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新後撰和歌集卷第十五 戀歌五
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15. 新後撰和歌集卷第十五
戀歌五

皇太后宮大夫俊成

建仁元年三月歌合に、遇不逢戀

初瀬川又みむとこそたのめしか思ふもつらし二もとの杉

尊治親王

おなじ心を

人ははやいひし契もかはる世に昔ながらの身社つらけれ

權大納言公顯

心こそ昔にもあらずかはるとも契りしことを忘れずもがな

前内大臣

百首の歌奉りし時、忘戀

はかなくぞ忘れはてじと頼みける昔のまゝの心ならひに

讀人志らず

題志らず

忘れじといひし計りの言の葉やつらきが中の情なるらむ

遊義門院權大納言

百首の歌奉りし時、忘戀

言の葉にそへても今はかへさばや忘らるゝ身に殘る面影

今上御製

絶戀の心を

僞りの言の葉だにもなき時ぞげにたえはつる契とはしる

信實朝臣

建保三年内裏の歌合に

なほざりにひとたび契る僞りもながき恨の夕ぐれのそら

新院御製

題志らず

待ちなれし契はよその夕暮にひとりかなしき入あひの鐘

前大納言爲氏

弘長元年百首の歌奉りける時、忘戀

よそにだに思ひもいでじはし鷹の野守の鏡影もみえねば

兵部卿隆親

建長三年九月十三夜十首の歌合に、寄月恨戀

忘らるゝ我身を秋のつらさとて月さへかはる影ぞ悲しき

安嘉門院甲斐

戀の歌の中に

たのめこし人の心はかはれども我やわするゝ山のはの月

左近中將冬基

とはずなる人のかたみと慰めむかはらでやどれ袖の月影

正親町院右京大夫

いとひしも今はよそなる曉をかはらぬねにや鳥は鳴く覽

從三位源親子

身の上の別をしらぬあかつきも猶鳥のねにぬるゝ袖かな

入道前太政大臣

弘安元年百首の歌奉りし時

忘れずよあかぬ名殘に立別れみしをかぎりのよこ雲の空

近衛關白左大臣

文永二年九月十三夜五首の歌合に、絶戀

きぬ%\の曉ばかりうき物といひしも今はむかしなりけり

權中納言家定

題志らず

つらかりし曉ごとの別れだに身になき物と今はなりぬる

權大納言公顯

百首の歌奉りし時、遇不逢戀

さても其のありし計を限とも志らで別れし我やはかなき

藤原宗秀

戀の歌の中に

面影のうき身にそはぬ中ならば我もや人を忘れはてまし

前中納言俊光

忘らるゝ習有りとは知り乍らやがてと迄は思はざりしを

藤原爲綱朝臣

なほざりに思出でゝもいつまでかとはるゝ程の契なる覽

藤原爲藤朝臣

百首の歌奉りし時、忘戀

うきながら驚かさばや今更におもひはつべき契ならねば

藤原長經

題志らず

又はよも思も出てじ花ずゝき枯にし中はほのめかずとも

讀人志らず

よひ/\に通ひし道ぞ絶えにける憂身を中の關守に志て

津守國助

石見潟我身のよそにこす浪のさのみやとはに懸て戀べき

衣笠内大臣

白浪のかけても人に契りきや異浦にのみみるめかれとは

前中納言爲兼

弘安元年百首の歌奉りし時

忘れ行く人の契はかりごもの思はぬかたになに亂れけむ

賀茂久宗

寄草戀を

そのかみに立歸てや祈らまし又もあふひの名を頼みつゝ

平親清女

かけて猶たのむかひなし葵草今はよそなるその名計りに

京極

花のあだなるよし申し侍りける人の返事に人にかはりて

あだなりと花の名だてにいひなして移ろふ人の心をぞみる

入道前太政大臣

久しく音づれざりける人の許に花のずゞを櫻の枝につけてつかはすとて

めぐりあふ月日を空に數へても花にぞかゝる命ながさば

民部卿資宣女

返し

廻りあふ浮身に春は變れども花にはかゝる色も見えけり

土御門院御製

遇不逢戀の心をよませ給ひける

つき草の花の心やうつるらむ昨日にもにぬ袖のいろかな

前僧正公朝

寄夢戀を

月草の花ずり衣かへす夜はうつろふ人ぞゆめに見えける

前中納言定家

建保二年内大臣の家の百首の歌に、名所戀

かた見社あたの大野の萩の露移ろふ色はいふかひもなし

行念法師

題志らず

うつり行く心の色の秋ぞともいさ志らすげのまのゝ萩原

從二位家隆

後京極攝政の家の六百番歌合に

秋風になびく淺ぢの色よりもかはるはひとの心なりけり

皇太后宮大夫俊成女

千五百番歌合に

いろかはる心の秋の時しもあれ身にしむくれの荻の上風

宰相典侍

里に侍りける時紅葉をたまはせたりける御返事に

中々に思ひもいれぬ身の秋を紅葉よなにの色にみすらむ

藤原實秀

戀の歌の中に

うき身にはいかに契て言の葉の時雨もあへず色かはる覽

法師頼舜

契りおきし心木の葉にあらねども秋風ふけば色變りけり

權少僧都房嚴

むすばずよ霜おき迷ふ冬草のかるゝを人の契りなれとは

藤原經清朝臣

是も又世の習ひぞと思はずば變るつらさに生存へもせじ

行蓮法師

かはらじと契りしまゝの中ならば命の後や人にわかれむ

源俊平

寳治の百首の歌奉りし時、寄衣戀

悔しきにぬるゝ袂のさよ衣思ひかへすもかひなかりけり

權中納言家定

題志らず

今はたゞなれて過にし月日さへ思出でゝは悔しかりけり

侍從實遠

年月のつもればとても戀しさのなど忘られぬ心なるらむ

讀人志らず

今ぞしるわすられざりし年月は何のつらさに物思ひけむ

内大臣

あはぬまを恨みし頃の戀しきはいかになりぬる中の契ぞ

二條院讃岐

今はさは何に命をかけよとて夢にも人のみえずなるらむ

前關白太政大臣

百首の歌奉りし時、遇不逢戀

思ひねの心のうちをしるべにて昔のまゝにみる夢もがな