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新後撰和歌集卷第十三 戀歌三
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13. 新後撰和歌集卷第十三
戀歌三

從二位家隆

後京極攝政の家の六百番歌合に

偖もなほ人の心を志らぬまは契るさへこそ思ひなりけれ

今上御製

忍契戀といふ事をよませたまひける

誠かと又おしかへし問ふ程の人目のひまもなき契りかな

前大納言爲家

山階入道左大臣の家の十首の歌に、寄心戀

僞のある世悲しき心こそたのまじとだにおもひさだめね

鷹司院帥

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に

頼め置く人の契ぞあり果てぬ命待つまもうたがはれける

院御製

戀の心を

逢事を志らぬ頼みはかひなくて契計りに身をや換へてむ

前中納言定家

後京極攝政の家の六百番歌合に

味氣なし誰もはかなき命もて頼めば今日の暮をたのめよ

從一位
[_]
[6]A

題志らず

人傳ての僞りにだにおのづから哀をかくる言のはもがな

遊義門院權大納言

内裏に百首の歌奉りし時、切戀

契しもあらぬ世にとはきかざりき戀死なでまつ命共がな

法印定圓

契戀

さならではたのめも置かじ僞のある世ぞ人の情なりける

藤原光盛

僞を頼までもまたいかゞせむ兼ねて志らるゝ誠ならねば

素暹法師

いつはりと思ひながらや契るらむ志らばや人の下の心を

前參議能清

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に

おのづから僞ならぬ契りをも我が心とやたのまざるらむ

平宗宣

題志らず

頼むるを命になしてすぐす身は僞りかともよしや思はじ

高階成朝

さのみまた人の心をうたがはゞ我が僞りの程や志られむ

前中納言資高

僞りの言の葉ぞとて頼まずばうき身に契る人やなからむ

前中納言俊光

げに思ふ心の底の知られねば契るまゝにもえやは頼まむ

按察使實泰

さり共と思ひ乍らも待つほどは猶身のうさに疑はれつゝ

津守國道

僞を頼むにこそはなりもせめ待たずと爭で人にきかれむ

近衛關白左大臣

契りしを人の誠と頼みてもまたいかならむゆふぐれの空

安嘉門院大貳

待ち見ばやよも僞になりはてじ強ひてたのめし夕暮の空

賀茂久世

さりともと此夕暮を待たるゝやいひしを頼む心なるらむ

法眼源承

となせ川越す筏士のみなれ棹さして頼めし暮ぞまたるゝ

前大納言實冬

暮るゝ間をはかなく急ぐ心かなあふにかへむと誓ふ命に

院御製

忘れても訪はずもぞなる契置きし暮ぞと人に驚かさばや

前僧正道性

思へたゞ頼めぬだにも待たるゝに今宵といひし心盡しは

大藏卿隆博

僞を思ひ知らぬになし果てゝ又なほざりの暮を待つかな

賀茂經久

契りしは唯なほざりの夕べともしらで待ちける程ぞ儚き

法印定爲

百首の歌奉りし時、待戀

今宵だにいかに夕けの占ぞ共聞き定めてや人をまたまし

讀人志らず

戀の歌の中に

更けにけるうらみや猶も殘るべき僞ならぬ今宵なりとも

津守國助

人目よく道はさこそと思へ共慰めがたく更くる夜半かな

前參議實時

思ひやれ空頼めせぬ月だにも待つは心をつくすものとは

法眼兼譽

待ち侘びて更け行く月の影のみや寐ぬ夜の袖の泪とふ覽

平宗泰

更けぬるは來ぬ人故に憂き物を待たれ顏にも出づる月哉

藤原親方

掻暮す泪しなくば來ぬ人のつらさにかへて月も見てまし

昭慶門院一條

百首の歌奉りしとき、待戀

更けぬ共暫しはまたむ山の端の月みて後も思ひいづやと

九條左大臣女

題志らず

頼めても來ぬ人つらきよひ/\に僞知らで出づる月かな

今上御製

月前待戀といへる心を

僞に更け行く程のしらるれば待つ夜の月の影はながめじ

典侍親子朝臣

おなじ心を

頼めしは今夜もいかに成ぬらむ更けぬる物を山の端の月

參議雅經

千五百番の歌合に

山の端に入るまで月を詠むともしらでや人の有明のそら

後嵯峨院御製

寄月戀を

かへるさの別のみかはまつ人のつれなきもうき有明の空

藤原爲藤朝臣

百首の歌奉りし時、待戀

更ぬればせめて頼みのなき儘に今宵もあすの暮ぞ待るゝ

前大納言資季

弘長三年内裏の百首の歌奉りける時、寄戸戀

訪るべき其あらましに槇の戸を頼めぬよはもさゝで明ぬる

參議雅經

寄鳥戀

待侘びてこぬ夜空しく明けゆけば泪數そふ鴫のはねがき

待賢門院堀河

久安の百首の歌に

頼めずばうき身のとがと歎きつゝ人の心を恨みざらまし

前大僧正道瑜

題志らず

たのめぬを我心よりまち兼て人のうきにや思ひなすべき

平時常

たのまじと思ひなりても僞にかはらでまつは心なりけり

左近中將具氏

うかりける人の言の葉歎けとてなど僞の有る世なるらむ

左近中將冬基

契しに變ると聞くもつらからず偖も問るゝ習はなければ

法印圓伊

うらみじよ思へば人のこぬ迄も情にこそは契り置きけめ

按察使實泰

百首の歌奉りし時、待戀

