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新後撰和歌集卷第十八 雜歌中
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18. 新後撰和歌集卷第十八
雜歌中

權中納言俊忠

桂の家にてうれふる事侍りける頃月を見てよみ侍りける

眺めつる心のやみもはるばかりかつらの里にすめる月影

基俊

月の歌の中に

夜もすがら獨待ち出でゝ眺むればうきことのみぞ有明の月

二品法親王覺助

弘安元年百首のうた

[_]
[8]
たてつまりし時

いつかわれ涙にぬるゝ影ならで袖より外の月を見るべき

入道二品親王性助

題志らず

思ひやれさらでもぬるゝ苔のそで曉おきの露のしげさを

法印憲基

正安元年九月の頃衣笠殿にて御如法經侍りし時三七日の懺悔こよひはつべき日になりて名殘をしき由など申しける人の返事に

なれきつる曉おきの鐘のおとも一夜計りになるぞ嬉しき

式乾門院御匣

題志らず

いつまでと聞くにつけても悲しきは老のねざめの曉の鐘

法皇御製

百首の歌よませ給ひける時、曉

しづかなるねざめ夜深き曉の鐘よりつゞく鳥のこゑ%\

太上天皇

閑庭松といふ事をよませ給ひける

かくしこそ千年も待ため松が枝の嵐志づかにすめる山里

遊義門院

龜山殿にて山家の心を

峯のあらし麓の川の音をのみいつまで友とあかし暮さむ

前大僧正道瑜

那智の山に千日こもりて出で侍りける時よみ侍りける

三年へし那智のを山のかひあらば立ち歸るらむ瀧の白浪

讀人志らず

題志らず

大原やおぼろの清水汲みて知れすます心も年へぬる身を

蓮生法師

同じ心におこなひける人のもとに遣しける

忘るなよながれの末はかはるともひとつみ山の谷川の水

前大納言爲氏

寳治の百首のうた奉りける時、山家水

すまば又すまれこそせめ山里は筧の水のあるにまかせて

式乾門院御匣

山家の心を

靜かなる草の庵の雨のよを訪ふ人あらばあはれとや見む

土御門院御製

世のうきにくらぶる時ぞ山里は松の嵐も堪へてすまるゝ

法皇御製

さびしさも誰にかたらむ山陰の夕日すくなき庭の松かぜ

前大納言爲氏

天台座主道玄無動寺にすみ侍りける頃申し遣しける

聞くまゝにいかに心のすみぬらむ昔のあとの嶺のまつ風

天台座主道玄

返し

訪はるゝやむかしの跡のかひならむ我山ざとの庭の松風

讀人志らず

題志らず

まつ風の音を聞かでや山里をうき世の外と人はいひけむ

津守國助

とへかしな霞の衣をかさねてもあらしさむけき峰の庵を

藤原盛徳

すみわびば立ち歸るべき故郷をへだてなはてそ嶺の白雲

前大納言爲家

住初めし跡なかりせば小倉山いづくに老の身を隱さまし

天台座主道玄

百首の歌奉りし時、山家

山里に世をいとはむと思ひしは猶ふかゝらぬ心なりけり

平泰時朝臣

題志らず

思ふにはふかき山路もなきものを心の外に何たづぬらむ

前大僧正實伊

訪はれねば世の憂事も聞えこず厭ふかひある山の奥かな

讀人志らず

世のうさを歎く心の身にそはゞ山の奥にも住まむ物かは

九條左大臣女

思ひ入る吉野の奥もいかならむ憂世の外の山路ならねば

從三位基輔

世をうしと思も入れぬ月だにも澄みける物を山の奥には

二品法親王覺助

弘安元年百首の歌奉りしとき

契あらば又やたづねむ吉野やま露わけわびしすゞの下道

顯意上人

山家の心を

今はよし浮世のさがと志りぬれば又こと山に宿は求めじ

賀茂在藤朝臣

憂き事の聞えこざらむ山影を誰にとひてか身を隱さまし

藤原爲信朝臣

百首の歌奉りし時、おなじ心を

寂しさも身のならはしの山里に立ち歸りてはすむ心かな

心圓法師

題志らず

世を厭ふ山の奥にもすまれぬや我身にそへる心なるらむ

前大納言實家

寂しさも流石慣行く柴の戸は暫しぞ人のこぬも待たれし

式乾門院御匣

里とほき宿の眞柴のゆふ烟たゝぬも猶ぞさびしかりける

法印最信

山ふかみ昔や人のかよひけむ苔の志たなる谷のかけはし

三條入道左大臣

