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新後撰和歌集卷第十 神祇歌
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10. 新後撰和歌集卷第十
神祇歌

太上天皇

百首の歌めされし序でに、神祇

千早ぶる七代五代の神世より我があし原に跡をたれにき

二品法親王覺助

題志らず

神もしれつきすむ夜半の五十鈴河ながれて清き底の心を

讀人志らず

神路山引くしめ繩の一すぢに頼む契りは此の世のみかは

荒木田延成

榊もてやつの石つぼふみならし君をぞいのるうぢの宮人

大中臣定忠朝臣

卷もくの珠城の御代に跡垂れて宮居ふりぬる五十鈴河上

度會行忠

くもりなきあまてる神のます鏡昔を今にうつしてしがな

讀人志らず

君が代を祈ればまもる神路山深き誓ひといふもかしこし

後嵯峨院御製

寳治の百首の歌めしける次でに、寄社祝

石清水きよき心にすむときく神のちかひは猶もたのもし

院御製

神祇の心を

石清水にごらじとおもふ我が心人こそしらね神はうく覽

天台座主道玄

千早ぶるその神山の中におつる御手洗河の音のさやけさ

前大僧正禪助

すみそめし昔を神も忘れずば猶みたらしの末もにごらじ

後鳥羽院御製

百首の歌よませ給ひける時、神祇

千早振神や知るらむもろかづら一方ならずかくる頼みを

太上天皇

同じ心を

名もしるし色をも變へぬ松の尾の神の誓は末の世のため

前參議雅經

前中納言定家祖父中納言俊忠春日の社行幸の賞にて従三位に叙して侍りける朝申し遣しける

神もまた君がためとや春日山ふるきみゆきの跡殘しけむ

前中納言定家

返し

埋れしおどろの道を尋ねてぞふるき御幸の跡もとひける

前太政大臣

神祇の歌の中に

過ぎゆけど忘れぬものを春日野のおどろに餘る露の惠は

藤原道經

中納言家成の家の歌合に、祝

三笠山おひそふ松を君が代の千世のためしと神や見る覽

永福門院

題志らず

天のしたをさまりぬらし三笠山あまねくあふぐ神の惠に

後一條入道前關白左大臣

誰れか又あはれを懸けむゆふ襷頼む春日の誓ひならでは

民部卿資宣

春日の社に詣でゝよみ侍りける

祈りても知らぬ我身の行く末を哀れいかにと神は見る覽

前右兵衛督教定

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に

小鹽山知らぬ神代はとほけれど松吹く風に昔しをぞきく

中務卿宗尊親王

神祇の心を

住吉の浦わの松のわかみどり久しかれとや神もうゑけむ

前右兵衛督爲教

從二位行家住吉の社にて歌合し侍りけるに

神がきや松の緑にかげ添へて頼むにさける花のしらゆふ

皇太后宮大夫俊成

久安の百首の歌に

いくかへり波の白ゆふかけつらむ神さびにけり住吉の松

前大納言經任

題志らず

住吉の浦の松が枝としを經て神さびまさるかぜの音かな

法眼慶融

前大納言爲氏住吉の社にて歌合し侍りける時、社頭松を

代々絶えぬ道につけても住吉の松をぞ仰ぐ頼むかげとは

津守棟國

題志らず

身をかくすかげとぞ頼む神垣におひそふ松のしげき惠を

皇太后宮大夫俊成

住吉の社によみて奉りける百首の歌の中に

和歌の浦のみちをばすてぬ神なれば哀をかけよ住吉の浪

津守國助

神祇の歌の中に

敷嶋の道まもりける神をしもわが神垣とおもふうれしさ

權大納言實國

廣田の社の歌合に、述懷

天くだる神の惠みのしるしあらば星の位に猶のぼりなむ

皇太后宮大夫俊成

久安の百首の歌に

思ふ事三輪の社に祈り見む杉はたづぬるしるしのみかは

前大納言爲氏

題志らず

さゞ波や神代の松のそのまゝに昔ながらのうら風ぞふく

祝部成茂

寳治の百首の歌奉りける時、浦船

辛崎やきよき浦わに漕ぎ歸る神の御船のあとをしぞ思ふ

天台座主道玄

題志らず

曇なき世を照さむとちかひてや日吉の宮の跡をたれけむ

祝部成茂

あひにあひて日吉の空ぞさやかなる七つの星の照す光に

前大僧正慈鎭

日吉の社によみて奉りける歌の中に

暫しだに晴るゝ心やなからまし日吉の蔭の照さゞりせば

法眼源承

題志らず

くもりなき神の三室のかげそへてむかふ鏡の山の端の月

祝部國長

榊葉や六十ぢ餘りの秋の霜置き重ねても世をいのるかな

祝部成賢

神垣にわが老らくのゆふかけて猶さしそふるみねの榊ば

前大僧正慈鎭

日吉の社に百首の歌よみて奉りけるに皇太后宮大夫俊成われもよみて奉るべき由申しながらさも侍らざりければ遣しける

いかでかは君も匂ひを添へざらむ神にたむくる百種の花

皇太后宮大夫俊成

返し

手向くべき心計りは有り乍ら花にならべむ言の葉ぞなき

祝部忠長

神祇の歌の中に

手向け置く露の言葉の數々に神も哀れやかけてみるらむ

前大僧正公澄

日吉の社にまうでゝよみ侍りける

祈る事神より外にもらさねば人にしられずぬるゝ袖かな

前大納言爲家

人々すゝめて玉津島の社にて歌合し侍りけるに、社頭述懷を

跡たれしもとのちかひを忘れずば昔にかへれ和歌の浦波

前大納言爲氏

神だにも我道まもれみしめ繩世の人ごとは引くによるとも

祝部行氏

題志らず

年をへて祈る心をしきしまの道ある御代に神もあらはせ

鎌倉右大臣

端籬の久しき世よりゆふだすきかけし心は神ぞしるらむ

太上天皇

千はやぶる神も光をやはらげてくもらず照せ秋の夜の月

前中納言定家

千五百番歌合に

さ根掘じて榊にかけし鏡こそ君がときはの蔭は見えけれ

野宮左大臣

榊葉に霜の志らゆふかけてけり神なび山のあけぼのゝ空

鴨祐世

神祇を

色かへぬ三室の榊年を經て同じときはに世をいのるかな

祝部成久

神垣に思ふ心をゆふしでのなびくばかりにいかで祈らむ

平時村朝臣

跡たれて神は幾代をまもるらむおほ宮柱いまも朽ちせず

皇太后宮大夫俊成

賀茂重保社頭にて歌合し侍りけるに、述懷の心を

立歸り捨てゝし身にも祈るかな子を思ふ道は神も知る覽

法皇御製

弘安元年百首の歌めされし次でに

すべらぎの神の御言をうけきつるいや繼々に世を思ふ哉

後鳥羽院御製

熊野に參らせ給ひける時よませ給ひける

世をてらす影と思へば熊野山こゝろの空にすめる月かな