後撰和歌集 (Gosen wakashu [Book 1]) | ||
16. 後撰和歌集卷第十六
雜歌二
在原業平朝臣
思ふ心ありて前太政大臣によせて侍りける
敏行朝臣
やまひし侍りて近江の關寺にこもりて侍りけるに前の道より閑院のみこ石山に詣でけるを唯今なむ行き過ぎぬると人のつげ侍りければおひてつかはしける
宣旨
前中宮の宣旨、贈太政大臣の家よりまかり出でゝあるにかの家にことにふれて日ぐらしといふことなむ侍りける
贈太政大臣
かへし
敦忠朝臣母
河原に出でゝはらへし侍りけるにおほいまうち君もいであひて侍りければ
閑院のみこ
人の牛をかりて侍りけるに志に侍りければいひ遣はしける
三條右大臣
延喜の御時賀茂の臨時の祭の日御前にてさかづきとりて
枇杷左大臣
同じ御時北野の行幸にみこし岡にて
讀人志らず
戒仙が深き山寺に籠り侍りけるにこと法師詣できて雨に降りこめられて侍りけるに
藤原興風
これかれ逢ひて夜もすがら物語してつとめておくり侍りける
讀人志らず
若う侍りける時は志賀に常に詣でけるを年老いては參り侍らざりけるに參り侍りて
大江興俊
宇治のあじろにしれる人の侍りければまかりて
小貳のめのと
院のみかど内におはしましゝ時人々扇てうぜさせ給ひける奉るとて
大輔
かへし
讀人志らず
男のふみ多く書きてといひければ
亭子院にいまあことめしける人
鞍馬の坂をよるこゆとてよみ侍りける
讀人志らず
男につけてみちのくにへむすめを遣はしたりけるが其をとこ心變りたりと聞きて心うしと親のいひ遣はしたりければ
女の母
かへし
もとよしの親王
たまさかに通へりける文をこひかへしければその文にぐして遣はしける
素性法師
延喜の御時御馬を遣はして早くまゐるべき由おほせつかはしたりければ即ち參りておほせごとうけたまはれる人につかはしける
藤原敦敏
病して心細しとて大輔につかはしける
大輔
かへし
讀人志らず
霰のふるを袖にうけてきえけるを海のほとりにて
或所のわらは女、五節見に南殿にさぶらひて沓を失ひてけり。すけとみの朝臣くら人にてくつをかして侍りけるをかへすとて
輔臣朝臣
かへし
讀人志らず
人の裳をぬはせ侍るにぬひて遣はすとて
男のやまひしけるをとぶらはであり/\てやみがたにとへりければ
みそか男したる女をあらくはいはでとへど物もいはざりければ
男のかくれて女を見たりければつかはしける
世中をとかく思ひわづらひける程に女友だちなる人猶わがいはむことにつきねと語らひければ
高津内親王
いたくこと好む由を時の人いふときゝて
嵯峨の后
帝に奉り給ひける
讀人志らず
これかれ女の許にまかりて物いひなどしけるに女のあなさむの風やと申しければ
男の物いひけるを騒ぎければ歸りてあしたに遣はしける
かへし
題志らず
友達の久しくあはざりけるにまかりあひて詠み侍りける
題志らず
賀朝法師
人のめに通ひける見附られ侍りて
もとのをとこ
かへし
讀人志らず
山の井の君に遣はしける
やまひしけるをからうじておこたれりと聞きて
題志らず
かへし
武藏
陽成院の帝時々とのゐにさぶらはせ賜ひけるを久しうめしなかりければ奉りける
讀人志らず
まかり通ひける女の心とけずのみ見え侍りければ年月も經ぬるを今さらかゝる事といひつかはしたりければ
女の許より恨みおこせて侍りける返事に
昔同じ所に宮づかへし侍りける女の男につきて人の國におちゐたりけるを聞きつけて心ありける人なればいひ遣はしける
かへし
土左
をとこなど侍らずして年頃山里に籠り侍りける女を昔あひ志りて侍りける人道まかりけるついでに久しうきこえざりつるをこゝになりけりといひ入れて侍りければ
閑院
山里に侍りけるに昔あひ志れる人のいつよりこゝにはすむぞと問ひければ
貫之
題志らず
讀人志らず
壬生忠岑
暇にてこもりゐて侍りける頃人のとはず侍りければ
讀人志らず
ある所に宮づかへし侍りける女のあだ名立ちけるが許よりおのれがうへはそこになむくちのはにかけていはるなど恨み侍りければ
伊勢
題志らず
閑院左大臣
春日に詣でける道にさほ川のほとりに初瀬より歸る女ぐるまのあひて侍りけるがすだれのあきたるよりはつかにみいれければあひ志りて侍りける女の心ざし深く思ひかはしながら憚る事侍りてあひ離れて六七年ばかりに成り侍りにける女に侍りければ彼の車にいひいれ侍りける
俊子
枇杷左大臣よう侍りてならの葉をもとめ侍りければちかぬがあひ志りて侍りける家にとりにつかはしければ
枇杷左大臣
かへし
讀人志らず
友達の許にまかりてさかづきあまたゝびに成りにければ遁げてまかりけるをとゞめわづらひもて侍りける笛を取りとゞめて又の朝に遣はしける
かへし
躬恒
もとより友達に侍りければ貫之にあひ語らひて兼輔朝臣の家に名つきを傳へさせ侍りけるに其名附きに加へて貫之におくりける
兼忠朝臣の母のめのと
兼忠朝臣の母みまかりにければ兼忠をば故枇杷左大臣の家にむすめをばきさいの宮にさぶらはせむとあひ定めて二人ながらまづ枇杷の家に渡し送るとてくはへ侍りける
讀人志らず
物思ひ侍りける頃やんごとなき高き所よりとはせ給へりければ
貫之
世の中の心にかなはぬ事申しけるついでに
讀人志らず
思ふ事侍りける頃人に遣はしける
題志らず
播磨國にたか瀉といふ所に面白き家もちて侍りけるを京にて母がおもひにて久しうまからで彼高瀉に侍る人にいひつかはしける
躬恒
延喜の御時ときの藏人のもとに奏しもせよとおぼしくてつかはしける
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