慰むる我あらましに待慣れてさのみねぬよの數や重ねむ

後嵯峨院御製

寳治の百首の歌めしけるついでに、寄關戀

聞く度に勿來關の名もつらし行ては歸る身に知られつゝ

權大納言師重

五首の歌合に、來不留戀

待ちえてもやがて別の夕こそとふさへつらき契なりけれ

前大納言經任

月前逢戀といふ事を

獨寐の床に馴れこし月影をもろ共にみるよはも有りけり

中務卿宗尊親王家小督

戀の歌の中に

つらかりし時社あらめ逢見ての後さへ物はなどや悲しき

前大僧正深惠

歎きわび逢ふにかへむと思ひしはうかりし迄の命なりけり

前大僧正聖兼

忍會戀を

うつゝとも思ひ定めぬ逢ふ事を夢にまがへて人に語るな

從二位家隆

題志らず

君も又あふとみる夜の夢ならば誰れ別れのまづはさむ覽

前大僧正慈鎭

嬉しさを今夜つゝまむ爲とてや袖は泪にくちのこりけむ

中臣祐賢

忘られむ後の浮名を思ふにも逢ふとはよその人にしられじ

光俊朝臣

前大納言爲家日吉の社にて歌合し侍りけるに、寄枕忍戀

忍ぶ山岩ねの枕かはすともした行く水のもらさずもがな

大藏卿重經

戀の歌の中に

いかゞせむ待つ程過て更くる夜に頓て名殘の惜しき別を

尚侍藤原現子朝臣

五首の歌合に、來不逢戀

通ひくる名のみ荒磯の濱千鳥跡はしばしもなどか止めぬ

權中納言國信

別戀の心を

心ある鳥のねならばいか計今ひとゝきもうれしからまし

讀人志らず

別るればおなじ心にうしとのみゆふ附鳥のねをぞ恨むる

大江頼重

曉の別れもしらぬ鳥の音は何のつらさに鳴きはじめけむ

法眼源承

せめて猶後の世をこそ頼めつれ存らへぬべき別ならねば

平盛房

あだになど思ひそめけむ朝露のおき別れてもきえぬ命を

大納言通具

千五百番の歌合に

曉の床は草葉のなになれや露にわかれのなみだそふらむ

寂蓮法師

後京極攝政の家の六百番の歌合に

逢ふまでの思はことの數ならで別れぞ戀のはじめなりける

源親長朝臣

題志らず

あぢきなく又有明やつらからむこれを限の別れならずば

大江茂重

歸るさの忘れがたみの袖の月それも止らず明くる空かな

藻壁門院少將

洞院攝政の家の百首の歌に、後朝戀

有明の月はかたみに頼まれず暮まつ迄の身にもそはねば

前大納言教良

題志らず

ながらへて又あふ事も知らぬ身は是やかたみの有明の月

前大納言實教

形見とて我れこそみつれ面影を人はのこさぬ有明のつき

前大僧正慈鎭

うつゝこそ今朝は中々悲しけれ歸る恨みは夢に見ざりき

俊惠法師

我ならぬ葛の裏葉もけさみれば歸るとて社露もこぼるれ

式乾門院御匣

分けわびぬ袖の別のしのゝめに泪おちそふ道しばのつゆ

祝部成良

もらすなよ道のさゝ原ふみ分けし一夜のふしの露の手枕

平久時

ありしよの後はたがひに忍びきてかよふ心もしらぬ中哉

近衞關白左大臣

弘長三年内裏の百首の歌奉りける時、寄水戀

逢ひみてもはかなき物は行く水に數かきとめぬ契なりけり

尚侍藤原現子朝臣

戀の歌の中に

一すぢに頼む心のなくもがな變らばつらき身とも社なれ

前大納言爲氏

文永七年九月盡、内裏の三首の歌に、契戀

代々かけて波こさじとは契るともいさや心のすゑの松山

從三位隆教

題志らず

淺くとも頼みこそせめ泪川さても逢ふせの變り果てずば

藤原泰基

逢ふ事を猶や頼まむかた糸のくる夜まれなる契なりとも

從三位光成

誰が方に心をかけて下ひもの稀にあふよもむすぼゝる覽

内大臣

遠戀の心を

思ひやる人の心をへだてずばいくへもかゝれ峯の志ら雲

藤原爲信朝臣

尋ねても行方志るべき契かはもろこし舟のあとの志ら波

從三位氏久

戀の歌の中に

渡つみの底と知てもいかゞせむみるめは己が心ならねば

前中納言定家

後京極攝政の家の六百番の歌合に

面影はをしへしやどに先だちてこたへぬ風の松にふく聲

源有長朝臣

題志らず

徒らにきえ歸るとも知らせばや行きてはきぬる道芝の露

權大納言師信

徒らに待ちみる人もなかりけりとひて苦しき三輪の山本

藤原親盛

前參議範長の家の歌合に、隔河戀

いもがすむ宿のこなたの衣川渡らぬをりも袖ぬらしけり

權中納言經平

題志らず

住吉の岸のあだ浪かけてだに忘るゝ草はありと志らすな

順徳院御製

濱千鳥通ふ計の跡はあれどみぬめの浦にねをのみぞ鳴く

鎌倉右大臣

我がせこを松浦の山の葛かづら邂逅にだにくる由もなし

藤原雅顯

里のあまの假初なりし契より頓てみるめの便りをぞとふ

平時村朝臣

晩風催戀といふ事を

驚ろかす風につけてもこぬ人のつらさぞまさる秋の夕暮

太宰權帥爲經

はじめて物申しける女のあとなき夢になしてよと申しければつかはしける

行く末をかけて契りし現をば跡なき夢といかゞなすべき

讀人志らず

返し

見し夢のわすられぬだにうき物を何か現になして歎かむ
[_]
[6] The kanji in place of A is not available in the JIS code table. The kanji is Morohashi's kanji number 24776.