後拾遺和歌集 (Goshui wakashu [Introduction]) | ||
1. 後拾遺和歌集第一
春上
小大君
む月一日詠みはべりける
光朝法師母
みちのくにゝ侍りける時春たつ日よみ侍りける
源師賢朝臣
春は東より來るといふ心を詠みはべりける
橘俊綱朝臣
春たつ日よみ侍りける
大中臣能宣朝臣
寛和二年花山院の歌合によみ侍りける
年ごもりに山寺に侍りけるに今日はいかゞと人のとひて侍りければよめる
平兼盛
山寺にて睦月に雪のふれるをよめる
加賀左衛門
題志らず
大中臣能宣朝臣
天暦三年太政大臣の七十賀し侍りける屏風によめる
紫式部
一條院の御時殿上人春の歌とて乞ひはべりければよめる
藤原長能
花山院の歌合に霞をよみ侍りける
藤原隆經朝臣
題志らず
和泉式部
赤染衛門
應司どのゝ七十賀の月次の屏風に臨時に客のきたる所をよめる
小辨
春臨時客をよめる
藤原輔尹朝臣
入道前太政大臣大饗し侍りける屏風に臨時客のかたかきたる所をよめる
入道前太政大臣
同じ屏風に大饗のかたかきたる所をよみ侍りける
讀人志らず
民部卿泰憲近江守に侍りける時三井寺にて歌合し侍りけるによめる
大中臣能宣朝臣
鶯をよみ侍りける
源兼隆
正月二日逢坂にて鶯の聲を聞きてよみ侍りける
讀人志らず
選子内親王いつきときこえける時正月三日上達部あまた參りて梅が枝といふ歌を歌ひて遊びけるに内よりかはらけ出すとてよみ侍りける
清原元輔
加階申しけるに賜はらで鶯のなくをきゝて詠みはべりける
藤原範永朝臣
俊綱の朝臣の家にて春山里に人を尋ぬといふ心をよめる
清原元輔
小野宮太政大臣の家に子日し侍りけるに詠みはべりける
和泉式部
題志らず
讀人志らず
正月子日庭におりて松など手すさびに引きはべりけるをみてよめる
賀茂成助
正月子日に當りて侍りけるに良暹法師の許より子日志になむいづるいざなどいひにおこせ侍りけるにまたもおとせで日くれにければよみて遣はしける
右大臣北方
今上六條に坐しまして上達部うへのをのこどもなど中島に渡りて子日し侍りけるによみ侍りける
堀河右大臣
三條院の御時に上達部殿上人など子日せむとし侍りけるに齋院の女房船岡にもの見むとしけるをとゞまりにければそのつとめて齋院に奉り侍りける
民部卿經信
題志らず
左近中將公實
承暦二年内裏の歌合に詠侍りける
伊勢大輔
正月七日子日に當りて雪の降り侍りけるによめる
正月七日卯日にあたりて侍りけるに今日は卯杖つきてやなど道宗の朝臣のもとよりいひおこせて侍りければよめる
大中臣能宣朝臣
題志らず
和泉式部
中原頼成妻
後冷泉院の御時后の宮の歌合に詠み侍りける
藤三位
正月七日周防の内侍のもとに遣はしける
大江正言
長樂寺にて故郷の霞といふ心を詠み侍りける
能因法師
選子内親王
題志らず
藤原節信
春難波といふ所にて綱引くを見て詠み侍りける
曾禰好忠
題志らず
能因法師
正月ばかりに津の國に侍りける頃人の許にいひつかはしける
讀人志らず
題志らず
權僧正靜圓
春の駒をよめる
源兼長
長久二年弘徽殿女の御の歌合し侍りけるに春駒をよめる
藤原長能
屏風の繪にきじおほくむれゐて旅人の眺望する所をよめる
和泉式部
題志らず
藤原範永朝臣
後冷泉院の御時きさいの宮の歌合に殘雪をよめる
平兼盛
屏風の繪に梅の花ある家に男きたる所をよめる
大中臣能宣朝臣
ある所の歌合に梅をよめる
前大納言公任
春の夜のやみはあやなしといふ事をよみ侍りける
大江嘉言
題志らず
清原元輔
村上の御時御前の紅梅を女藏人どもによませさせたまひけるにかはりてよめる
讀人志らず
山里に住侍りける頃梅花を詠める
前大納言公任
題志らず
和泉式部
賀茂成助
山家梅花をよめる
藤原顯綱朝臣
春風夜芳といふ心をよめる
素意法師
梅の花を折りてよみ侍りける
辨乳母
太皇太后宮東三條にて后にたゝせ給ひけるに家の紅梅をうつしうゑられて花の盛にしのびにまかりていと面白くさきたる枝にむすびつけ侍りける
大江嘉言
題志らず
清基法師
藤原經衡
道雅の三位の八條の家の障子に人の家に梅の木ある所に水流れて客人來れる所をよめる
平經章朝臣
水邊梅花といふこゝろを
上東門院中將
