University of Virginia Library

壬生忠岑

ふるうたにくはへてたてまつれるながうた

くれ竹の世世のふることなかりせばいかほのぬまのいかにして思ふ心をのばへましあはれむかしべありきてふ人まろこそはうれしけれ身はしもながらことのはをあまつそらまできこえあげすゑのよまでのあととなし今もおほせのくだれるはちりにつげとやちりの身につもれる事をとはるらむこれをおもへばけだもののくもにほえけむ心地してちぢのなさけもおもほえずひとつ心ぞほこらしきかくはあれどもてるひかりちかきまもりの身なりしをたれかは秋のくる方にあざむきいでてみかきよりとのへもる身のみかきもりをさをさしくもおもほえずここのかさねのなかにてはあらしの風もきかざりき今はの山しちかければ春は霞にたなびかれ夏はうつせみなきくらし秋は時雨に袖をかし冬はしもにぞせめらるるかかるわびしき身ながらにつもれるとしをしるせればいつつのむつになりにけりこれにそはれるわたくしのおいのかずさへやよければ身はいやしくて年たかきことのくるしさかくしつつながらのはしのながらへてなにはのうらにたつ浪の浪のしわにやおぼほれむさすがにいのちをしければこしのくになるしら山のかしらはしろくなりぬともおとはのたきのおとにきくおいずしなずのくすりがも君がやちよをわかえつつ見む