守覺法親王の家の五十首の歌に

思ひ出づる人はありとも誰か此苔ふりにける道を尋ねむ

惟康親王家右衛門督

題志らず

迷はじな通ひなれたる山人のつま木の道は志をりせず共

藤原基政

よみおきて侍りける歌を前中納言定家の許に遣すとてつゝみ紙に書き付けゝる

おろかなる心は猶もまよひけり教へし道の跡はあれども

津守國助

觀意法師續拾遺集にかへり入りて侍りける時申し遣しける

思のみ滿ちゆく汐の蘆分にさはりも果てぬ和歌のうら舟

觀意法師

返し

後れてもあし分け小舟入る汐にさはりし程を何か恨みむ

入道前太政大臣

弘安元年百首の歌奉りし時

あし原の跡とばかりは忍べどもよる方志らぬ和歌の浦浪

前大納言爲氏

つかさめしの頃爲世が參議を望み申すとて奏し侍りける

和歌の浦に獨老いぬるよるの鶴の子の爲思ふね社なかるれ

法皇御製

御返し

和歌の浦に子を思ふとて鳴く鶴の聲は雲居に今ぞ聞ゆる

前大納言爲家

題志らず

垂乳根の親のいさめの數々に思ひ合せてねをのみぞなく

丹波長有朝臣

つたへ置く言の葉にこそ殘りけれ親のいさめし道芝の露

前大納言良教

弘長三年内裏の百首の歌に、窓竹

いかにして窓に年へし笛竹の雲居にたかくねを傳へけむ

豐原政秋

述懷の心をよめる

家の風吹くとはすれど笛竹の代々に及ばぬねぞ泣れける

源有長朝臣

風さわぐ荒磯浪に引く網の置きどころなき身を恨みつゝ

前右近大將頼朝

前大僧正慈鎭にまかりあひて後に遣しける

逢ひみてし後はいかこの海よりも深しや人をおもふ心は

前大僧正慈鎭

返し

頼む事深しといはゞ渡つ海もかへりて淺くなりぬべき哉

入道二品親王性助

題志らず

消えやらで波に漂ふうたかたの寄邊志らぬや我身なる覽

内大臣

淀むなよ佐保の河みづ昔よりたえぬながれの跡に任せて

藤原嗣房朝臣

稻舟ものぼりかねたる最上川志ばし計といつを待ちけむ

前内大臣

一品ののぞみとゞこほり侍りける頃人のもとに遣しける

のぼりえぬ淀の筏の綱手繩この瀬ばかりをひく人もがな

民部卿資宣

つかさめしに恨むる事ありける頃人のとぶらひて侍りける返事に

憂に猶たへてつれなき末の松こゆる浪をもえこそ恨みね

前大納言教良

述懷の歌の中に

玉鉾のみちある御代の位山ふもとにひとり猶まよふかな

太上天皇

除目のあした尚侍藤原現子朝臣に給はせける

そのかみに頼めしことの違はねばなべて昔の代にや返らむ

尚侍藤原現子朝臣

御返し

契りこし心の末は知らねどもこのひと言や變らざるらむ

前大納言經任

太宰權帥にかへりなりて侍りける頃人のよろこび申しける返事に申して侍りける

知らざりき香椎の挿頭年ふりて過にし跡に歸るべしとは

源兼泰

題志らず

くり返し猶うきものは數ならでわが身老蘇の杜の志め繩

藤原基頼

身一つのうきに限らぬ此世ぞと思ひなせども濡るゝ袖哉

前關白太政大臣

思ふともそれによるべき世ならぬを何歎かるゝ心なる覽

賀茂久世

ことわりと思ひなすべき心さへ身を忘れては猶歎くかな

源師光

さりともと儚き世をも頼む哉あるべき程はみゆる我身を

惟宗忠宗

中々に憂もつらきも知られずば心の儘に世をやすぐさむ

左近中將具氏

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に

とにかくに我から物を思ふ哉身よりほかなる心ならねば

式乾門院御匣

題志らず

大方の世をも恨みじ心だにうき身に叶ふならひなりせば

平久時

うしといふもたゞ大方の習ひとや心を知らぬ人は思はむ

權僧正尊源

よしさらばあるに任て過してむ思ふに叶ふ浮世ならねば

行生法師

おろかなる心をいかに慰めてうきを報とおもひわかまし

前大納言實家

うしとても身に喞つべき方ぞなき此世一つの報ならねば

天台座主道玄

行末の何かゆかしきこし方にうき身の程は思ひしりにき

平時茂

ながらへばうき事やなほ數そはむ昔も今も物ぞかなしき

法印圓勇

世中に猶もつれなく長らへてうきを知らぬは命なりけり

圓道法師

行末もさこそと思へばあらましの慰めだにもなき我身哉

