University of Virginia Library

平定文

大納言國經朝臣の家に侍りける女に平定文いと忍びて語らひ侍りて行末まで契り侍りける頃此女俄に贈太政大臣に迎へられてわたり侍りにければ文だにも通はす方なくなりにければかの女の子のいつゝばかりなるが本院の西の對に遊びありきけるを呼びよせて母に見せ奉れとてかひなに書き付け侍りける

昔せし我がかね言の悲しきはいかに契りし名殘なるらむ