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一恋哥一 |
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(Kokin Wakashu) |  |
11. 十
一恋哥一
読人しらず
題しらず
郭公なくやさ月のあやめぐさあやめもしらぬこひもするかな
素性法師
おとにのみきくの白露よるはおきてひるは思ひにあへずけぬべし
紀貫之
吉野河いは浪たかく行く水のはやくぞ人を思ひそめてし
藤原勝臣
白浪のあとなき方に行く舟も風ぞたよりのしるべなりける
在原元方
おとは山おとにききつつ相坂の関のこなたに年をふるかな
立帰りあはれとぞ思ふよそにても人に心をおきつ白浪
つらゆき
世中はかくこそ有りけれ吹く風のめに見ぬ人もこひしかりけり
在原業平朝臣
右近のむまばのひをりの日、むかひにたてたりける くるまのしたすだれより女のかほのほのかに見えければ、よむでつかはしける
見ずもあらず見もせぬ人のこひしくはあやなくけふやながめくらさむ
よみ人しらず
返し
しるしらぬなにかあやなくわきていはむ思ひのみこそしるべなりけれ
みぶのただみね
かすがのまつりにまかれりける時に、物見にいでた りける女のもとに、家をたづねてつかはせりける
かすがののゆきまをわけておひいでくる草のはつかに見えしきみはも
つらゆき
人の花つみしける所にまかりて、そこなりける人の もとに、のちによみてつかはしける
山ざくら霞のまよりほのかにも見てし人こそこひしかりけれ
もとかた
題しらず
たよりにもあらぬおもひのあやしきは心を人につくるなりけり
凡河内みつね
はつかりのはつかにこゑをききしより中ぞらにのみ物を思ふかな
つらゆき
逢ふ事はくもゐはるかになる神のおとにききつつこひ渡るかな
読人しらず
かたいとをこなたかなたによりかけてあはずはなにをたまのをにせむ
夕ぐれは雲のはたてに物ぞ思ふあまつそらなる人をこふとて
かりこもの思ひみだれて我こふといもしるらめや人しつげずは
つれもなき人をやねたくしらつゆのおくとはなげきぬとはしのばむ
ちはやぶるかもの社のゆふだすきひと日も君をかけぬ日はなし
わがこひはむなしきそらにみちぬらし思ひやれどもゆく方もなし
するがなるたごの浦浪たたぬひはあれども君をこひぬ日ぞなき
ゆふづく夜さすやをかべの松のはのいつともわかぬこひもするかな
葦引の山した水のこがくれてたぎつ心をせきぞかねつる
吉野河いはきりとほし行く水のおとにはたてじこひはしぬとも
たきつせのなかにもよどはありてふをなどわがこひのふちせともなき
山高みした行く水のしたにのみ流れてこひむこひはしぬとも
思ひいづるときはの山のいはつつじいはねばこそあれこひしき物を
人しれずおもへばくるし紅のすゑつむ花のいろにいでなむ
秋の野のをばなにまじりさく花のいろにやこひむあふよしをなみ
わがそのの梅のほつえに鶯のねになきぬべきこひもするかな
あしひきの山郭公わがごとや君にこひつついねがてにする
夏なればやどにふすぶるかやり火のいつまでわが身したもえをせむ
恋せじとみたらし河にせしみそぎ神はうけずぞなりにけらしも
あはれてふ事だになくはなにをかは恋のみだれのつかねをにせむ
おもふには忍ぶる事ぞまけにける色にはいでじとおもひし物を
わがこひを人しるらめや敷妙の枕のみこそしらばしるらめ
あさぢふのをののしの原しのぶとも人しるらめやいふ人なしに
人しれぬ思ひやなぞとあしかきのまぢかけれどもあふよしのなき
思ふともこふともあはむ物なれやゆふてもたゆくとくるしたひも
いで我を人なとがめそおほ舟のゆだのたゆだに物思ふころぞ
伊勢の海につりするあまのうけなれや心ひとつを定めかねつる
いせのうみのあまのつりなは打ちはへてくるしとのみや思ひ渡らむ
涙河何みなかみを尋ねけむ物思ふ時のわが身なりけり
たねしあればいはにも松はおひにけり恋をしこひばあはざらめやは
あさなあさな立つ河霧のそらにのみうきて思ひのある世なりけり
わすらるる時しなければあしたづの思ひみだれてねをのみぞなく
唐衣ひもゆふぐれになる時は返す返すぞ人はこひしき
よひよひに枕さだめむ方もなしいかにねし夜か夢に見えけむ
恋しきに命をかふる物ならばしにはやすくぞあるべかりける
人の身もならはし物をあはずしていざ心みむこひやしぬると
忍ぶれば苦しき物を人しれず思ふてふ事誰にかたらむ
こむ世にもはや成りななむ目の前につれなき人を昔とおもはむ
つれもなき人をこふとて山びこのこたへするまでなげきつるかな
ゆく水にかずかくよりもはかなきはおもはぬ人を思ふなりけり
人を思ふ心は我にあらねばや身の迷ふだにしられざるらむ
思ひやるさかひはるかになりやするまどふ夢ぢにあふ人のなき
夢の内にあひ見む事をたのみつつくらせるよひはねむ方もなし
こひしねとするわざならしむばたまのよるはすがらに夢に見えつつ
涙河枕ながるるうきねには夢もさだかに見えずぞありける
恋すればわが身は影と成りにけりさりとて人にそはぬ物ゆゑ
篝火にあらぬわが身のなぞもかく涙の河にうきてもゆらむ
かがり火の影となる身のわびしきは流れてしたにもゆるなりけり
はやきせに見るめおひせばわが袖の涙の河にうゑまし物を
おきへにもよらぬたまもの浪のうへにみだれてのみやこひ渡りなむ
あしがものさわぐ入江の白浪のしらずや人をかくこひむとは
人しれぬ思ひをつねにするがなるふじの山こそわが身なりけれ
とぶとりのこゑもきこえぬ奥山のふかき心を人はしらなむ
相坂のゆふつけどりもわがごとく人やこひしきねのみなくらむ
相坂の関にながるるいはし水いはで心に思ひこそすれ
うき草のうへはしげれるふちなれや深き心をしる人のなき
打ちわびてよばはむ声に山びこのこたへぬ山はあらじとぞ思ふ
心がへする物にもがかたこひはくるしき物と人にしらせむ
よそにしてこふればくるしいれひものおなじ心にいざむすびてむ
春たてばきゆる氷ののこりなく君が心は我にとけなむ
あけたてば蝉のをりはへなきくらしよるはほたるのもえこそわたれ
夏虫の身をいたづらになすこともひとつ思ひによりてなりけり
ゆふさればいとどひがたきわがそでに秋のつゆさへおきそはりつつ
いつとてもこひしからずはあらねども秋のゆふべはあやしかりけり
秋の田のほにこそ人をこひざらめなどか心に忘れしもせむ
あきのたのほのうへをてらすいなづまのひかりのまにも我やわするる
人めもる我かはあやな花すすきなどかほにいでてこひずしもあらむ
あは雪のたまればがてにくだけつつわが物思ひのしげきころかな
奥山の菅のねしのぎふる雪のけぬとかいはむこひのしげきに
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(Kokin Wakashu) | |