長樂寺にすみ侍りける頃二月ばかりに人のもとにいひつかはしける
小辨
題志らず
赤染衛門
歸雁をよめる
藤原道信朝臣
馬内侍
津守國基
辨乳母
大中臣能宣朝臣
屏風に二月山田うつ所にかへる雁などある所をよみ侍りける
坂上望城
天徳四年内裏の歌合に柳をよめる
藤原經衡
柳池の水を拂ふといふ心をよめる
藤原元眞
題志らず
藤原孝善
二月ばかり良暹法師のもとにありやと音づれて侍りければ人々具して花見になむ出でぬときゝて常はいざなふ物をと思ひて尋ねて遣はしける
藤原隆經朝臣
人々花見にまかりけるをかくともつげ侍らざりければつかはしける
皇后宮美作
二月のころほひ花見に俊綱の朝臣の伏見の家に人々まかれりけるにたれともしらせでさしおかせて侍りける
加茂成助
花見にまかりけるに嵯峨野をやきけるを見てよみ侍りける
永源法師
題志らず
中原致時
橘元任
源雅通朝臣
一條院の御時殿上の人々花見にまかりて女のもとに遣しける
盛少將
かへし
一宮駿河
後冷泉院の御時うへのをのこども花見にまかりて歌などよみてたかくらの一宮の御かたにもてまゐりて侍りけるに
右大臣北方
今上の御時殿上の人々花見にまかり出でける道に中宮の御方よりとて人にかはりて遣しける
源兼隆
障子の繪に花多かる山里に女ある所をよみ侍りける
祭主輔親
題志らず
菅原爲言
小辨
遠き花を尋ぬといふ心をよめる
上東門院中將
長樂寺に侍りける頃齋院より山里の櫻はいかゞとありければよみ侍りける
民部卿長家
白河院にて花を見てよみ侍りける
高岳頼言
南殿の櫻を見るといふことを
大貳實政
うへのをのこども歌よみ侍りけるに春心を花によすといふ事をよみ侍りける
大中臣能宣朝臣
花を惜むこゝろをよめる
平兼盛
河原院にて遙に山櫻を見て詠める
能因法師
夜思櫻といふ心をよめる
讀人志らず
櫻を植ゑおきてぬしなくなり侍りにければよめる
和泉式部
遠き所にまうでゝ歸る道に山の櫻を見やりてよめる
題志らず
道命法師
紫式部
藤原公經朝臣
なげかしき事侍りける頃花を見てよめる
前中納言顯基
堀河右大臣の九條の家にて毎山春ありといふ心をよみ侍りける
藤原元眞
題志らず
右大辨通俊
承暦二年内裏の歌合によめる
平兼盛
屏風に旅人花見る所をよめる
屏風繪に三月花の宴する所に客人來る所をよめる
良暹法師
後冷泉院東宮と申しける時殿上のをのこども花見むとて雲林院にまかれりけるによみて遣はしける
源縁法師
通宗の朝臣能登守に侍りける時國にて歌合し侍りけるによめる
民部卿濟信
宇治前太政大臣花見になむときゝてつかはしける
中納言定頼
つゝしむべき年なればありくまじき由いひ侍りけれど三月ばかりに白川にまかりけるを聞きて相摸がもとよりかくもありけるはといひおこせて侍りけるによめる
坂上定成
遠花誰家ぞといふ心をよめる
源縁法師
年毎に花を見るといふ心を詠める
能因法師
高陽院の花盛に志のびて東西の山の花見にまかりてければ宇治前太政大臣きゝつけて、此程いかなる歌かよみたるなど問はせて侍りければ、久しく田舎に侍りてさるべき歌などもよみ侍らず、今日かくなむおもほゆるとてよみ侍りける
是を聞きて太政大臣いとあはれなりといひてかづけ物などして侍りけるとなむいひ傳へたる。
美作にまかり下りけるにおほいまうち君のかづけ物の事を思ひ出でゝ範永の朝臣のもとに遣しける
伊賀少將
高倉の一宮の女房花見に白川にまかれりけるによめる
大江匡房朝臣
内のおほいまうち君の家にて人々酒たうべて歌よみ侍りけるに遙に山の櫻を望むといふ心をよめる
藤原清家
遠山櫻といふ心をよめる
藤原通宗朝臣
周防にまかりくだらむとしけるに家の花をしむ心人々よみ侍りけるによめる
良暹法師
花のもとに歸らむ事を忘るといふ心をよめる
加賀左衛門
基長の中納言東山に花見侍りけるにぬのごろもきたるに法師して誰とも志らせでとらせ侍りける
源道濟
東三條院の御屏風に旅人山櫻を見る所をよめる
同じ御時屏風繪に櫻花多く咲ける所に人々あるを詠める
中務卿具平親王
大納言公任花の盛にこなといひておとづれ侍らざりければ
後拾遺和歌集 (Goshui wakashu [Introduction]) | ||