後撰和歌集 (Gosen wakashu [Book 1]) | ||
15. 後撰和歌集卷第十五
雜歌一
在原行平朝臣
任和の帝嵯峨の御時の例にて芹川に行幸し鈴ひける日
同じ日鷹飼にてかりぎぬの袂に鶴のかたをぬひてかきつけたりける
行幸の又の日なむ致仕の表奉りける。
贈太政大臣
紀友則まだ司賜はらざりける時ことの序侍りて年はいくらばかりにかなりぬると問ひ侍りければ四十餘になむなりぬると申しければ
友則
かへし
平なかき
外吏に志ば/\まかりありきて殿上おりて侍りける時兼輔の朝臣の許に遣はしける
嵯峨后
まだ后になり給はざりける時傍の女御たちそねみ給ふけしきなりける時御門御ざうしに忍びて立ちより給へりけるに御對面はなくて奉り給ひける
河原左大臣
家に行平朝臣まうできたりけるに月の面白かりける夜酒などたうべてまかりたゝむとしけるほどに
行平朝臣
かへし
業平朝臣
世の中を思ひうじて侍りける頃
躬恒
我を志りがほにないひそと女のいひ侍りける返事に
姿あやしと人の笑ひければ
中務
おほきおほいまうち君の志ら川の家にまかりわたりて侍りけるに人のざうしにこもり侍りて
おほきおほいまうち君
かへし
讀人志らず
はちすのはひをとりて
蝉丸
逢坂の關に庵室を造りて住み侍りけるに行きかふ人を見て
小野小町
定めたる男もなくて物思ひ侍る頃
讀人志らず
あひ志りて侍りける女心にもいれぬさまに侍りければこと人の心ざしあるにつき侍りにけるをなほしもあらず物いはむと申し遣したりけれど返事もせず侍りければ
素性法師
法皇寺めぐりし給ひける道にてかへでの枝を折りて
西院の后おほんぐしおろさせ給ひておこなはせ給ひける時彼院の中島の松をけづりてかきつけ侍りける
右衛門
齊院のみそぎの垣下に殿上の人々まかりて曉に歸りてうまが許につかはしける
忠見
志ほなきとしたゞみあへてと侍りければ
藤原元輔
ひたゝれこひに遣はしたるに裏なむなき、それは着じとやいかゞといひたれば
七條のきさき
法皇はじめて御ぐしおろし給ひて山ぶみ志給ふあひだ后をはじめ奉りて女御更衣なほひとつ院にさぶらひ給ひける三年といふになむ帝かへりおはしましたりける。昔のごと同じ所にておろし給うけるついでに
伊勢
御かへし
黒主
志賀の唐崎にてはらへしける人の志もづかへにみるといふ侍りけり。大伴黒主そこにまできてかのみるに心をつけていひ戯ぶれけり。はらへはてゝ車より黒主に物かづけゝる其裳のこしにかきつけてみるに送り侍りける
躬恒
月の面白かりけるを見て
藤原滋包が女
五節の舞姫にてもしめし止めらるゝ事やあると思ひ侍りけるをさもあらざりければ
兼輔朝臣
太政大臣の左大將にてすまひのかへりあるじ志侍りける日中將にてまかりて事をはりてこれかれ罷りあかれけるにやんごとなき人二三人ばかりとゞめてまらうどあるじ酒あまたゝびの後醉にのりて子共のうへなど申しけるついでに
大江玉淵朝臣女
女友だちの許につくしよりさし櫛を心ざすとて
中務
元長のみこのすみ侍りける時てまさぐりに何いれて侍りける箱にか有りけむ志た帶してゆひて又こむ時にあけむとて物のかみにさし置きていで侍りにける後常明のみこにとりかくされて月日久しく侍りてありし家にかへりて此箱を元長のみこに送るとて
忠岑
忠房朝臣つの守にて新司治方がまうけに屏風てうじて彼國の名ある所々繪にかゝせてさび江といふところにかけりける
兼輔朝臣
兼輔朝臣宰相中將より中納言になりて又の年のり弓のかへりたちのあるじにまかりてこれかれ思をのぶるついでに
躬恒
淡路のまつりごと人の任はてゝのぼりまうできての頃兼輔朝臣の粟田の家にて
女の母
人のむすめに源かねきがすみ侍りけるを女の母聞き侍りていみじう制し侍りければ忍びたる方にて語らひける間に母志らずして俄にいきければかねきが逃げて罷りにければ遣しける
むすめの女御
三條右大臣みまかりてあくる年の春、大臣めしありと聞きて齋宮のみこにつかはしける
齋宮のみこ
かの女御左のおほいまうち君にあひにけりときゝて遣しける
右大臣
庶明朝臣中納言になり侍りける時うへのきぬつかはすとて
庶明朝臣
かへし
大輔
雅正がとのゐ物をとりたがへて大輔が許にもてきたりければ
雅正
かへし
大江千里
世の中の心にかなはぬなど申しければ行くさき頼もしき身にてかゝる事あるまじと人の申し侍りければ
兼輔朝臣
藤原さねきが藏人よりかうぶり賜はりてあす殿上まかりおりなむと志ける夜酒たうべけるついでに
七條后
法皇御ぐしおろし給ひての頃
伊勢
御かへし
あつみのみこ
京極の御やす所尼に成りて戒うけむとて仁和寺にわたりて侍りければ
朝綱朝臣
女のあだなりといひければ
讀人志らず
あひかたらひける人の家の松の梢のもみぢたりけるを見て
四條御息所の女
男の女の文を隱しけるを見てもとのめのかきつけ侍りける
源公忠朝臣
小野好古の朝臣西の國のうての使に罷りて二年といふ年四位には必まかりなるべかりけるをさもあらずなりにければかゝる事にしもさゝれにける事の安からぬ由を憂へ送りて侍りける文の返事の裏にかきつけて遣はしける
小野好古朝臣
かへし
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