University of Virginia Library

21. 二十一
家々稱證本之本乍書入以墨滅哥

巻第十物名部

ひぐらし

そま人は宮木ひくらしあしひきの山の山びこよびとよむなり

在郭公下、空蝉上

勝臣

かけりてもなにをかたまのきても見むからはほのほとなりにしものを

をがたまの木、友則下

つらゆき

くれのおも

こし時とこひつつをればゆふぐれのおもかげにのみ見えわたるかな

忍草、利貞下

をののこまち

おきのゐ、みやこじま

おきのゐて身をやくよりもかなしきは宮こしまべのわかれなりけり

から事、清行下

あやもち

そめどの、あはた

うきめをばよそめとのみぞのがれゆく雲のあはたつ山のふもとに

このうた、水の尾のみかどのそめどのよりあはたへ うつりたまうける時によめる    桂宮下

巻第十一

奥菅の根しのぎふる雪、下

けふ人をこふる心は大井河ながるる水におとらざりけり

わぎもこにあふさか山のしのすすきほにはいでずもこひわたるかな

巻第十三

こひしくはしたにを思へ紫の、下

いぬがみのとこの山なるなとり河いさとこたへよわがなもらすな

この哥、ある人、あめのみかどのあふみのうねめに たまへると

うねめのたてまつれる

返し

山しなのおとはのたきのおとにのみ人のしるべくわがこひめやも

巻第十四

思ふてふことのはのみや秋をへて、下   そとほりひめのひとりゐてみかどをこひたてまつりて

わがせこがくべきよひなりささがにのくものふるまひかねてしるしも

つらゆき

深養父、こひしとはたがなづけけむ事ならむ、下

みちしらばつみにもゆかむすみのえの岸におふてふこひわすれぐさ