後撰和歌集 (Gosen wakashu [Book 1]) | ||
11. 後撰和歌集卷第十一
戀歌三
三條右大臣
女のもとにつかはしける
在原元方
讀人志らず
かへし
女のいと思ひ離れていふに遣はしける
貫之
宮仕する女の逢ひ難く侍りけるに
女
かりそめなる所にはべりける女に心かはりにける男のこゝにてはかくびんなき所なれば心ざしはありながらなむえ立よらぬといへりければ所をかへて待ちけるに見えざりければ
讀人志らず
題志らず
中務
源さねあきら頼む事なくば死ぬべしといへりければ
源信明
かへし
本院侍從
時々みえける男のゐる所のさうじに鳥のかたをかきつけて侍りければあたりにおしつけ侍りける
平定文
大納言國經朝臣の家に侍りける女に平定文いと忍びて語らひ侍りて行末まで契り侍りける頃此女俄に贈太政大臣に迎へられてわたり侍りにければ文だにも通はす方なくなりにければかの女の子のいつゝばかりなるが本院の西の對に遊びありきけるを呼びよせて母に見せ奉れとてかひなに書き付け侍りける
讀人志らず
かへし
清原諸實
おほやけづかひにて東の方へまかりける程にはじめてあひ志りて侍る女にかくやむことなき道なれば心にもあらずまかりぬるなど申して下り侍りけるを後に改め定めらるゝ事ありてめしかへされければ此女聞きて喜びながらとひにつかはしたりければ道にて人の心ざし送りてはべりけるくれはとりといふ綾を二むら包みて遣しける
讀人志らず
かへし
清成が女
人のもとに遣はしける
もとの女
少將眞忠通ひ侍りける所をさりてこと女につきてそれより春日の便に出で立ちてまかりければ
讀人志らず
朝顏の花まへにありけるざうしより男のあけて出で侍りけるに
女
内にまゐりて久しう音せざりける男に
伊尹朝臣
女の許にきぬをぬぎ置きてとりに遣はすとて
貫之
題志らず
在原業平朝臣
讀人志らず
平中興
兼輔朝臣
からうじてあへりける女につゝむ事侍りて又えあはず侍りければ遣はしける
躬恒
題志らず
讀人志らず
親ある女に忍びて通ひけるを男も志ばしは人に志られじといひ侍りければ
伊勢
なき名たちける頃
敦忠朝臣
忍びてすみ侍りける女につかはしける
讀人志らず
あひ語らひける人これもかれも包む事ありて離れぬべく侍りければ遣はしける
閑院左大臣
人のもとより曉かへりて
貫之
これまさの朝臣
女のもとにつかはしける
小野好古朝臣女
かへし
藤原清正
女のもとに遣はしける
小野遠興がむすめ
かれ方になりにける男の許に裝束調じて送れりけるにかゝるから疎き心地なむするといへりければ
もろまさの朝臣
五節の所にて閑院のおほい君につかはしける
かへし
清正
藤壷の人々月夜にありきけるを見て一人がもとに遣はしける
本院兵衞
左兵衞督師尹朝臣に遣はしける
兼茂朝臣女
題志らず
在原元方
壬生忠岑
戒仙法師
貫之
やむことなきことによりて遠き所にまかりてたゞむ月ばかりになむまかり歸るべきといひてまかりくだりて道よりつかはしける
躬恒
同じ所に宮づかへし侍りて常に見ならしける女に遣はしける
是則
題志らず
右近季繩女
人のをとこにて侍る人をあひ志りてつかはしける
藤原守正兼輔男
人の許にまかれりけるにすのとにすゑて物いひけるをすを引きあげゝればいたく騒ぎければまかりかへりて又のあしたに遣はしける
藤原後蔭朝臣
あひ志りて侍りける女の心ならぬやうに見え侍りければつかはしける
土左
男の心やう/\かれがたに見えゆきければ
在原元方
女に心ざしあるよしをいひつかはしたりければよの中の人の心定めなければ頼み難き由をいひて侍りければ
伊勢
題しらず
贈太政大臣
かへし
右大臣九條
女四のみこにおくりける
かへし
贈太政大臣
せをそこ遣はしける女の又こと人に文つかはすと聞きて今は思ひたえねといひ送りて侍りける返事に
枇杷左大臣
宮づかへし侍りける女程久しくありて物いはむといひ侍りけるに遲くまかりければ
伊勢
かへし
長谷雄朝臣
心ざしありていひかはしける女のもとより人數ならぬやうにいひ侍りければ
贈太政大臣
題志らず
伊勢
かへし
これひら朝臣の女いまき
まもりをおきて侍りける男の心かはりにければ其守りを返し遣るとて
讀人志らず
人の心つらくなりにければ袖といふ人をつかひにて
藤原眞忠が妹
文などおこする男ほかざまになりぬべしときゝて
もろうぢの朝臣
町尻の君に文つかはしたりける返事にみつとのみありければつかはしける
源たのむ
題志らず
讀人志らず
心ざし侍りける女のつれなきに
かへし
黒主
題志らず
紀内親王
讀人志らず
人の許にまかりていれざりければ簀子にふしあかして歸るとていひいれ侍りける
かへし
心ざしはありながらえあはざりける人につかはしける
かへし
心ざしありて人にいひかはし侍りけるをつれなかりければいひわづらひてやみにけるを思ひ出でゝ志きりにいひ送りける返事に心ならぬさまなりといへりければ
右大臣
人のもとにつかはしける
陽成院御製
釣殿のみこに遣はしける
讀人志らず
相志りて侍りける人のまうでこずなりて後心にもあらず聲をのみきくばかりにて又音もせず侍りければ遣はしける
兼覽王
かへし
小町
をとこのけしきやう/\つらげにみえければ
讀人志らず
男の心つらく思ひかれにけるを女なほざりになどか音もせぬと云ひ遣したりければ
藤原滋幹
宵に女にあひて必後にあはむとちかごとをたてさせてあしたに遣はしける
右大臣
院のやまとに扇遣はすとて
元平親王の女
兼通朝臣かれがたになりて年こえてとぶらひて侍りければ
讀人志らず
もとのめにかへりすむときゝて男のもとに遣はしける
源中正
女のもとに遣はしける
下野
かへし
讀人志らず
女の許にまかりたるにはや歸りねとのみいひければ
左大臣
あつよしの親王の家にやまとゝいふ人につかはしける
長谷雄朝臣
いひかはしける女の今は思ひ忘れねといひ侍りければ
藤原有好
忍びて通ひける人に
讀人志らず
物いひ侍りける男言ひ煩ひていかゞはせむいなともいひ放ちてよといひ侍りければ
方たがへに人の家に人を具してまかりて歸りて遣はしける
源重光朝臣
物いひける女に蝉のもぬけを包みてつかはすとて
坂上是則
人のもとより歸りまできて遣はしける
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