this document 

 1. 
 2. 
 3. 
 4. 
 5. 
 6. 
 7. 
 8. 
 9. 
 10. 
 11. 
 12. 
 13. 
 14. 
 15. 
 16. 
 17. 
 18. 
 19. 
collapse section20. 
新後撰和歌集卷第二十 賀歌
 1565. 
 1566. 
 1567. 
 1568. 
 1569. 
 1570. 
 1571. 
 1572. 
 1573. 
 1574. 
 1575. 
 1576. 
 1577. 
 1578. 
 1579. 
 1580. 
 1581. 
 1582. 
 1583. 
 1584. 
 1585. 
 1586. 
 1587. 
 1588. 
 1589. 
 1590. 
 1591. 
 1592. 
 1593. 
 1594. 
 1595. 
 1596. 
 1597. 
 1598. 
 1599. 
 1600. 
 1601. 
 1602. 
 1603. 
 1604. 
 1605. 
 1606. 

20. 新後撰和歌集卷第二十
賀歌

後鳥羽院御製

百首の歌よませ給ひける中に

龜の尾の岩根を落つるしら玉の數かぎりなき千代の行末

常磐井入道前太政大臣

弘長元年百首の歌奉りける時、山

君がすむ龜のを山の瀧つせは千代を心にさぞまかすらむ

後京極攝政前太政大臣

建仁二年鳥羽殿にて池上松風といふ事をはじめて講ぜられけるに

つかへこし深きながれの池水に猶千代までと松風ぞ吹く

大納言通方

西園寺入道前太政大臣のもとへ松の生ひ立ちける石をつかはすとて

千年まで木高き陰のたねしあれば岩にぞ見ゆる松の行末

西園寺入道前太政大臣

返し

岩の上に豫て植ゑける種しあれば千年の松も例とぞ見る

西行法師

題志らず

君が世のためしに何を思はまし變らぬ松の色なかりせば

基俊

鶴老爭齡といふ事をよみ侍りける

松のはな十かへり咲ける君が代に何を爭ふ鶴のよはひぞ

大藏卿行宗

子日の心を

二葉なる子日の小松ゆく末に花さくまでは君ぞ見るべき

院御製

春日野の子日の松に契置かむ神に引れて千世ふべき身は

土御門院御製

春の野の初子の松の若葉よりさしそふ千代の陰は見え鳬

右近大將道平

題志らず

春日山めぐみも志るき松が枝にさこそさかえめ北の藤浪

惟明親王

千五百番歌合に

朝夕に千とせの數ぞ聞えける松と竹とにかよふあらしは

後京極攝政前太政大臣

建仁三年和歌所にて釋阿に九十の賀給はせける時の屏風の歌に

この頃は秋つ島人ときをえて君がひかりの月を見るかな

前大納言雅言

白河殿の七百首の歌に、磯月

鹽の山さしでの磯の秋の月八千代すむべき影ぞ見えける

法皇御製

祝の心をよませ給ひける

三笠山いのる心のくもらねば月日と共に千世やめぐらむ

前中納言定家

建保六年八月中殿にて池月久明といふ事を講ぜられ侍りけるに

いく千世ぞ袖ふる山のみづがきも及ばぬ池にすめる月影

西園寺入道前太政大臣

千々の秋さやけき月のかげまでも畏き御代にすめる池水

前太政大臣

弘安元年八月に月與秋久といへる心を

君が爲曇らぬ影にすむ月のさやかに千世の秋ぞ知らるゝ

前大納言經任

千とせとも限らぬ御代の例とや秋を契りて月もすむらむ

法皇御製

弘安三年九月十三夜人々に十首の歌めされしついでに、月前祝

諸共におなじ雲居にすむ月のなれて千とせの秋ぞ久しき

院御製

おなじ心をよませ給うける

幾千世もかくこそは見めすむ月の影もくもらぬ秋の行末

皇太后宮大夫俊成女

千五百番歌合に

咲きにけり君が見るべきゆく末は遠里小野の秋はぎの花

正三位家衡

名所の歌奉りける時

久しかれなびく稻葉の末までもとはたの面の世々の秋風

後一條入道前關白左大臣

題志らず

菊の露積りて淵となるまでに老いせぬ花を君のみぞ見む

後京極攝政前太政大臣

文治六年女御入内の屏風に

君が代に匂ふ山路の白菊はいくたび露のぬれてほすらむ

西園寺入道前太政大臣

前中納言定家歳の暮にはじめて京極の家に移りけるに遣しける

新しき春を近しとさきぐさの三葉四葉に兼ねて志らるゝ

前中納言定家

返し

頼む哉春と君としまぢかくば三葉四葉の千世のとなりを

藤原景綱

平時範が常磐の山莊にて、寄花祝と云ふ事をよみける

うつろはで萬代匂へ山ざくら花もときはの宿の志るしに

入道前太政大臣

弘安元年百首の歌奉りし時

水上も末もはるけし大井河君すむやどの絶えぬながれは

太上天皇

寄鶴祝言といふ事を

芦鶴の雲居に通ふ聲のうちにかねても志るし千世の行末

法皇御製

弘安元年百首の歌めされしついでに

草香江の入江のたづも諸聲に千世に八千代と空に鳴くなり

寂蓮法師

千五百番歌合に

浪の上に藥求めし人もあらばはこやの山に道志るべせよ

遊義門院

法皇六十ぢにみたせ給ひけるに壽命經供養せられけるついでに銀の杖奉らるとて

つく杖に六十ぢこえ行く今年より千年の坂の末ぞ久しき

照念院入道前關白太政大臣

弘安八年三月從一位貞子九十の賀給はせける時よみ侍りける

年へぬる老木の花も此春のみゆきに逢ひて千世や重ねむ

前關白左大臣

九十ぢにふるかひありて君が爲けふのみゆきも萬代の春

太上天皇

東二條院七十ぢにみたせ給ひける時よみ給ひける

百年に君が七十ぢ逢ひにあひて共に八千世の春や待つ覽

院御製

祝ひそむる今日をや千代の始とて契る齡の末ぞはるけき

入道前太政大臣

從一位貞子九十の賀給はせける時よみ侍りける

代々の跡に猶立越ゆる老の波よりけむ年は今日の爲かも

津守經國

後鳥羽院の御時八十島のまつりによみ侍りける

天の下のどけかるべし難波がた田蓑の島に御祓志つれば

前中納言家光

嘉禎元年大甞會の悠紀の神樂の歌、石戸山

神代より祈るまことの志るしには岩戸の山の榊をぞとる

民部卿經光

寛元四年悠紀の風俗の歌、三神山

玉椿かはらぬ色を八千代とも三神の山ぞときはなるべき

前中納言兼仲

正安三年悠紀の風俗の神樂の歌、三神山

榊とる三神の山にゆふかけて祈るひつぎの猶やさかえむ
新後撰和歌集終