前右衛門督基顯

せめて我が身の慰めのなき儘にうき例をぞ今はかぞふる

道洪法師

世中を恨むるとしはなけれども身のうき時ぞ涙おちける

法印定意

憂き事を思續けてねぬる夜は夢の内にもねぞなかれける

前參議能清

いつ迚も變らず夢は見しかども老の寐覺ぞ袖はぬれける

平時廣

物をのみ思ひなれたる老が身にねざめせられぬ曉もがな

前僧正實伊

はかなくも我があらましの行末を待つとせしまの身社老ぬれ

前右兵衛督爲教

弘安元年百首の歌奉りし時

見ても猶ありしにも似ぬ面影や老をますみの鏡なるらむ

鴨長明

題志らず

いかにせむ鏡のそこにみづはぐむ影も昔の友ならなくに

前大納言忠良

あくがれて世のうき度にとゞまらぬ心の友や涙なるらむ

平時元

濁江の葦間に宿る月みればげにすみ難き世こそ知らるれ

天台座主道玄

平親世人々に歌よませ侍りけるによみて遣しける

道のべに茂る小笹の一ふしも心とまらぬこの世なりけり

後久我太政大臣

述懷の心を

心なきいづみの杣の宮木だにひく人あれば朽果てぬ世を

平宗宣

あづさ弓心のひくに任せずば今もすぐなる世にや返らむ

藤原爲信朝臣

味氣なく思知らるゝ世のうさも身の數ならば猶や歎かむ

入道前太政大臣

弘安元年百首の歌奉りし時

存へていかになるべきはてぞ共我さへ知らぬ身の行方哉

大江忠成朝臣女

題志らず

何事にしばしうき身の忘られて思ひなぐさむ心なるらむ

中臣祐世

世をうしと何歎きけむ背かれぬ心ぞ身をば思はざりける

平時村朝臣

世中の憂につけてもつらからじ身を人數に思ひなさずば

院大納言典侍

とにかくに思ひし事のかはる世は我心とて頼みやはする

高階宗成朝臣

ありへてもたが厭ふべき浮世とて猶身をすてぬ心なる覽

永福門院少將

心からうきを忍びていとはぬや歎くべき身の報なるらむ

法眼能圓

世の人の數にもあらばいかならむ憂にだに猶背かれぬ身は

參議雅經

厭はじな偖もなからむ後は又戀しかるべき此世ならずや

從二位行家

いつかわれ背かざりけむ古をくやしき物と思ひ志るべき

按察使資平

哀れなど身をうき物と厭ひても猶すてやらぬ心なるらむ

[_]
[9]
金判盛久

背くべき理りしらぬ心こそうき世に身をば惜みとめけれ

良心法師

憂世とて背き果てゝも如何せむあらましにだに變る心を

靜仁法親王

世中をうしといひてもかひぞなき背かれぬ身の心弱さに

殷富門院大輔

まつ事のあるだに定なき物を何を頼むとすぐすなるらむ

按察使高定

哀れいつわがあらましの限にて背きはつべき浮世なる覽

平時常

いかゞせむ厭ふとも猶世の中を歎く心のもとの身ならば

道洪法師

厭へども猶長らふる命こそうき世に殘るつらさなりけれ

心海上人

命をばいかなる人の惜むらむ憂にはいける身社つらけれ

寂蓮法師

守覺法親王の家の五十首の歌に、述懷

うしとのみ厭ふさへ社哀なれある物とやは身を思ふべき

法印定爲

題志らず

はかなくも思ひすてゝし同じ身を世にあり顏に猶歎く覽

前僧正道性

世を遁れて後百首の歌よみ侍りける中に

涙こそ心も志らね捨てしより何のうらみか身には殘らむ

内大臣

百首の歌奉りし時、述懷

仕へこし代々の昔の名殘とて殘るばかりに身をや喞たむ

前大納言實家

同じ心を

いかゞせむ關の藤川代々をへて仕へし跡にうきせ殘さば

權中納言公雄

小倉の山庄思の外なる事いできて住まずなりにける頃よみ侍りける

代々かけて思をぐらの山水のいかに濁ればすまずなる覽

そののち程なく歸り住み侍りけるを悦び申しける人の返事に

山水に二たび影を宿しても濁らぬ世こそ身に志られけれ

後嵯峨院御製

題志らず

道あれとなにはの事も思へども蘆わけ小舟末ぞとほらぬ

普光園入道前關白左大臣

むくゆべき世の理は思へども民のちからを助けやはする

太上天皇

百首の歌めされしついでに、述懷

ふして思ひ起きても歎く世の中に同じ心と誰をたのまむ
[_]
[8] SKT reads たてまつりし.
[_]
[9] SKT reads 金刺盛久.