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新後撰和歌集卷第十六 戀歌六
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16. 新後撰和歌集卷第十六
戀歌六

中務卿宗尊親王

絶經年戀といふ事を

いたづらに年のみこえてあふ坂の關は昔の道となりにき

後京極攝政前太政大臣

家の六百番歌合に

やすらひに出でにし人の通路を深き野原とけふはみる哉

前中納言定家

いはざりき我身ふるやの忍草思ひたがへて種をまけとは

讀人志らず

題志らず

枯れはてし人は昔のわすれ草わすれず袖にのこる露かな

院御製

つらかりし心の秋もむかしにて我身に殘るくずのうら風

權中納言公雄

弘安元年百首の歌奉りし時

思へたゞ野べの眞葛も秋風のふかぬ夕べは恨みやはする

寂超法師

戀の歌の中に

むかし見しふる野の澤のわすれ水なに今更に思ひいづ覽

津守國平

從二位行家住吉の社にて歌合し侍りけるに、恨絶戀

我ながらつらくなるみの汐干潟恨みし末ぞ遠ざかりぬる

從二位家隆

後京極攝政の家の六百番歌合に

思ふにはたぐひなるべきいせの蜑も人を恨ぬ袖ぞ濡ける

法皇御製

百首の歌よませ給ひける時、恨戀

とはゞやな恨みなれたる里の蜑も衣ほすまはなき思かと

光俊朝臣

寳治百首の歌奉りける時、寄衣戀

いつまでのつらさなりけむ唐衣中にへだてし夜はの恨は

左近大將家平

戀の歌の中に

つらく共さのみはいかゞ唐衣うき身をしらで人を恨みむ

從三位行能

山賤のしづはたおびのいく歸りつらき恨にむすぼゝる覽

道倶法師

道理と戀しきまでは思ひしかつらきにだにもぬるゝ袖哉

中務卿宗尊親王

恨みこし心も今はなき物をたゞ戀しさのねのみなかれて

藤原忠資朝臣

恨みての後さへ人の戀しきやつらさにこりぬ心なるらむ

前大納言教良

いかにせむ思ひたえたるこの頃は恨みし程の慰めもなし

中臣祐春

厭はるゝうき身の程を忍ばずばつらき類も人にとはまし

三條入道左大臣

身をつまば思知らずもなからまし人は恨みに習はざり鳬

平行氏

我さへに忘ると人や思ふ覽餘りになれば言はぬつらさを

津守經國

一すぢに身を恨むべき契かな人やはいひし物おもへとは

大江頼重

今は又いかにいはまし恨みての後さへつらきひとの心を

入道二品親王性助

うきを猶忍ぶ我身の強面さは人のつらさに劣りやはする

今上御製

百首の歌めされしついでに、人傳恨戀

人傳にいへどもいとゞつれなきは我思ふ程や恨みざる覽

恨戀の心を

はかなくも思ひもはてぬ我身かな恨むる迄の頼み殘して

左大臣

百首の歌奉りし時、忘戀

つきもせず恨みざらまし憂人に忘らるゝ身の思志られば

讀人志らず

題志らず

よしさらば恨ははてじ數ならぬ身のとがに社思ひなす共

前大僧正實承

院に三十首の歌奉りし時、恨戀

人をのみ猶恨むとや思ふらむ身をかこちてもおつる泪を

前大納言爲世

百首の歌奉りし時、同じ心を

つらく共是を限といひやらむげに身を捨てば人や惜むと

前中納言有房

命だにつらさにたへぬ身なりせば此世乍は恨みざらまし

院御製

戀の歌の中に

逢ふことにかへし命のまゝならば人のつらさも又は歎かじ

右大臣家讃岐

よしさらば人のつらさも有て憂き命の咎となして恨みじ

平宣時朝臣

さのみやはつらさにたへて存らへむ限ある世の命なれ共

讀人志らず

恨むともせめて知する中ならば哀をかくる折もあらまし

權中納言經平女

とはれぬをうしともともせめて言てまし唯等閑のつらさなりせば

藤原爲宗朝臣

斯計り思ふにまけぬつらさ社身を知る中も恨みられけれ

後嵯峨院大納言典侍

つらしとて思捨つるも叶はぬを易くぞ人の忘れ果てける

後嵯峨院御製

白河殿の七百首の歌に恨不逢戀といふこと

年月はあはぬ恨と思ひしに恨みてあはず何時なりにけむ

前關白太政大臣

百首の歌奉りし時、恨戀

行末を契りしよりぞ恨みましかゝるべし共兼て知りせば

右大臣

恨みても猶同じ世にありふるやつらさを知らぬ命なる覽

近衛關白左大臣

題志らず

うき乍らなれぬる物は年月のつらさをかこつ涙なりけり